第14話

夕方近く、その頃には森の傍に来ていた。

今日は、この森の手前の開けたところで野営になる。

野営となると、色々準備がなされてあっという間に天幕が張られており、煮炊きの場所まで出来ていた。

その間、私は今日頑張って走ってきた馬たちを労って、軽い癒しの術をかけてブラッシングしてきた。

そして、煮炊きの場所に来て驚くことになる。

そこで煮炊き担当の騎士さん達が作っていたのは、ザ・漢の調理って感じでぶった切って突っ込んで煮込みましたってものだった。


「ちょっと待って! これ味付けは何? お肉下味は? 臭みとらなきゃ美味しくないよ?!」

思わず突っ込むと、騎士さん達はへ? って顔をした。

「ちょっと、見せてね!」

鍋を見れば野菜やお肉が入っているものの、肉の臭みしか漂ってこない……。

「アリーン! サリーン! ちょっと手を貸して!」

馬と戯れていた二人を呼んで、鍋を見せる。

「これは、また……」

「ここらの妖精に声をかけたから、ハーブとか持ってきてくれるわ」

妖精にすら顔をしかめられてる品は食べれないと思うので、何とか食べられるように挽回したい……。

そうして、ここの近くにいた妖精さんがハーブやなんと山椒っぽいものも持ってきてくれたので、それらとお塩と胡椒で何とか味付けを整えて、鍋の匂いが美味しく変わってきたのでホッとした所に、クリストフさんやベイルさんがやってきた。


「黒の乙女。なにをなさってるんですか?」

あ、あれ?下手に動いちゃいけなかった? でも、あのお鍋は放置したら誰も食べられなかったと思うんだけれど……。

「騎士さん達の作ってたお鍋が、私についてる妖精さんでも顔を顰めてたから、ちょっとお手伝いを、ね?」

私の言葉に、何となく察したらしいベイルさんは深くため息をついたあと、若い騎士さん達にニコリと笑って言った。

「君たち、今度食堂のメリッサに調理を習いなさい。いいですね?」

キラッとモノクルを光らせて言う姿には、ハイという返事以外認めないという威圧感と冷気があったのでした……。

ベイルさん、怒らせちゃダメ、絶対。

私は、一つ覚えたのだった……。


私が手伝ったお鍋はいつもより良かったらしく、騎士さん達の旺盛な食欲により、見事綺麗に空になった。

うん、気持ちよく食べてくれて良かった。

「ユウ様。本日はこの天幕でお休みください」

なんと、準備されてた天幕のうち一つは私専用だったらしい。

いいんだろうか? 皆さん結構大人数で使うのに。

「ユウ様は、黒の乙女ですからね。順番に護衛も着きますので、安心してお休みください」


こうして、再び強い眼光でベイルさんに押し切られて、私はこの日広い天幕で私とアリーンとサリーンで休んだのだった。


翌朝、私はモフっと温かい何かにスリスリと寄ってこられたことで目を覚ます。

私の目の前には虎柄の子猫が居た。

「ん? 猫? どっから来たの?」

「ナーン!」

私の問いかけに鳴いて答えた、子猫は人懐っこく擦り寄ってくるので撫ででやると、喉をゴロゴロと鳴らしている。

「しかし、外は護衛の騎士さんもいるのに、いつの間に入ってきたの?」

思わず、抱えあげて目線を合わせて問うも、猫はさぁ? みたいな何も気にしない顔をしている。

「可愛いから、いっか!」

猫とのやり取りをしているうちに、アリーンとサリーンが起きてきて、猫に気づくと言った。

「この子、ユウと一緒に居たくて親から離れて来たみたいよ。一緒に王都に連れてってあげてちょうだい」

アリーンに言われて、私は頷きつつ聞いた。

「この子、もしかして普通の子じゃない?」

それには二人はニッコリ笑って言った。

「いずれ分かるわ」


こうして、二人の妖精に一匹の猫が私のおともに加わったのだった。


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