149話 初日から多忙
「シロネ、大丈夫だった?」
「疲れたぁ……」
シロネがペルネを倒したことで、他の二人も各々の行動をしたが、それをエーフとユイは予測し、しっかり対策を講じていた。
エーフは退路を全て罠で埋め尽くしており、逃げゆくシャルア・ダイナを打ちのめした。シロネでも注視しなければ見過ごすような高性能な罠の魔法もあったくらいでここまでは予期していなかった。
ユイはユイでシロネを狙っていた、ハザマ・ダイナを魔法も使わず、スキルも使わず、ただただ微小の空気の矢を作りそれを首元の頚椎を狙い的確に射抜いた。
その結果ハザマは体が動かなくなり、そのまま気絶するように倒れた。しかも、その空気の矢には付属効果があり、刺さった場所から振動を伝え、他の場所への攻撃も可能な攻撃だった。
その瞬間さらに空気感が強くなるーー
「ユイ、エーフよ気をぬくでない」
「分かってる……」
「うん!」
ペルネ以外の二人は教師陣に回収されたが、ペルネだけは白目を向きながら、立ち上がっていた。
勿論、シロネの魔法も継続したままじゃし、殺さないようにはしたが、かなりの力を入れて殴ったので気絶しているとシロネは思っていたが、最初の見立て通りペルナも大概に規格外だった。
「……」
ペルネは体には力が入っていないような、気だるそうな体勢でこちらを無言で見据えている。
「ユイ、エーフ、援護を頼むのじゃ」
「分かった……」
「りょーかい!」
シロネは二人の肩の力が良い具合に抜けている事を確認し、ペルナに相対する。
「……」
刹那ーー
「早く下がるのじゃ!」
ペルネの速度が異常に上がっており、突然の回避行動で背後に飛び上がり、片手を地面について下半身を上に持ち上げ一回転し躱す、だが、その着地を狙ってくるペルネの拳を脇にうまく挟み、シロネの懐に膝を入れる。
「こやつ!」
ペルネの体はさっきよりも遥かに肉体の硬度が上昇しており、シロネの蹴りをもろともしていなかった。
ペルネ本人の意識は沈んでおり、痛覚などは一切無い状態でただただ肉体だけが反射的に動いているだけだ。
腕をあらぬ方向から出してきたペルネにシロネは顔面を掴まれ、ものすごい握力で拘束される。
「すごい力じゃ……」
後ろからエーフとユイがわしに当たらないよう追撃を加えるが、それすらも何とも思っていないのか、一切手は緩まない。
ーー仕方ないのじゃ
「影属性スキル<陰の沼地/シャドウスワップ>」
このスキルで再びペルネの動きを止め、うまく誘導し、拘束から抜け出す。
「まさか!くっ!影属性スキル<影転送/シャドウワープ>」
シロネはすぐさま近くの影の所に飛ぶ。
ペルネはシロネの拘束をさっきの比にならない速度でぶち壊し、腕を振るったのだ。
その衝撃の風圧で放った先の木がへし折れる。
ユイ達もその衝撃を避け、遠距離攻撃を放つが一切効果が無い。
ーーっう!!!
二人に興味が無いのかペルネはシロネがスキルで飛んだ場所を視界に捉えると、走り出す。
まるで、欲だけで動くような感じだった。
その姿は魔物そのものに近く、恐怖すら感じる狂気さだった。
「ここで、ユイやエーフの消費も抑えたいし、わしの体力だって有限じゃ。あんまり使いたく無いが仕方なしじゃな」
影で、ペルネが走るのを阻害し、こちらへ到着する時刻を遅くする。
「ふぅ……ここじゃな」
体の力を抜きながら息を吐き、片手は地面、もう一方の片手は空け、ペルネがシロネの半径十メートル以内に入った瞬間ーー
倒木やユイやエーフ、小さな石など、この周辺にある全ての影が一斉にペルネを拘束し、関節全てを突き刺し、そのまま影を分裂させ体内まで侵入する。
その影は無理やりペルネの体内を進み、筋肉が動かないよう中から拘束する。
超影属性魔法<影手術/シャドウオペ>
影での攻撃なので血液などは出ることなく綺麗に相手を捕縛する、最強捕縛魔法。
本来は魔物用での実用性があるが、今回は仕方なかった。
まるで影のオブジェのような体勢で固まるペルネはシロネが拘束を解くと今度こそゆっくりと倒れる。
そのまま教師陣が回収し、ひと段落する。
「終わったのじゃ、ユイ、エーフ!」
シロネが近づくと、ユイとエーフは何故か少しずつ後ろにさがる。
「おい!どうして離れるのじゃ?」
「あんな魔法聞いてない……」
「そうだよ!あんなの反則だよ!!」
それはお互い様だろとシロネは思うが、ユイとエーフにとったらシロネは未知の部分が多いのでこれはしょうがなかった。
「今更じゃろ。それ以上逃げるならペルネと同じように二人の体を隅から隅までほじくりまわすぞ!」
「うっ……分かった今は停戦だ」
「そ!そうだよねユイちゃん……私も賛成」
やっと分かってくれたのか(ほぼ脅しじゃが)、二人は近づいてきてくれる。
「他はどうしておるかの?」
「まだあれ以降気にするほどの情報は入ってないよ」
「そっかーじゃあ一層の人たちはもちこたえてるのかな?」
「いや、恐らくわしらのように一層と二層で何とか食い止めておる感じじゃろうな」
「何しておるのじゃエーフ?」
何故か、エーフはアイテムボックスからレジャーシートを敷き思いっきりお昼ご飯を食べようとしておるのでびっくりする。
「何って、いつ食べられるかわからないから昼ごはん食べちゃおうと思って!」
「お主、まさかじゃが、選べるアイテムのうち一つをレジャーシートに使ったわけじゃ……」
「え?そうだけど……」
シロネは何とか耐えて作り笑いを浮かべたが、ユイはそれすらも無理なのか目頭を押させて上を向いている。
それに、アイテムを選んでいた時シロネと一緒にすると言って一回はエーフはアイテムを登録したはずだ。
何故かそれは聞いてはいけない事なのではという思いがシロネの中に芽生えたので一旦周りを探る。
「うん?あっ!まさか!私が、ただただご飯をゆっくり堂々と食べることにツッコミみたいんでしょ!」
「う、うむ……」
「あ、あのねー!私だって成長したんだから!ちゃんと周囲に罠はってしっかり見張ってるよ!」
「エーフのいつもの天然かと……」
ユイは思いっきり言ってしまう。
「うーひどいユイちゃん……」
「すまん、わしもユイに同じくじゃった……」
「あー!せっかく、私が道中で食べられそうなきのみ拾ってあげたのに!そんな事言うならあげないからねー!」
魔導修練祭では食べ物飲み物は本当に必要最低限しか提供されないのでその他の食事がしたければ自分で現地調達というのがルールだ。
しかもその支給されるのも、悪用されないよう一日ごとにアイテムボックスから消失するようになっているので、食べないと損だし、こっちで取れたきのみの方が断然美味しい。
「分かったのじゃ!前言撤回じゃ」
「私も……」
「わ・か・ればいいのです!」
流石に、シロネもお腹が空いているのでそれには勝てなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。