220話 アイテムとの戦い⑧

 ミシロは性格上、マスターであるアキトとその仲間以外にはとてつもない敵対心を向け殺すことに一切の躊躇がなくなる。そして、それがアイテムの場合さらにその感情は強くなる。


「……流石だな」

「ありがとうございます!マスター!」


 遠くでぐちゃぐちゃになった体をハイドゲンは修復しつつゆっくりとアキト達の方へ歩みを進める。

 その間、ミシロはハイドゲンに一切目もくれず、アキトの方へかけよっており、喜怒哀楽の落差が激しかった。


「ミシロ、お前は……」

「マスター!分かっていますよ……ここはどうやらOOPARTSオンラインではないようですし……」

「事情はあとで説明する、今はやつを倒すことに集中してくれ」

「がってんです!!」


 ミシロは、二人の事が気になったが今は触れてはいけないと本能的に察していた。


「全く、次から次へと……アキト、そいつはお前のか?」


 ハイドゲンは完全に体を修復させており、ミシロを強く睨みつけており、怒りの感情が露わになっていた。


「……ああ」


 アキトはハイドゲンから聞かれ少し考えてしまった。確かにミシロはガチャでのアイテムにOOPARTSオンラインでは位置付けられるが、常に戦闘でコミュニケーションをとっていたりと親密な関係にあったので、途中からアイテムという感覚はアキトからは抜けていた。

 それに、この世界ではもう一人の人としてしか見れない程ミシロは人間味に溢れていて、まるで二人目の妹のようだった。


「マスター早く殺しましょう」

「ちょい待ちっ!」

「うぐっ!」


 突如、ミシロは飛び出そうとするのでアキトは慌ててミシロの首根っこを掴むように静止する。


「何をするのですか!!マスター!!」

「今回は俺がやりたい、あれでいくぞ」


 アキトがそう言うと、ニンマリとミシロも意味深げに笑う。


「ちょうどいいしここで解除するか」


 アキトは、ミシロとのあれをする前に、自分の負荷を取り除く。 そして、常に特訓としてやっていた重石もそれと同時に取り除く。

 自分が別人なのではないかと思うほどアキトの体は軽くなり、一瞬驚く程だった。


「アキト、お前を器にしたらそいつも付いてくるのか?」

「うーん……分からん」


 ハイドゲンの質問にアキトもどうなるのか気になったが、かなりどうでもいい部類に入るのですぐに却下する。


「マスター私が暴走する前に早くやったほうがいいですよ!!」


 明らかにキレ気味にミシロは言う。

 その警告にアキトも急いで’超古代聖物・廻’を発動する。

 超古代聖物には他にも三つの力があり、超古代聖物・廻、天、之力がある。

 今回使用した、廻は超古代聖物とその持ち主が一体化し、SPMPの大幅増加に、ミシロ分のステータス増加など持ち主が’超強化’されるというもので、この状態の時だけに使える、魔法とスキルがそれぞれ、超太古属性、太古属性、時代級属性、超属性、属性それぞれ一つずつ使えるようになる。これらはレベル関係なしに使え、さらに普通の属性よりも強化されたものになる。


 アキトの中にミシロがはいるようなもので、視界や反射など様々なものが二人分になる。


(お邪魔しますねマスター)

(ああ)


 二人は、意識的に会話もでき、判断や作戦など頭を使うことも二人分だ。


(まるで和衷協同だ……な)


 アキトは突如、急激にレベルが上がり自分でも驚く。

 超古代聖物・廻を発動した時に和衷協同の中にミシロの名前が刻まれ、ミシロの分のレベルが上がったのだ。


 それもレベル二十五ーー

 アキトのレベルはいきなり七十五となった。

 そして、さらに超古代聖物・廻の効果でレベル二十五分のステータス、’蓮’が付与される。

 なので、今のアキトのステータス欄はレベル七十五’蓮’という表記になっていた。

 その急激なアキトの変化にハイドゲンも言葉が出なかった。

 そう、変化しているのはステータスなどの内側的なものだけでなく、アキトの姿も変化していた。


 黒髪だったアキトの髪は元の黒に白が加わった髪色に変わっており、ユニフォームの上から溢れ出るアキトの属性とミシロの属性が融合し、白を基調とした黒のクジラ模様の描かれた和風の羽織になる。

 相変わらず、目元の隈は取れないが、左目には黑、右目には皓と刻まれていた。


「ここまでとは……素晴らしいなアキトっ!!」


 そのアキトの姿を見たハイドゲンは我慢できなくなり、一瞬でアキトの目の前まで移動する。

 その勢いのまま硬い石を掴むように手を折り曲げ、空気を圧縮し、爆発的に力が増幅する。


 そのままハイドゲンが拳を振り抜くがその拳にアキトは手を合わせ掴む。

 アキトの掌とハイドゲンの拳が合わさるだけで、両者の衝撃がぶつかり合い二人の間の地面に亀裂が走り、空をも両断する。

 フィールドがついに砕け、各地に散らばっていた黒い球が消滅し、それと同時にバグったようにフィールドが変わりはじめ、噴火や洪水、地鳴り、地震など周期的に発生する。


 だが、そんなフィールドの影響も今のアキトとハイドゲンの空間では関係ない。


 アキトは受け止めた掌の指を折り曲げハイドゲンの拳を掴むと、自動的に重力属性が発動し、握りつぶされる。

 オーパーツアイテムは超太古級属性でないとダメージが真っ当に通らないが、それすらも影響がないのが超古代聖物だ。


 そして、握りつぶされた拳から重力波が腕に伝わり、腕をも弾き飛ばす。


「こりゃすごいや!!」


 そんな事を気にも止めず、ハイドゲンは一気に体を修復させながら反対の腕を使い拳を振り抜き、それもまたアキトに潰され、修復された最初の腕を再び使うという超力技で連続で殴るが全てアキトに潰される。


「お前はもう人間の領域を踏み外しているなぁ!!」

「ーーふっ!!」


 アキトは、片方の拳を掴み潰すのではなく自分の方へ引き寄せてそのままハイドゲンの顔面を掌底で弾き飛ばす。

 首がちぎれるが、ハイドゲンには一切関係なく、復活する。

 だが、アキトはその一瞬隙の内に腹に軽く蹴りを入れ、ハイドゲンを弾き飛ばす。


(どうされますかマスター、このままでは埒が……)

(分かっている、ミシロはハイドゲンでなく、このフィールドを見張ってくれ)

(……がってんですっ!)


 ハイドゲンはもうすでに蹴りを入れられた部分も修復させ完全に復活していた。


「アキトぉ……どれだけお前が強かろうとアイテムである俺は殺せない……どうする?」

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