第13話 いざ行かん!イベルダの首都アジェンダへ
翌日早朝。
王都の騎士団のメンバーと団長と私は、砦から王都へと続く門の前に集まっていた。
そこには、朝も早いというのに何人もの住人と辺境騎士団の面々が集まっていた。
「まだまだ、やることも沢山あるから大変だと思うのに。ゆっくり休んでくれててよかったんだよ?」
私の目の前に立ったジェラルドに言うと、彼は首をブンブンと横に振って答えた。
「この辺境の地で我々を助けて下さった、黒の乙女の出立の無事を祈り見送らねば、精霊王からバチが当たります。わりと本気で当たるので、このお見送りは必須です!」
そんなジェラルドの言葉に王国騎士団の面々も、辺境騎士団の面々も、更には見送りに来てくれた住人達も、みんな一様に頷いているので、そうなの? と思っていると、サリーンとアリーンも頷いていたので、そういうものなのだと納得した。
「ユウは、相手を思いやれる優しいやつだからな。こんな盛大に見送られるのも大丈夫か不安になったんだろ? 大丈夫だ。ここでは、これが普通だからな」
私の不安をしっかり捉えて、頭をグイグイと撫でながら言うのはクリストフ。
「クリストフさん、グイグイちょっと痛いよ! 加減しないと、子ども達に嫌われちゃうよ!」
思わず突っ込んでしまった。
クリストフさんの我が子たちの扱いに、一抹の不安を感じて……。
「そうか? うちの子達は喜ぶんだがな?」
そうか、もう慣れてればこの力強い撫で?
で喜ぶんだね。
パパが強いと子ども達も強いのかもしれないなと思った。
ここ、西の辺境の砦から王都のアジェンダまでは馬でゆっくり休憩と野営をして二日の距離らしい。
森や草原地帯や、小さな街二つ抜けた先が王都なのだとか。
私はもちろん、一人で馬には乗れないのでいろんな騎士さんと相乗りして行くことになった。
最初は団長さんと一緒に乗ることになっているので、近くにいると準備が整ったのか他の騎士さんがクリストフさんに声をかけにきた。
「団長、準備整いました!」
「よし、皆並べ!」
団長の声に、騎士の面々が並び互いに剣を合わせて声を出し、別れの挨拶をして各々、騎乗する。
私もクリストフさんにヒョイっと引っ張りあげられて、無事に騎乗した。
たくさんの人の笑顔に見送られて、私達は王都を目指して出発した。
砦を出て、順調に進むが急ぐこともないのか、最初の村からの移動の時とは違いゆっくりとした速度で移動している。
「帰りはそんなに急がなくって大丈夫なの?
」
私の疑問に、ハハっと笑ってクリストフさんは答えてくれた。
「乗馬に慣れていない、黒の乙女の護送だからな。ゆっくりで構わんさ」
私たちのやり取りに、周りの騎士さん達もニコニコとしつつ頷いているので大丈夫そうだけど私は気になっていた。
「だって、ひと月離れてたらみんな家族に会いたいだろうし、そう思うとゆっくりで申し訳ないような気がしちゃって……」
つい、申し訳ない気持ちが顔に出ると近くの騎士さんが朗らかに言った。
「今回の遠征に来た騎士は独身者が多いですし、そう気になさらないでください」
確かに、周りを見れば私と同世代かちょっと上かなって年代の人が多い。
「さて、ここらで休むか。そろそろ昼時だからな」
そうして広めの草原で、一旦休憩となった。
そんなに経ってない気がしていたけれど、結構な時間走っていたらしい。
馬から降りて、私はクリストフさんの相棒で私も乗せてくれたリオンの前に立って鼻先を撫でた。
「私も一緒で重かったでしょう? 乗せてくれてありがとうね」
そう、声をかけて撫でると穏やかな瞳と目が合った。
「どうってことないよって返事してるわ」
アリーンがそう教えてくれて、私は再び目を合わせてお礼を言った。
「リオンは優しいね! ありがとう」
ヒヒーンと嘶きまた撫でで欲しそうに見えたので、私は鼻先を撫でてやった。
「すっかり、リオンが懐いてら。こいつ結構気性が荒い方なんだがな。ユウを見てすぐ、気に入ったんだろうな」
クリストフさんの言葉にサリーンが言う。
「動物達にとって、精霊王の愛し子と関わることは栄誉なのよ。喜んで乗せてくれるわよ」
なるほど、そんなものなのか。
簡単なお昼を食べて、別の騎士さんと相乗りになっても次の馬も確かに快く乗せてくれたのだった。
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