第24話 王都生活開始!王立学園に初登校


さて、ベイルさんから届いたという王立学園の制服を翌日衣装部屋で確認する。

「なんて、着る人を選ぶ制服なんだろうか……」


制服自体の作りは可愛い。

但し、西洋風で身体の凹凸がハッキリしているならば!

着る人を選ぶとは、そういうことである。

私の低めの身長、東洋人顔、凹凸に欠けるボディライン……。

一応袖を通してみたものの……。


「なんって、痛々しいのだろうか……」

可愛らしいロング丈のワンピースは、ウエストで切り替えとギャザー寄せでふんわりしたスカートのシルエット。

その上に羽織るのは、ボレロの形にセーラーカラーが付いた可愛らしいもの。

本当にコレは着る人を選ぶ。

しかも、ワンピースの上はアイボリーでウエストから下は紺、ボレロも紺でセーラーカラーには赤のテープが入っている。

「もはや、日本だと漫画の学校の制服みたいなやつだよ、このデザイン……」

そう、つまり私には現実的じゃないってこと。

「これ着て学校生活送るの? つらすぎやしませんかね……」

鏡に映る自分を見て、深いため息を吐く私に、アリーンとサリーンはあまり興味が無さそうで、窓辺に置かれたクッキーを食べて寛いでいる。

メルバだけは、足元から私を見上げてご機嫌良さげにしっぽを振っている。

「メルバ、お前はいい子だね!」

足元のメルバを撫でるために屈むと、メルバはトンっとジャンプして私の肩に乗り、頭を私の頬に擦り寄せてきた。

「本当に可愛い子だね、メルバ」

そんな私とメルバのやり取りを見て、アリーンがポツリと言った。

「今は可愛らしいけど、ユウが魔法が上手くなって治癒術も上達すればこの子、変わるわよ?」

変わる? 一体何が変わるというのだろう。

「こんな、ちょっと変わったホワイトタイガーみたいな色と柄だけど、人懐っこい、可愛い猫じゃない」

「いずれ、近いうちに真の姿を見せることになるわ。私達は、ちゃんと教えたからね?」

サリーンまでもが、釘を指すように言うのでちょっと用心しておくことにする。

精霊王からのお願いで私のそばにいるこの子達は、基本私の世話係的なものだ。

魔法や治癒術、妖精や精霊王の事についてを教えるのが彼女らの勤めである。

そこに嘘はないので、信用している。


「メルバ、君は一体何者なの? まぁ、何者であってもそばに居てくれるのは嬉しいから、君が離れたくなるまでは、一緒に居ようね!」

私の言葉が分かるのだろう、メルバはちょっと心外だとでも言うような怒った顔をしたあと、肩にがっしりくっ付いていた。

まるで、離れる気などサラサラないと主張しているようで嬉しかった。

「うん。ずっと一緒ね! 私とメルバは家族だものね」

肩の上の頭を撫でてあげるとゴロゴロと喉を鳴らして、やっとご機嫌が治ったのだった。


制服を確認したその日から一週間。

ミレイド家では、私の学園生活のために貴族令嬢の嗜み、基本姿勢、挨拶などをレイモンドさんとフェミリアさんに叩き込まれた。

この二人、似ているなと思ったら、なんとご夫婦だった。

似た者夫婦だったのだ。

そんな夫婦の娘、シャロンさんが私の専属メイドさんである。

二人の娘な彼女も、笑顔でダメ出しするタイプのスパルタ教育型だった。

そんな三人のおかげで、一週間という短期間で瞬く間に一般人が貴族令嬢に化けた。

助かったけど、人生でこんなに勉強する事はあるだろうか? ってほどに頑張ったので誰か褒めて欲しい……。

この王立学園には貴族の子息令嬢が通うだけあり、なんと一人使用人を連れての登校が可とされている。

つまり、私にとってはありがたいフォロー要員アリの学園生活である。


「ユウお嬢様。そろそろ着きます。まずは教員室へ行くとクラスに担任が連れて行ってくれますからね」

ニコッと微笑んでの、説明にニコッと笑みを返して返事をする。

「了解よ! さ、貴族のお嬢様やってやりましょうとも」

こうして、国王陛下の采配によりこの国に馴染めるようにという王立学園へと一歩を踏み出した。

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