17話 節目
あれから、十日が経過した。アキトはレベル二十五に到達しており、かなり動けるようになっていた。
ステータスもかなり上昇しており、努力レベルの恩恵もあってかOOPARTSオンラインの時より良いステータスになっていた。
そしてレベル二十五になった恩恵が、武器や防具の装備だ。
装備品はレベル制限があり、いくら高価な装備を持っていてもそのレベルに達していなければ装備することが出来ない。
だが、アキトは様々なガチャを引いて来ており、外れは大量にある……それを捨てずにずっと持っていた。
なので、どのレベルにも対応出来る装備品が揃っているので何も問題はなかった。
ちなみにOOPARTSオンラインでアキトは武闘家係の職を極めているので、武器は基本腕や手ににはめる物になる。
武器と同じだが装備品も二十五以上のものがつけられるようになる。
さらに、レベル五十になると上級職へステップアップでき、その先一つの職業を極めレベル百になった時それぞれの職業ごとに称号が付き、ステータス上昇に加え、様々な効果が付く。
レベル二十五になった最後の恩恵だが、それは固有スキルの発現だ、これは通常のスキルとは違いその属性固有の効果を持ったスキル、なので強力なものが多い。
固有スキルは属性の属性ポイントが、ある一定のラインに達すると発現する、これは属性によって様々あり、アキトの場合は重力にポイントを十五ポイント振ることで発現する。
アキトは装備品を一新し、ステータスがさらに上昇するのを感じつつ、思考を変え目の前にいる十五体のスケルトンを見据える。
初日じゃ考えられないくらい増えており、今ではもう一日中動いてもバテることはなくなった。
十日間やってみたがあとこれの二倍と考えるとなかなかにハードだが、何故だか今は高揚している。
単純にOOPARTSオンラインの初期の頃に戻ったみたいで楽しすぎるのだ。レベル百になってからは案外退屈だったことが多かったから今みたいなレベルを上げて試行錯誤するといった感覚を忘れていた。
「さてと、やりますかね」
シロネは木の上でスケルトンの操作に集中している。
今いる十五体+外で活動しているスケルトン百体近くを操作している。
同時操作する事は不可能なので、オート七割操作三割だ。
アキトの目の前にいるスケルトン十五体はオートだ。
アキトは、ある程度までレベルが上がったらスケルトン派遣をやめてもらい、シロネにはこちらに集中してもらうつもりでいた。
レベルが上がるに連れて、どうしても上昇率は落ちてしまう。なので今やっている魔物狩りも入ってくる経験値は微々たる物になってしまうからだ。
アキトは用意されたスケルトンに向かい息を整え、三秒カウントする。
三……二……一
ゼロの瞬間、アキトは地を蹴り十五体のスケルトンに急接近する。
今日も特訓が始まる。
*
少し時間が経ち今アキトは昼休憩を取っている。
昼ご飯を食べている最中にシロネは何か怪訝そうな顔で唸っていた。
「どうかしたのか?」
「いやの、この森に置いてあるスケルトン達が次々殺られているのじゃ。これまでは一日に殺られて一、二体だったんじゃがの、今日はもう二十体殺られておる」
アキトもシロネの話を聞いて不審に思い、周りを警戒しながらやる事にする。
頭の片隅にこのことを置きつつ、アキト達は再びレベル上げを開始した。
**
沈んでゆく太陽、辺りの木々が朱色に染まり物体の影が周りの朱さによりさらに黒々しくなった頃ーー
アキトは息を荒くし、朱く染まった上空を見上げていた。
倒したスケルトンは今日で百三十五体、今日はこれで最後のスケルトン召喚になる。
シロネも派遣しているスケルトンを戻しており、今は木の上からこの場を見ている。ーーそして今日最後のスキルを発動する。
円形の魔法陣が俺の前に出現し、十五体のスケルトンが出現する。
もうSPもMPも残り僅か……ここからがアキトの正念場、成長できるか否かの分かれ道になる。
もう何度も対峙した風景、そのスケルトンを夕日が朱色に染め普段は負のオーラを持つスケルトンもアキトにはなんだか可愛く見えた。
あれ、頭おかしくなってる……とボケをアキトは自分の中で刻みつつ若干震える手足を振り立たせるため二発ほど頬を叩く。
「さぁこれで今日は最後じゃ、わしももう今日はこれ以上スキルは使えん」
アキトはまだまだレベル百までの道のりは長いがレベル百になった時のことを考えると今からでもにやけてしまう。
アキトは自分の中でテンポを刻む、目を閉じ体全体の力を抜く……
そして自分の中の最高のタイミングに合わせるーー
あと、少し……スケルトンは十日目まではアキトが動くまでスケルトンが動かないようにしてもらっている。
それももう今日まで明日からはこちらのタイミング無視でスケルトンは攻撃を開始する。
だからこそアキトはこの感じを忘れないよう脳に鮮明に刻み込む。
スケルトンの少しの動き、視線、全てを観察しアキトは踏み出すーー
これまでとは違い一瞬でスケルトンの前衛の間合いまで近づく……
そして、一撃目を入れようとスキルを発動する態勢に入った。
ーー瞬間だった
アキトは背筋にゾックと冷や汗が溢れ出し、避けろと己の勘がこれまでにないくらいの警告音で鳴り響く。
何が来るかはわからないがアキトは自分自身を信じ一瞬で近づいたスケルトンを尻目に一気に緊急回避するため重力属性スキル<重力圧縮波/グラヴィティウェブ>を放ち、その反動でを利用しその場を退避しようとした瞬間ーー
意識が吹き飛んだ。
*
はっとアキトは意識を戻す。
何だ!何があったんだ……時間にして数十秒、アキトは意識を飛ばされていた。
辺りを見渡すとさっきまでの夕日による綺麗な朱色は皆無、今は人血のような真っ赤な……それよりも濃い真紅に染まり木々が焼け落ち火の粉が降り注いでいる。
「大丈夫か!!アキト!」
シロネが後ろから話しかけてくる。
アキトは振り向こうとするがうまく動くことができなかった。
今日の疲れと今の何らかのダメージによりアキト体はとっくに限界を迎えていた。
あの時緊急回避をしていなかったら恐らく重症もしくは死んでいたかもしれない。アキトはそう思うだけで鳥肌が全身を駆け巡る。
そして、アキトは意識が回復すると同時に身体中が火傷を負っているいることに気がつく……ジリジリと痛みが意識の回復と共に追いついてくる。
皮膚がやけ、少し剥がれている。
アキトはすぐさまアイテムボックスからポーションを取り出し振りかける。
すると、少し回復したのか振り向けるようになる。
「すまん、油断したシロネ。今どうなってるんだ」
「何らかの魔法かスキルじゃろうこんな広範囲の高威力な魔法わしと恐らく同等もしくはそれ以上じゃ」
シロネも疲弊していたからギリギリで、少し火傷を負い目に余裕がない。
相変わらず辺り一面燃え盛っており、木々は炭となり崩れ落ち葉は灰となり積もっていく。
それにものすごい煙と砂埃、火柱ができ今も炎は勢いが衰えることなく燃え盛っている、空気も熱く辺りの温度が急上昇している。
そして、アキトとシロネ二人の眼前にある一番大きな火柱から人影が映る。
「おいおい、スケルトンがこんなにいるとは聞いてないんだけどなぁ!たっくめんどくせぇいっそ森ごと炭にして野原に変えちまった方がいいんじゃねぇか!」
ーーその声と同時に炎の中から一人の少女が姿を表す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。