第18話
私の戸惑いはマリアさんが気付いた。
「宰相閣下、黒の乙女もついさっきこの詰所に着いたばかり。女性にはそれ相応の準備がございますので、お時間を頂きたく」
ニコッと微笑んで言うマリアさん、中々の眼力です。
「もちろん、こちらで全て準備してありますので心配ありませんよ」
宰相閣下もいい笑顔で切り返してきました。
なに、この笑顔で怖いやり取り……。
「入りなさい」
宰相さんが外に向かって声をかけると、ロング丈のメイドさんな格好の女性が三人入ってきて、柔らかく笑いかけられた。
「黒の乙女様、お初にお目にかかります。陛下と謁見とのことで、準備のお手伝いに参りました。私、女官長のシェリーと申します」
一番年上っぽい女性がそう挨拶してくれて、パンと一つ手を叩くと後ろの二人がドレスなどを持って立ち上がった。
「では、団長様。お隣の仮眠室お借り致しますね」
ニッコリ微笑んで、女官長さんが言うと団長さんも頷いて返した。
「もちろん構いません。うちのマリアとジェシカも一緒に見せてやってください。ユウ様は、ミレイド家の養女となって、私が後見にあたりますので」
その団長の言葉にピクっと宰相さんが反応したけれど、特に言葉はなかった。
仮眠室となる、執務室の隣の部屋は簡易ベッドとクローゼットに申し訳程度の洗面台がある、こじんまりとした部屋だった。
この位の部屋の広さが落ち着くなと思っているうちに、優秀な女官さん達は私の服を一気に脱がせ始めて着替えが始まった。
「もう、なるようになーれ」
まな板の上の鯉状態になったが、そんな私をよそに、マリアさんが女官さん達に声をかける。
「うちのユウには黒より、白い方が映えないかしら? 髪も目も黒なのよ? それを際立たせるには黒より白ではないかしら?」
そのマリアさんの発言に、女官長さんも一つ頷くと女官さん達に言った。
「もう一つ用意していた白のドレスを! ベルトに黒と金の糸を持ってきましょう」
実に素早く謁見用の衣装が決定していくなり、着付けが始まった。
ドレスはストンとした真っ直ぐでシンプルなドレスだった。
生地はかなり滑らかなので、絹だと思う。
とっても、お金の掛かったドレスだと思う。
ただ、昔のヨーロッパ風な建物だけれどドレスはシンプルで良かった。
ガッチガチにコルセットで締めますって感じだったら、生きていける気がしないもの……。
そんな考えに耽っているうちに、ドレスの着替えは終わって椅子に座っているうちに髪が綺麗にアップに結われて、花が差されて飾られた。
メイクも施されて、鏡の前にはちょっと可愛らしい感じの少女がいた。
十七歳で違和感がない感じの仕上がり。
女官さん達の腕の良さがよくわかった。
自分では、こんなに綺麗にメイクも髪型も作り上げることは出来ない。
プロの技だなと感心して見入っていると、ジェシカちゃんが頬を染めて嬉しそうに声をかけてくれた。
「ユウ姉様! とっても綺麗。ユウ姉様が私のお姉様で、すっごく嬉しい!」
これは、ジェシカちゃんが可愛すぎる!!
思わず、ギューッと抱きしめるとジェシカちゃんもキュッと返してくれた。
妹、なんて可愛いんだろう!
一人っ子だった私の憧れて止まなかった、兄妹が異世界に来て手に入ろうとは。
私は、この可愛い子の為にも自分の力を有効に利用して、この国で生きていこうと新たに決意したのだった。
準備が整って、執務室に戻ると男性陣がパッと振り向いた。
こうして見ると、ムキムキマッチョだが精悍な美形の団長に、知的でクール系の美形兄弟の宰相閣下と副団長。
マリアさんにジェシカちゃんも美形……。
この部屋の美形率は異常に高くないだろうか……。
そこに凹凸少なめ、東洋人顔の私。
浮く! ものすっごく浮いてる! メイクでも補えるものでは無い、顔の作りの差に内心少々凹んだのだった……。
私も、もう少し西洋よりの顔だったら良かったのにね。
こればっかりは仕方ないと、早々に諦めたのだった。
「ユウ、綺麗にしてもらったな。うちの娘達は可愛くって幸せだな、マリア」
「えぇ、私達は恵まれてるわね」
そんな会話の後、私達は国王陛下への謁見のため、騎士団詰所から王宮へと移動を始めた。
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