第4話
森で一夜を明かし、朝起きれば妖精さんからの差し入れのフルーツでお腹を満たした。
一番美味しい感じになってるフルーツを取ってきてくれたみたいで、どれも甘くって美味しかった。
「持ってきてくれた子達って、もうこの辺りには居ないのかな?」
私の疑問にサリーンが答えてくれた。
「そうね、持ってきてくれた子達は恥ずかしがり屋さんだから。最初のひと口を見届けったら帰って行ったわ」
なるほど、食べるまでは見届けてくれてたんだ……。
届くかは分からないけれど、お礼は言うべきよね。
「美味しい果物をありがとう。嬉しかったよ」
言葉よ、届けと願って口にすれば風に流されるように音が渡っていく感じがした。
「ホント、ユウは魔法をあっという間に自分のものにするね…… 」
私の様子を見て、アリーンは呆れたような顔をして言う。
「でも、私が魔法使えた方が都合はいいんでしょう? だったら良いじゃない?」
サラッと言う私に、アリーンは頷きつつも言った。
「そうだけどね。飲み込みが早くって驚くわ!」
そうは言われても、感覚で使っててそれが意外にもスルッと使えちゃうから違和感もないんだよね。
こればっかりは、私だってどうなってるか疑問はあるんだけれど、深く考えてもこの世界を知ってる訳じゃないから。
フューラってかなり独特な世界だと思うし。
ここに馴染んできたなら、それで良いんじゃないかな……。
帰れないんだしね……。
「さ、今日はこの森を抜けよう! 人に会わないことには、なにも進まない気がするから」
「そうね、行きましょう。一番近い集落は小さめの村よ。こっち!」
アリーンとサリーンの案内で、私は森を歩き始めた。
木々が覆い、少し薄暗いので光を出して周囲を見つつの移動だ。
光は、電球をイメージしたらポッと光る球体になった。
魔法、便利すぎる……。
そうして、朝から歩きつづけて小腹が空く頃には、森を抜けて小さな集落にたどり着いたのだった。
そこは広さ的には学校の校庭位の広さがあり、小さめの小屋が三つと小さな畑があるのどかな光景の村だった。
だって、自由にニワトリっぽいのも歩いているし。
日本の田舎にもありそうな光景だ。
ただ、小屋はレンガ造りでしっかりしていそうだし、ここは魔法が使えるのできっと少ない人々でも快適に過ごしているんだろうことは、建物や周囲の柵が綺麗なことから察しがついた。
一番端にあって、森の近くの小屋のドアの前に立って、私は一つ大きく息を吸って吐き出したあと、ノックをした。
「ごめんください! どなたかいらっしゃいますか?」
私のノックと声に、中から音がして木戸が開いた。
そこから顔を覗かせたのは、大柄な体躯のモジャっと髭を生やした男の人だった。
「ん? お前さん、こんな辺鄙な村にどこから来たんだ?」
私を見て、細めだった目を開いて驚いたように言う男の人に私は答えた。
「そっちの森から来たの。ここになら人がいると聞いて……」
異世界から来たことを言っていいのか、分からずとりあえずの答えを言うと、男の人はさらに驚いて言った。
「不可侵の精霊の森から来ただと!? お前さん、この世界の人間じゃないな?」
えーっと、私がいた森。
精霊の森で、不可侵の領域だったらしい……。
アリーン、サリーン。 そういう大事なことは教えておいてよ! と内心叫んだが、もう仕方ない。 バレてるんだし、サクッと話しちゃおう。
私って、結構肝座ってるよね……。
「はい。どうも召喚されたらしいです。私に付いてきてくれた妖精が、教えてくれました」
そんな私の答えに、大きな男の人は慄いて、そして私の腕を掴むとドアを閉めて大慌てで走り出した。
私はなす術もなく、引きずられて村の真ん中の小屋に連行されたのだった。
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