第17話
持ってきてくれたお茶を飲んで一息つく。
「あー、やっぱりメリッサさんのお茶はイイわー」
すっかり、ほやーんとお顔の表情が緩んだマリアさんに、ジェシカちゃんもホッとしている。
「ジェシカ。お父さん、帰りました」
やっと落ち着いたらしいクリストフさんが声を掛けるも、ジェシカちゃんにツーンとそっぽ向かれてしまい、かなり落ち込んだ顔をしたものの、今後について話を進めねばならず、泣きつつ立ち直っていた。
お父さん、ファイト……。 そっと涙を拭って見守っていたら、ベイルさんに声を掛けられた。
「ここの親子はいつも、こんな感じなので、お気になさらず。さて、ユウ様。私か団長のどちらかを後見人に選んでください」
そのベイルさんの言葉を聞いて、マリアさんとジェシカちゃんの目がキラリと輝いた。
「ユウちゃん、うちを選びなさいな! ジェシカも喜ぶし、アラルもきっと喜ぶわ!」
なんと、マリアさんにはもう一人お子さんが居て二児の母なんだとか。アラルくんはまだ小さいので、詰所の別の部屋で乳母さんが面倒見ているらしい。
「マリアさんとクリストフさんが、ご迷惑でなければ……」
私の返事にジェシカちゃんが嬉しそうな顔をして、寄ってきて声を掛けてくれる。
「ユウ姉様って、呼んでいい?」
ズキューン!!
可愛いは最強で、正義だ!
こんな可愛い子に、そんなこと聞かれたらイエス以外の返事はない!
「もちろん、ジェシカちゃんが呼びやすいように呼んでくれていいの!」
思わず抱きしめていると、マリアさんが羨ましそうに言った。
「あら、ユウちゃんずるいわ!私もぎゅーさせて!」
三人でギューッとして和気あいあいとしていると、ベイルさんがモノクルを上げて聞いてきた。
「それでは、後見人は団長でよろしいですね?」
「はい、マリアさんにジェシカちゃんも良いと言ってくれてますし。団長、お願いします」
私が頭を下げると、クリストフさんはニカッと笑って言った。
「もちろん、歓迎だ!ユウは今日から我が家の娘だからな!」
こうして、私の後見人は団長にお願いして今日から団長であるクリストフさん一家の一員となることになった。
そんなクリストフさん一家、実はこの国の
伯爵家だそうで、貴族でした! 貴族になるとか聞いてないよ!?
「大丈夫よ! ユウちゃんにはこれから色々と教えるから」
バチッとウィンクがよく似合うのも、美人さんの特権だと思う。
「よろしくお願いします、マリアさん」
「ユウ姉様、一緒に頑張ろうね!」
そうだね、ジェシカちゃんと学ぶくらいがちょうど良い感じだよね。
むしろ、最初は教わりそうだよね!
「ジェシカちゃん、よろしくね! 色々教えてね」
そんな感じで決まってホッとした所に、執務室のドアをノックする音が響き、騎士さんが何だか神経質そうな男性を引き連れてやって来た。
「こちらに黒の乙女がいらしたと聞きおよびまして、お邪魔させていただきました」
神経質そうな男性が話すとそれに応えたのは、ベイルさんだった。
「さすが、兄上。情報が早いですね。さて、御用はなんでしょう?」
この方、ベイルさんのお兄さん? 確かに似てるけど! 雰囲気とか知的な感じもそっくりだし、兄弟なんだね。
「宰相閣下自らおいでとは、やはり黒の乙女は我が国にとって重要だと言うことですね?」
二人に割って入ったのは、団長のクリストフさん。
「それは、もちろんでしょう。歴代の黒の乙女が残した功績を考えて、迅速に対応するのは当然です」
そこで区切ると、宰相だというベイルさんのお兄さんは私に視線を合わせて言った。
「私からは、国王陛下が会いたいと言っておりますので、早急に謁見頂きたく案内に参りました。ご一緒頂けますね?」
め、目力半端ないですね……。
流石は宰相閣下。
これは、断れるものでもないよね。
国王陛下に会うのにこの、普通なワンピースで良いのだろうか? 移動してきたばかりで、私の格好はシンプルなワンピースに乗馬用のパンツを合わせていた不思議な格好のままである。
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