第12話
そこに団長はそれは、嘘だろう?と言う顔をして聞いてきた。
「さすがに、それは出来ないだろう?」
「まぁ、ちょっと見てて?」
私はそう言うと、自分の指先に帯電するイメージをすれば、それは直ぐに顕現し、私の指先には青白くビチバチ光る電気が小さく発生して、私は手近な金属にそれを向けると、ビチッと音を立てて走って落ちた。
その様子を見た騎士さん達も、団長と副団長も一気に顔色を変えた。
「ユウ様、これを大規模に出来ると言うことですか?」
「ここで小さく出来たから、多分出来ると思う。やったことは無いけれど。今ので感覚掴めたから、問題ないと思う」
実にあっけらかんとした私の様子と、今目の前で起きた出来事に、騎士さん達は顔色をちょっと青ざめつつも確信を得たらしい。
これなら、アビエダを前線から撤退させることができるだろうと……。
翌朝、朝日が昇り辺りが明るくなった頃。
私は、砦の見晴台に立った。
私の後ろには、団長のクリストフさんが着いている。
「ユウ。遠慮は要らん。派手にやってやれ」
その言葉を合図に私は、サリーンに手伝ってもらい言葉を相手方に届けてもらう。
「アビエダの兵たちよ。このまま攻めてくるのであれば、こちらにも考えがある。半刻の間に撤退せねば、精霊王の怒りを受けると心得よ!」
この時のためと言わんばかりに、私には綺麗な光沢のある黒のドレスが着せられている。
コルセット風の腰帯は金で黒との対比が眩しい程だった。
私の声はちゃんと届いたはずなのだが、アビエダの兵は引かぬままに半刻が過ぎた。
「とても残念だわ。アビエダの兵たちよ。精霊王の怒りを知るが良いでしょう……」
そう言葉を発したあと、私は両手を天に掲げ、言った。
「この国に悪意あるものに、精霊王の怒りを!」
手に、力を込めて大きく振りかぶると天から青白いイカヅチがバリバリバリと大音量を轟かせて、近くの大木を真っ二つに引き裂き、大岩は粉々に砕け、地面を大きく抉った。
晴天の最中にいきなり始まったイカヅチの襲来に敵の兵はパニックに陥り、収拾がつかず、逃げ出すものが続出でまとまりを無くし、砦前に敷かれた前線から次々と撤退して行ったのだった。
「ユウ。清々しいほどの勢いだったな。これは当分奴らもここには来ないだろう。ありがとうな!」
そう言うと私を抱き上げて、団長は大きな声で言った。
「敵は見事、黒の乙女が撃退して下さった! 今回は我々の勝利である!」
その宣言に、砦の人々は歓声を上げて喜び、ここ一ヶ月続いていたという、砦の攻防は無事、幕を閉じたのだった。
私も、無事に済んでホッと息を吐いた。
「夜は祝賀会だ! みな、よく頑張った!」
こうして、私の異世界での初めての戦争は互いに死傷者を出さずに一応の幕引きが出来たのだった。
その夜、住民と騎士達でささやかに行われた宴。
私は何故か真ん中に設えられた、椅子に座ってこの場を眺めていると、怪我を直した人々が来て、口々にお礼を述べて去っていった。
小さな、おませな男の子にはほっぺにチュッと挨拶みたいなキスを貰った。
可愛いので、ギューッとし返しておいた。
「ユウ様。この度は、誠にありがとうございました」
ここに来て、私を村からここに案内したジェラルドが挨拶に来た。
「いいえ、私の力が役に立って良かった。今後も気が抜けないだろうけれど、これジェラルドに預けるから。役立ててね!」
私は、あの悪意のある人物判定装置の水晶をジェラルドに託した。
「必ずや、無駄に致しません。ユウ様、またお逢い出来る日を楽しみにしております」
そう踵を返して、去っていった。
とっても精悍で逞しく頼りになる人だった。
いつかまた会いたいものだ。
私は、明日にはこの砦から王都に帰還する王国騎士団と共に王都へと移動することになっていた。
ここの街並みが、綺麗になった頃また見に来れたら良いなと思ったのだった。
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