117.5話 久しぶり

セルイド聖王国城内一室ーー


「久しぶりだなキサラギ」

「私のことは’キサちゃん’って呼んでって言ってるじゃないシズ」


 キサラギ・ネルは少しムッとした表情で頬を膨らませる。動きづらい服装が嫌いなキサラギが珍しくドレスを着させてもらっている最中でシズはどこか新鮮な気持ちだった。


 今、この場には、シズの他にもお付きの人が三人いる。二人はキサラギにドレスを着させ、もう一人はシズに出す為の茶菓子を用意している。


 なので、あまり深い話は出来ない。


「そんな名て呼んだら周りに示しがつかんだろうが」


 シズは、頬杖を付き、外に視線をズラしながら答える。


「見てもいいのよ」

「興味ない」


 キサラギはシズの後ろで小悪魔のような笑顔で待ち構えているが、キサラギをのせると面倒なのは分かっているのでシズが振り返ることはない。

 最初の頃はよく騙されていたがここ最近ようやくキサラギという女をシズは分かってきていた。


「寂しいわねーシズは」

「悪かったな寂しくて」

「これで終わりですキサラギ様」


 後ろで付き人が終了の合図を知らせ、この部屋を出て行く。キサラギお気に入りのお付きを一人残してこの空間は三人だけになる。


「これ、美味しいのよねー」


 シズに出されたはずのお菓子をキサラギはヒョイっと掴み口に運ぶ。 そのまま、シズの横に座るとキサラギは次々とお菓子を口に運んで行く。


「食べ過ぎると太るぞ」

「私はどれだけ食べても太らないよーだ」


 シズはキサラギの自由っぷりに最初は呆れはしたが、もういつものことなので諦めている。


「そういえば、今度帝国の魔導修練祭に呼ばれるんだって?」

「ええ。同盟国だしね、まあちょっとした旅行だと思えば楽しいものよ」

「私は無理だなあぁ、そういうお堅い場所は苦手だ」

「それに皇国と帝国は不仲なんだからそもそも大丈夫よ」

「色々あるからなー」


 昔の確執が今だに解決してない、アイテムを収集するのに本格的に動き出した二国は否が応でもぶつかってしまう。


「キサラギ様そろそろお時間です」

「分かりました」


 キサラギは立ち上がり、外を見据える。


「気をつけて行ってこいよ」

「ええ、ありがとうシズ」


 シズも次いで立ち上がり、キサラギと一緒に外へ出る。


「また、帝国旅行話聞かせてくれよ」


 そのままシズは、城内静かな廊下を付き人二人と一緒に気まづいながらも歩いていた。


 国に帰ったら私もあいつら連れてたまには旅行でもすっかなー!

 キサラギは久しぶりに休暇でも貰おうと企むのだった。

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