117話 腑抜け感
「まさか、あの先生がこんなことをするなんてね」
「同感だ」
アキトは、ウタゲ告げた第三フェーズという恐らく最後のメニューについてどうするかハヤトと話し合っていた。
話し合うと言っても、いつも通りの場所でお互い手合わせしながらだ。
「最後の二週間半、自由時間だなんて……拍子抜けだよ」
ハヤトの言うことは最もだった。
アキトも最初は自分の耳を疑ったぐらいだ。
一週間半も自由だと逆に困る。
この学園での加重は切れることは無いが、それ以外はもう何をしていても大丈夫だ。昼まで寝てもいいし、ショッピングや娯楽施設でのストレス発散など人それぞれ。
アキトはどうせ、暇だと魔導書館で本を読むか寝るかのどっちかなので、体が鈍らないようこうやってハヤトと一緒に特訓の続きをしている。
他の出場が決まっている生徒もやはり、休みを与えられようとも自己的に動き、己の課題を淘汰する。
「けど、そのおかげもあってか、こうやって自由にやれるんだから嬉しいよ」
鋭く尖ったハヤトの右下からの蹴り上げを顔面すれすれで躱し、その蹴り上げに合わせて体を落とし、アキトは拳を流れるように放つ。
「そうだな」
アキトの拳に合わせ、左足も時間差で蹴り上げアキトの衝突させる。その衝撃でハヤトは後方へ跳び難なく躱されてしまう。
アキトの腕は痺れ、一定時間硬直し動かなかった。
ハヤトも同じなのか着地した後、膝を地面につけ息を荒くする。
すると、この空間に置いてある砂時計の中に入っている砂が全て下に落ちきる。落ちきった砂は量が減り、再び砂時計がひっくり返り時間の測定を開始する。
そう、これが二人のお昼ご飯の時間を示すものだ。
「もう、こんな時間か……」
「やっぱり、こっちの方が時間の進みが早くていいや」
ハヤトはそこらへんに座り、自分のアイテムボックスから食べ物と飲み物を取り出し、頬張る。
アキトも同様に、ハヤトの前に座り昼食を食べる。
「今の俺達のレベルでどこまで通用するんだろうな……」
「どうだろうね。個人でのアイテム持ち込みは禁止だからそこが大きいかもね」
「ハヤトはレベル八十だから本気出しゃ余裕だろ」
「あのね、本気出し過ぎたら殺しちゃうじゃないか。そこはうまくやらないとさ……」
そう、逆にハヤトはレベル的に強すぎるので逆に大変だった。
「もしかしたら、本気を出さなきゃかてない相手かもしれんぞ」
「あのね……これでも無課金プレイヤーの中ではトップを張ってたんだから、そこは大丈夫だよ」
決して驕らず、油断する気はないとハヤトの目は言っていた。
**
「痛つつ……」
日が落ちすっかり辺りは暗くなった道は、不気味な雰囲気を醸し出している。その中を歩かないといけないと思うとアキトは少し憂鬱だった。
本当は、三時くらいまでにしようと思っていたが、のりにのってしまってこんな時間になってしまった。
この時間はもう夜ご飯も終わってるし、風呂の時間もギリギリだ。
「それにしてもハヤトのやつやり過ぎだっての」
アキトは足腰を使いすぎて、歩くのもの大変だった。
魔導修練祭では、どんなアイテムが使えるかが当日明かされるそうなので、やって意味があるかは分からないが、これまでやってきたアイテムボックスの整理を細かいアイテムまで注意して見るようにしている。
OOPARTSオンラインでのアイテムだったらどんなものでも対応出来るよう頭に入れている。
この世界独自のアイテムが来たら……その時はその時だ。
アキトは自室の扉を開ける。
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