219話 アイテムとの戦い⑦

 その女性は身長は百七十センチメートルほどの女性にしては高い背丈をしており、アキトを見て可憐に笑っていた。

 真っ白な長い髪に、青空色の髪飾りをしており、右目には皓、左目には黒目に丸く白い円が刻まれ、耳には鯨を象ったの金色の耳飾りをつけている。

 白を基調とした青色の鯨柄が入った和服を着ており、とても落ち着いた雰囲気を持ち合わせているがどこか不思議な感じを醸し出し、それがハイドゲンを釘付けにする。

 腰より下からクジラの尻尾が生えており、和服で隠れてはいるが尻尾の先は隠しきれていない。


「久しぶりだな……これも一種の賭けだったが上手く機能してくれたか……」

「はい、お久しぶりでございます!マスター!!」

「ミシロやめんかいっ」


 アキトに抱きつこうとしたミシロはそれを予測していたアキトに軽く躱される。

 アキトはレベル五十になり、様々なステータスが上がり、装備できなかった装備も自動的に装備され格段と強くなる。レベルが五十になり半分に達した事でこれまでのレベルでのステータスの上がり幅は格段に上がる。さらに、ここから一レベルごとの上昇率は二倍以上になるが上げるのがさらにしんどくなる。

 レベル五十になりアキトは色々と変わるところはあったが、一番変わったのはミシロが姿を現した事だった。

 ミシロは、OOPARTSオンラインで言うところの課金アイテムだ。

 それもOOPARTSオンライン史上もっと出にくいとされ、総合ランキングトップ十以内の人しか所持していないものだった。


 そのガチャでのトップレアがミシロのような生物をモチーフとした超古代聖物(イニシエイジ)と呼ばれるもので全部で百種あり、使い魔に近い存在だった。

 超古代聖物は、プレイヤーと共に戦わせる事ができ、持っているだけでもう一人追加されるというアドバンテージを持った特殊なアイテムだった。


 会話でき、さらに成長もする。最初ガチャから出てすぐは、ほぼ何も出来ない状態だが、戦闘を行う事で成長していく。超古代聖物は、人工知能(AI)が備わっており、将棋やチェスのように戦闘を行わせる事で学習し強くなるという能力を持っていた。


 超古代聖物の中でもレア度があり三つに分けられる。


 ミシロが位置し百種中十種ある最高レア’雲海’、その下に位置するのが百種中二十種ある’大樹’、そして一番下に位置するのが百種中七十種ある’地殻’になる。


 これらの違いは、超古代聖物にある人工知能の最大試行回数だ。

 それぞれのレア度によって戦闘によって学習する試行回数が決まっており、レア度地殻が試行回数一万回、大樹が十万回ある。

 そして、最高レアの雲海は最大試行回数上限無しという差になっている。

 最高レアの雲海以外は強さがある程度定まるが、レア度雲海は時間さえあれば強くなり続けるのだ。

 それに、この超古代聖物は持ち主の固有属性とほぼ同じ属性を有しており、相性が絶対に良くなる。


 だが、一番問題なのはこの超古代聖物の排出率だ。

 超古代聖物の地殻が百万分の一の確率、大樹が一千万分の一、そして、最高レアリティが、五千万分の一という確率になっている。

 ガチャに天井は無く、とてつもないガチャアイテムとして有名だった。全てのガチャにラインナップとして載っており、一プレイヤにつき一つという縛りがあり、もしそのどれか一種が一つでも排出されればガチャのラインナップから消えるという早い者勝ち仕様だ。


 なので、アキトやけん、ジグはこれを狙いガチャをしていたみたいなもので、他のアイテムや装備は全て副産物にしかならなかった。

 この確率なので、たまたま当たるという事などはほぼ無く、重課金者でも相当きついガチャだった。

 勿論、これはあくまでも当たればいいねという裏的要素が強く、徐々に影は薄くなっては行った。

 それでも、排出ログが出た日には大騒ぎ、お祭り騒ぎにはなったが……


 アイテムで比較すると、アイテムのレア度、強さ、能力様々な事を総合的に見ても超古代聖物の方がオーパーツアイテムよりも頭一つ出ていた。


 ミシロは、アキトの元世界の地球上で現存する最大の動物種の英名:Bluewhale、和名:シロナガスクジラがモチーフになっており、アキトと同じ重力系の属性を持っている。

 人工知能が使われているがミシロを含め超古代聖物は、とても人間らしく作られており、それがこの世界でも継承されている……勿論人工知能という学習機能もだ。


「お前、俺と同じ匂いがするなぁ!!」


 ハイドゲンはミシロを指差し言う。

 だが、ミシロはそんな事を意に返さずアキトの体を確認する。


「怪我はありません!だ、大丈夫ですねっ!マスター!!」

「大丈夫だって……」


 ミシロは自分が展開した真っ白な重力の壁を確認し、一切の異物の混入が無い事も再確認する。

 この壁であのとてつもない威力だったハイドゲンの攻撃も軽々防いだのだ。


「全く、俺を無視とはいい度胸してやがるなぁああっ!!」


 一瞬で圧縮した空気をハイドゲンは片手で作り出し押し出すようにミシロへ向かって投げ飛ばす。

 一発目の攻撃を防いで傷ついたミシロが作り出した真っ白な重力の壁は破壊されそのままミシロの顔面に直撃する。

 しかしミシロには一切傷は付いておらず、むしろその圧縮され投げられた空気が避けるようにミシロに弾かれたのだ。


「俺の攻撃で無傷……だとっ!」


 その直後、ハイドゲンの目の前に一瞬で移動したミシロは足を頭の上から蹴り下ろしハイドゲンを足だけで仰向けにして地面に固定する。

 ミシロの顔を見上げるハイドゲンだったが、さっきまでニコニコしていたミシロの姿はどこにも無かった。


「よく聞け下等アイテム、私の事を攻撃するのは300000000歩譲っていいとして、私のマスターへの攻撃の意味、理解しているのかしら?」

「下等……だとっ!!俺はこの世界に君臨する最強のアイテムなのだ、貴様!絶対に殺すっ!!」


 下等という言葉にハイドゲンは強く怒りを覚え、反抗しようと体を動かそうとするが一切動かなかった。


「何!何だこれはっ!俺には人間の攻撃など一切通じないはずっ!!」

「ふっ!何を言っているのあなた?私は人間ではありませんよ!ふふふっ!」


 ミシロは笑顔でそう答えると、そのまま思いっきり足に力を入れ地面が一メートル程沈ませるとハイドゲンの腹にミシロの足が貫通しており、間髪入れずに、地面を滑らせるように前方へ蹴り飛ばす。

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