147話 警戒レベル

 そう、ここまでの警戒心の上げ方は相当な実力ががあることが分かる。

 黒聖クラスのしかもルイン学園の人がズ・バイト学園の白聖クラスの三年に図らずともあれだけの傷をつけた時点で警戒するのは普通だ。


「ルイン学園が’怠者’と呼ばれているはずなのにこれほどの人たちがいるということは、やっぱりあれはバカが言っていただけの絵空事でしたね」

「くだらんな、まあやはりバカな一部の貴族供はまだこの期に及んで、ふざけたことをぬかしてやがるからな」


 やっぱり、どの学園でも市民と帰属との確執はなかなか溝が深いのか愚痴が止まらない。


「さっきの子も貴族だっけ?」

「ああ、居なくなったけどな」


 実際シロネの戦いたくないというのは本当で、シロネの方は全員タイプはどちらかというと後衛になる。相手は前衛二人に後衛一人という凄くバランスの取れたパーティというか姉弟だ。


「さ、始めようか!」

「エーフ大丈夫かの?」

「だ、大丈夫でう」


 エーフは接敵する事によってさらに緊張感が高まっていた。

 あんまり目立ちすぎるなとはアキトに言われているがここはしょうがないとシロネは自分に言い聞かせる。


「わしが前衛するから二人はサポート頼むのじゃ」

「え?シロネって前衛っ……分かったごめん……」

「気にするなユイ、わしは久しぶりに前衛が出来て寧ろ楽しいからの」

「私も精一杯サポートするから思いっきりやってねシロネちゃん!」


 普段、やらない前衛だがこれもシロネからしたらいい経験だった。 中衛、後衛をやるなら前衛の気持ちを知れっという昔だれかがいっていた言葉を今更思い出す。


「うむうむ……で、さっきも言ったが不意打ちはもっと慎重にタイミングを選んだ方がいいぞ」

「チッ!」


 飛んで来た小型内府二本を今度は避けずに片手で挟み込んで、さっきと同じように迫って来ていたハザマは急ブレーキをかけ再び戻る。

 ユイと同じようにナイフを生成するタイプとシロネは一旦属性を予測する。


「ハザマも一人で行くな」

「うるせぇ……お前は俺に合わせるだけでいいんだよ!」


 ハザマはアイテムボックスから細身の刀身の剣を取り出す。


「影属性魔法<影剣/シャドウソード>、生成するタイプじゃないか」


 シロネは手にあるちょっとした影から真っ黒な剣を生成する。


「いいねぇ……斬り合うか!」

「斬り合うじゃなかろうに、ただお主が斬られるだけじゃよ」

「言うねえ!」


 久しぶりに前衛ということで、高揚しているのかもしくは相手にしている奴が口が悪いからか、シロネは少し昔の血気盛んだった頃に戻った感じになってしまう。

 シロネはハザマから放たれる斬撃を全て刃を触れさせることなく軽く往なす。

 ハザマはある程度攻撃してきたら後ろに下がり、ペルナの方が変わって攻撃をし始める。

 一定間隔で後ろから魔法やスキルが飛んで来てそれは後ろのユイとエーフが相殺してくれているのでシロネは気にする必要がない。

 勿論、こっちも後衛は二人いるのでユイとエーフでお互いに交代々でシロネをサポートするのと前衛二人への攻撃を行なっている。


「凄いね!そこらの前衛よりよっぽどいい動きする……」

「そっちこそ二人でこれば良いじゃろうに」

「じゃあ!そうするね!」


 そう言った瞬間突然お辞儀するように腰を曲げるとその後ろからハザマがシロネを狙って横に振り抜く。

 ハザマは奇襲をするたびにその練度も徐々に上がっている。

 振り抜かれた剣に自分の剣を合わせて上手くペルナの方へ誘導するが、もうすでにそこにはペルナの姿はなく、後ろの二人の元へ走っていた。


「そう言うことかの……」

「うぐっ!」


 即座に、ハザマを一瞬、影で縛り硬直した瞬間を蹴り飛ばし、ペルナの後を追うが、そこへ後方から魔法が飛来しシロネを邪魔してくる。

 迫るペルナをユイとエーフは偉いことに冷静に対処する。ユイもそうだが、特に目立つのがエーフだった。


「任せてユイちゃん!水属性魔法<水榴弾/スイホウ>」


 エーフは水の塊を複数個作り出し、それを全てペルナに向けて放つ。

 それを軽々となるべく一直線で向かいたいのか水の塊とギリギリをせめて進んで行くがーー


「ーーなっ!!」


 そう当たってもいないのにエーフが放った水の塊はいきなり爆発する。爆発と同時に水の刃が拡散し、ペルナを吹き飛ばし、さらに追撃で水の刃が襲いかかる。

 その時間もあってシロネもユイとエーフに接近する。


「これは、凄いや……」

「大丈夫か……姉貴……」


 あの口の悪いハザマも心配になったのかペルナの元へ近づく。

 そう、たった一発だけならそうはならないが、数発が連動して爆発したので一歩間違えればユイ達まで被害を被る魔法だったのだ。


「どうだったかな……」

「凄かったのエーフよ……ユイも驚いておるぞ」


 ユイも横で支援しようと思っていたのか矢を作ってはいたがあの威力を見て放つのをやめたらしく、珍しく少し悔しそうな表情をしていた。

 そして、時間差で、さっきの爆発で散った水が上から降ってくる。


 冷んやりとした水滴が肌に触れ、ツーっと滴り髪が濡れているのが分かるほどの量が振り終える。


「よっと!!」


 さっきの爆発でペルネの体には無数の傷がつき体もボロボロになっているが、全くダメージ感じさせない体の動かし方で起き上がる。


「いやぁ……やっぱりそうそう上手くいかないよね!」

「そりゃそうだろ」


 二人はシロネ達へ少し笑みを浮かべた気色悪い表情で観察する。

 後ろにいるシャルアの空気感も少し変わる。


「シロネ……やってもいいかな……」

「うん?勿論、いつでもはじめい」


 すると、ユイは空気を読んで待っていてくれたのか、凄くうずうずしていたので、早いとこ解放させてあげる。


「じゃあ、遠慮なく……」


 ユイは二人にバレないように軽く弓を引くような動作を弓なしで行うと、空気のような矢が二人に向けて放たれる。

 しかもその空気はしっかり目を凝らさないと見えないもので、背景に綺麗に溶け込んでいた。


 刹那ーー

 その矢は途中で後衛のシャルアの魔法に撃ち落とされてしまい、ユイの奇襲は失敗する。

 このままいけばいいと思ってしまった時こそあまりいい結果には至らない典型的な例だ。


「申し訳ありませんが、二人には触れさせませんよ」

「なんじゃ、バレとったか」

「そうだよー!」


 その一瞬で、ペルナはシロネの後ろへ周り、両手を合わせた拳で殴られるーー

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