第16話 王都到着。え? 王様に謁見ですか?!


王都に到着すると、まず騎士団詰所に入り団長の執務室へと案内されると、扉を開いた先から飛び出してきたのは、綺麗な赤い髪にエメラルドグリーンの瞳の美人さん。

その美人さんは迷うことなく団長に向かっていき、思いっきりむこうずねに蹴りを入れていた。

両手を広げて油断してた団長は、声にならない声を上げてしゃがみこんでいる。

「まったく、黒の乙女が現れたおかげで助かったものの。私を未亡人にするとこだった落とし前は、これで許してあげましょう」


言う前に足が出てます……。

とっても快活で、男前美人な姉御がそこにはいました。

私、こういう美人さん大好きだ!

つい、目をキラキラさせて眺めていると、美人さんが気づいて声をかけてくれました。

「黒の乙女の前で失礼致しました。この、筋肉バカの妻で騎士団の事務官のマリア・アルバ・ミレイドです」

ニコっと笑うと、可愛らしくもなる、とっても素敵な美人さんに私もニコッと笑って答えた。

「三島優羽です。ここではみんなユウって呼んでくれますので、マリアさんもユウって呼んで下さい! 今の蹴り、最高でした!」

「あら、ユウちゃん良く見てたわね」

「はい! あの、油断し切ったところにむこうずねは、流石としか言えません!」


変なところで意気投合する私とマリアさんにため息を着いてベイルさんが突っ込んだ。

「マリア、話が出来ませんのでとりあえず、ここの執務室に入りましょう」

「それもそうね! 先に入って待っててちょうだい。お茶を……」


そこにひょっこりと顔を出したのは、マリアさんにそっくりの瞳と髪の可愛い女の子だった。

「お母さん、それは私がメリッサおばさんに頼んでくるから。お父さん部屋に突っ込んで、さっさとお話、始めた方がいいよ」


そういうなり、クリストフさんはサラッとスルーして彼女は歩いて行ってしまった。

「ジェシカ、よろしくね」

そうしてとりあえず、団長執務室で今後の話し合いをする事になったのだった。


「いきなり、こんなでごめんなさいね。さて、黒の乙女が現れたということは、やはり四方の砦と周辺国の近況は変わらず。むしろ悪化していると見ていいのかしら?」

そう言ったマリアさんに、ベイルさんが答える。

「各砦からも、そのように報告が上がってますね。一番キナ臭かった西を撤退させましたが、今後は北か東が危ないでしょう」

それに頷きつつ、マリアさんが続けた。

「むしろ、どこかしらが手を組んで同時に攻めてこられると、こっちは大変だわ」

それにベイルさんが深く頷き、言った。

「ですので、早急に我が国に黒の乙女が顕現した旨を、周辺各国に知らしめねばなしません」


もしや、私これから結構大変なことになるのかな?

平穏無事に暮らせるようになるのは、どうやら当分先になりそうだ。

イベルダは現状周辺国に狙われていて、情勢が落ち着いてないみたいだし。

救世主って言われるくらいなんだから、そういう状況も仕方ないよね……。

出来るだけ、上手いことやれたら良いんだけどな。

戦争は双方に被害が出るから、出来れば回避したいなと思ってしまうのは、平和な国に育ったからかな。

そうだとしても、私にあるのは癒しの術と魔法の力だから。

それを考えて、使っていくしかないんだ。


そして、平和になったら街中にこじんまりとしたお家を貰うなりして、ゆっくりのんびり暮らす。

それを目標にして、やれることをやって行こう。

私の中での方針が決まれば、私はここの話し合いがまとまるのを待つばかり。

白虎柄の子猫を撫でつつ待っていると、ジェシカちゃんが、割腹の良い女性と共に戻ってきた。


「お待たせしたねぇ、本当に黒髪に黒目なお嬢さんだね。生きてるうちに、黒の乙女に会うことが出来るとはねぇ」

「メリッサおばさん、ありがとう」

「ジェシカちゃんの頼みだからね。今度はお菓子も作っておくからね!」

お茶を持ってきてくれたメリッサさんは準備だけすると、さっさと部屋を出ていった。








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