18話 炎髪の少女
アキト達はその少女を見つめていた。
小さいその少女はシロネより少し身長が高く、まだその顔には幼さが残っており前髪は眉毛辺りで綺麗に横に切られたぱっつん、真っ赤な若干ボサついた髪をポニーテールにしてあり、鋭い目つきで真紅の瞳、若干周りの熱さのせいか少し頬が赤い。ジャージを羽織っており中からは白い体操服が見え、なにやら白い棒を咥えている。
(シロネどうする?)
アキトは<和衷協同>でシロネと会話する。
シロネはその少女が出て来た瞬間に影に隠れている。
(こちらに対して敵意があるのかないのかの確認じゃの、どういった目的でこちらを狙ったのかさりげなく聞いてみるのじゃ)
「簡単に出来るでしょ」と言わんばかりに注文してくるシロネに対し、アキトは初対面の人に対しての話方をこの状況下で考えてしまう。
覚悟を決めてアキトが喋ろうとした時、それよりも先に少女が喋り出す。
「私はウタゲ・ミルという、帝国ルイン魔導学園の教師をやっているものだ。一つ聞きたいんだがスケルトンをこの森に放ったのはお前らか?」
(シロネ本当のこと言うか?)
(いいのか?間違いなく戦闘になるぞ)
(じゃあ、適当に嘘でもつくか?)
(それでも戦闘じゃろうな)
ーーな、なぜ?
何方に転んでもどうにもならない問題は初めてだったので、アキトは心の中でもう一度問い直してしまう。
どうしてもここでの戦闘はしたく無いアキトはため息をつく。
(こういう場合、基本相手は答えを知っとる場合が多いのじゃ)
なるほど、相手を試すために使うと……仕方ない、なら嘘よりかは本当のこと言って言い訳でもしますかね。
アキトは自分にそう言い聞かせ、頭の中で良い塩梅の言い訳を模索する。
「確かにスケルトンを森に放ったのは俺たちだ、だけど人に危害を加えたりせず、生態系にも気を使ってやっていたんだ見逃してくれないか?」
そうこれは全て本当で、人を傷つけないようなるべく人がいなさそうな場所を選び、周りの魔物を一定数狩ったらスケルトン同しで戦わせ経験値を得ていた。ここまでの配慮をシロネは一人でしていたのだ。
「成る程……目的は特訓といったところか」
ウタゲは色々と考察を始める。
辺りは未だに炎が上がっていて全く治る気配がない、山火事が心配になるレベルなのだが燃えているのがこの一帯だけであれから燃え広がっていない。
「まぁ今回は許してやる。その代わりこれからの特訓はこの森から出てやれ」
ウタゲはこれ以上は面倒臭いので早いとこ終わらせたかった。
アキトは了解の意を口に出そうとした瞬間ーー
「おい、そこのちんちくりん本当に教師なのか?チビが俺に命令するんじゃねぇ」
突然シロネが影の中から異様に上手いアキトのモノマネでウタゲを挑発する。
それを聞いた瞬間は顔を手でおさえ天を仰ぐ。
(これも修行の一貫じゃ、頑張れアキト〜)
(あとで覚えておけよ……)
少しでも感謝したのがバカだったとアキトは強く思う。
目の前にいるウタゲは周りの炎よりも顔を赤くし、プルプルと震えている。
「お前、死にたいんだな。せっかくの私の好意を棒にふるとは良い度胸じゃねぇか!!」
はっきりと分かりやすく、その挑発に乗せられたウタゲは完全にキレていた。
だが、アキトはこの疲弊度ではどんな相手でも手こずるのは明白であったが、さらに相手が猛者となると勝率は気薄だ。
アキトが考えている内にウタゲは突っ込んでくる。
ウタゲは突っ込んでくる最中にアイテムボックスから木刀を取り出し、それに火を纏わせている。
木刀の属性武器だ。
一瞬でアキトの目の前まで肉薄するとウタゲは上段の構えから思いっきり振りかぶり斬りつける。
それを間一髪のところで躱すが、木刀を躱しきれても燃え盛っているので、完全には避けきれない。
だが、アキトが幸いだったのはウタゲが怒りのせいで冷静な刀捌きではないのでなんとかやり過ごすことができている。
ただ、交錯する瞬間は熱したフライパンに直接触ったように熱いので長くやっていると手を大火傷することになる(もう火傷にはなっている)ので、早いとこ決着をつけないといけなかった。
アキトはなけなしのSPを使い重力属性スキル<重力拳/グラヴィティナックル>を木刀を振りかぶった瞬間多少のダメージ覚悟で突っ込みぶっ放す。
怒りのせいで相手をしっかり見ることができなかったのかアキトはウタゲのみぞおちにヒットさせることが出来る。だが人の体に触れているは思えないほど柔らかかった。そして、ウタゲはアキトの重力属性スキル<重力拳/グラヴィティナックル>を受けたにも関わらず何食わぬ顔で笑っていた。
「そんな程度の技で殴ってくるとはなーー身の程を知れ!!!」
「炎属性スキル<炎斬/フレイムキラー>」
アキトは無防備だった肩にさっきの倍以上の炎を纏った木刀で斬りつけられる。
触れた瞬間焦げ臭い匂いと共に激痛が全身を駆け巡り、気づいた時には数十メートル吹き飛ばされていた。
アキトは吹き飛ばされる途中あった大木にぶつかりうずくまっていた。
血反吐を吐き、さっき木刀をぶつけられた赤黒く染まり皮膚の原型が消え肉が焼け骨がうっすら見える箇所を片手で必死に抑えポーションを何本もかけていた。
属性はそれぞれポイントが振られ強さを増すごとに色々な効果が付いてくる。
今回のポーションが効かないというのもそれが原因だとアキトは仮説を立てる。ウタゲの使う炎系の魔法、スキルで受けたダメージは普通のポーションで回復出来ない。
ポーションの上のランクにあるハイポーションでも治らなかったのでその仮説はかなり信憑性が高くなる。
(まさかここまでのやつとはな。わしも誤算じゃった)
シロネが回復属性魔法<中級回復/ヒール>をアキトに発動する。
(一旦宿屋に戻る。<中級回復/ヒール>だけではだめじゃ)
シロネは焦っているがそんなことを気にとめるほどアキトには余裕がなかった。
シロネから受けた回復属性魔法を阻害するかのように火傷している箇所が抵抗しており、今もアキトの肩は若干燃えている。
あっやべ……意……意識が……
アキトは痛みや疲れなどが合わさり、気絶する。
(そうじゃ少し休め、今すぐ手当てするからの。影属性魔法<影転送/シャドウワープ>)
この影属性魔法<影転送/シャドウワープ>は転送先にある影と自分の影を入れ替えそこに自分たちを呼び寄せるという魔法だ。
シロネは残っていたSPを全て使い果たしアキトとシロネはワープする。
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