201話 集大成
リゼラの振り抜いた拳を追いこすように青白い角張った隔壁で作られた巨大な拳が出現する。
そして、その後ろからリゼラはその作った拳に己の拳をぶち込む。その巨大な拳に合わせるようにハルは地面の中でスキルによって作り上げられた天恵を材質にした骨を作り、それを突っ込んだ左腕に纏わせ引っ張り出す。
その工程を即座に完了させ、迫るリゼラの拳に向け自分から向かっていく。
「「はぁああああああああああ!!!!!!!!」」
お互い目一杯ただただ力任せに作り上げた拳を振りかざす。
巨大な強大な暴力で出来たリゼラの拳と左手に骨の鎧をつけた小さく鋭利になった技量のハルの拳はぶつかり合う。
その瞬間ーー
二人を起点に放射状に衝撃が広がり、地面がさらにえぐれ整地されていくかのようにめくり上がり、土の津波としてこの辺り一帯をうねらせる。
互いの拳がぶつかった箇所が二人とも欠損はしていたが、どちらも全く引けを取らない。
使用した天恵の量も凄まじく、属性のぶつかり合いは反発の力により徐々に二人の体を壊していく。
最初手の指の感覚がなくなり始め、徐々に腕、肩、胸と拳を振るう際に必要な箇所が犯されるのだ。
だが、何方もそんな事には気づいておらずただただ必死に力の限り、足を踏み込み、腰を使い、全身の筋肉騒動員させ全身全霊だった。
さらに、スキルで作った拳は先端だけでなく全体的に崩壊し始め、徐々に肌が見え始め、その衝撃から守るものがなくなり、切り刻まれ互いに腕から出血し、焼け、凍結し、痺れるなど様々な状態に苛まれ、ハルは左手、リゼラは右が既に使い物にならなくなっていたが、最後の最後まで腕を酷使する。
「いぎぃ……ぃいいいいいいいああああああああああああああ!!!!!」
「うぐぅ……ぅうううううううああああああああああああああ!!!!!」
最後はリゼラもハルもただの拳にまでなり、真っ赤になった腕で力比べをするように押し合う。
最初あった力は何処かへ消えてしまい、今はただ気力だけで拳を押し合っていた。
そして、最後の最後まで二人の力の比率は一切狂い無く同じでそのバランスが崩れることはなかった。
そのまま腕の限界が訪れお互い同じタイミングで、腕が落ちる。
「はぁはぁはぁ……」
「はぁ……はぁ……」
二人は拳同士の衝撃の中、目を開けていたので半分ほど視力が弱まっており、さらに全身傷だらけだった。
各々、魔法やスキルで自身の体は強化し防御力も上がってはいるが、それよりも、この土壇場で攻撃力が予想を遥かに上まっており、防御機能があまり意味をなしていなかった。
「……まだ、倒れないのかい?」
「抜かせ……」
ハルとリゼラはこんな中でも苦痛に歪めた顔では無く、お互い、とてつもない集中力でその眼力は重たすぎるほどだ。
「ーーふっぐぅ!!」
「ーーはぁっぶぁ!!」
その刹那ーー
リゼラとハルは動くもう片方の腕を振り上げ思いっきり顔面を殴り合う。二人とも同じタイミングでさらに拳を作る時間すらも惜しみビンタになる。
ただ、その衝撃音はえげつないもので、顎の骨から頬骨など軽く粉砕されていた。
その衝撃でふらつくリゼラとハルは使えないはずの腕を無理やり振り上げ体勢を維持し、その反動でもう一発ずつ顔面を殴りつける。
骨が粉砕しているので響くのはうっすらとした鈍い音だけで体勢も悪かったことからそこまでの力が入ったビンタではないので口元から血が吹き出る程度で済む。
さらに追加の衝撃で立ちくらむ両者だったが、足を一歩引きぐっと堪える。
そして、そのまま腕を前に突き出すとちょうどそれが重なり掌と掌が重なり掴み合う。
ぐっと強靭な握力で互いに掴み合い、目を見合う。
「これで最後だ!」
「ああ……」
両者はもう既に限界が来ており、ここで放つ魔法、スキルが最後の一撃だった。
ハルは、これまでここまで自分を吐き出して戦ったことがない。兄と戦った時も前哨戦みたいなものであったし、さらに実力差も大きくまだ未熟だった。
そして、学園内にも自分の脅威になる人間は一人としていなかった。シャーロットとは一度手合わせしたが、それでもハルをここまでにしたのはリゼラが初めてだった。
そして、この手加減なしの身を削った戦いはハルにとってはご褒美みたいなもので、散々押し付けて来た枷を外して好き勝手やれるという楽しさを今全細胞を使って感じていた。
だが、それもここで最後だったーー
「アギト君には感謝しかないな……」
「全くだ……お互いにな……」
グッと力を入れ最後を惜しみながらハルは全身全霊全力をかけた時代級聖文神武属性魔法<超神・聖心壊滅/ビッグバン・ルイン>、リゼラは、時代級堅城隔壁属性スキル<超壁・迦楼羅城/クリエイション・ミス>を放つ。
一瞬で二人の視界は真っ白になり完全に視力を消しとばす。
それと同時に巨大すぎる時代級スキルと魔法の衝突に包まれ上下方向にある物体と音を消しとばし、円状にその衝撃が伝わり、荒れ狂い一帯を破壊し尽くす。
**
リゼラのスキルとハルの魔法が治ると、二人は足を向け合い大の字に倒れていた。
半目を開け、奇跡的に意識は残っており、さらに、口は血だらけで喋りづらさはあったが喉も正常に動いていた。
「……ひき……わけ……か……」
「……」
ハルは引き分けとは言うが、リゼラにとってはアギトと二対一な所があったので引き分けは負けと等しかった。
そんな中慌ててこの様子を見守っていた教師陣が二人到着し
、応急処置の手当を行う。
「な、なんて傷だ……」
「これは、応援がいる。近くにいる他の人を呼べ」
教師二人は的確に処置を施しながら増援も呼ぶ。
その様子を見れはしなかったが処置によって少し視界の戻ってきていたリゼラは顔を横に向け教師の足元を見ていた。
すると、突然ーー
真っ赤な丸い何かがリゼラの視界遮るように落ちてくる。
その丸い何かは一回転した後リゼラと目が合い、それが処置を施してくれていた教師の頭だという事を理解し、目をゆっくりと見開く。
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