122話 絡まれる

 なぜ、こうなってしまったのだろうか……

 アキトはあれから、後ろにいた素性も知らない、初めて会った冒険者パーティに連れられ酒場に来ている。この人達の行きつけの店だ。

 円卓のテーブルでアキトから時計回りに巨漢の男、好青年の男、双子かもしれない女性二人という感じに座っている。


 目の前には色鮮やかなたくさんの料理と良く分からない飲み物が置かれている。


「お前さんは、どこの学園なんだ!」

「まあ、待て彼も混乱しているはずだ。まずは自己紹介が先だ」


 巨漢の男が肉を頬張りながら、とんでもないでかい声でアキトに話しかける。バルトに近い何かを感じたが下手したらそれ以上だった。


「そうだな!まずは俺からだな。俺の名はガドン・リューズだよろしくな!!」

「僕は、エスト・カーベルトこのパーティ’ガレッド’のリーダーを勤めている、よろしくね」


 爽やかな笑顔でこちらに軽くお辞儀する。金髪で、身長も意外と高い、体格は流石に横にいる奴には負けているが、装備越しでも鍛錬の跡が伝わってくる。


「私、コロ・メーデー」

「私は、ロナ・メーデー」

「「双子の姉妹だよ。よろしく」」


 やっぱり、アキトの考えは当たっていた。想像以上に息ぴったりでとても仲が良さそうだった。

 コロの方は髪が長く、おっとりとした感じで、ロナの方は髪が短く目つきが少し釣り上がっていて気が強そうなイメージを感じる。


 二人とも銀髪で可愛らしい。

 それに、ここまでされたらアキトも自己紹介しないわけにはいかない。


「俺は、アキトって言います。一応、ルイン学園の生徒です、よろしくお願いします」


 一応ってなんだよとアキトは自分で自分を突っ込みたくなるが、初対面の人、しかもこういう特殊そうな人たちと喋るのに気を使ってしまい、変な言葉が出てしまう。


「アキトくんね、よろしくね」

「やっぱその制服!ルインかー!アキトは魔法祭に出るのか?」

「ガドン魔導修練祭……そろそろ覚えろ」

「あれ、そうだっけ?」


 ロナの方が呆れた様子で、ガドンを軽くどつく。軽くといってもこれはガドンだからだ。この威力を一般人にやったらとんでもないことになっている。

 どつかれた本人はけろっとした表情で、特に痛がる様子もなくご飯を平らげて行く。


 アキトも、せっかく出された料理なのでちまちまつまんでいる。


「ええ、俺も出るつもりです」

「そっか。頑張れよ!!応援してるぜ!!!」


 ガシガシとガドンはアキトの背中を叩く。

 ガドンは力加減が出来ないのか、かなり痛かった。


「弱い学園だね。どこかに勝ったとこ見たことない」


 ロナが結構ズバッと言い放つ。流石に、この発言の威力にはガドンも負けたらしく、さっきまでの騒がしさは嘘のように止まる。


「ご、ごめんね。うちのメンバーが失礼なことを言って」


 慌てて、エストがこの場を宥める。

 アキトは別に怒る事ない。

 それ以上に初対面相手にここまで言えるロナにアキトは驚いていた。

 下手をすれば喧嘩に発展してもおかしくない発言で、普通なら皆から煙たがられる存在になる。

 だが、こうやってエストはパーティに入れていると見ると、実力以上に何かあるとアキトは考える。


「大丈夫ですよ。俺もまだ一年でよく分かってないので」

「そう……ごめん」


 ロナも周りの反応で理解したのか、若干反省してそうなしてなさそうな感じで身を引く。

 それに、アキトはこの魔導修練祭ではルイン魔導学園が結果が著しくないことは知っているし、実際問題帝国のレイ・クラウド学園に戦力を吸われているのも確かだ。


「でも、今年は勝ってみせますよ」

「がっはっはっは!確かにその勢いはいいぜ!素晴らしいぜ!!」

「けどね」


 ガルドが続きを言う前にエストさんが遮る。


「今年、というかここ三年間は運が悪い」

「運が悪い?」

「ああ、今のレイ・クラウド学園の三年生には帝国国王の息子がいるんだ。実力的には僕達全員でかかっても勝てないだろうね」


 エストはアキトを見てしっかりと喋ってはいるが、目はアキトを捉えていなかった。


「それによ、まだ一人ならいいんだぜ。帝国国王の息子に加えてその周りも過去一だって言われているな!」

「帝国国王の息子だからって強いんですか?」


 確かに、優秀な血を引いているので、そらそこら辺の一般人よりかは実力はあるものだという事は分かるがそんなに上手くいく事ばかりではない。


「とんでもないよ。初代国王からずっと続いている一族で、超実力主義。しかも初代国王は、力が圧倒的過ぎて帝国をたった数年で作り上げた人だからね」

「今の国王も年老いて分からなくなったが、昔は超人だったって聞くしな」

「面白そうですね」


 アキトは帝国のちょっとした歴史も知れて意外とこの人たちに連れられて得もあったと感謝していた。


「ガッはっはっは!!いいなその勢い!!」

「ただ、やるのはいいが、気をつけてくれよ」


 少し表情を曇らせながらエストは今度はアキトの方をしっかり見て言ってくれる。


「私達も自慢したいですからね!」


 いつのまにかテーブルの上にあった料理が全て消えていた。


「コロ。君ももう少し早くから会話に参加すればよかったじゃないか」

「エストよーこいつはいつもこうだって知ってんだろもう治んねえって!!」

「私はご飯中喋らない主義なので……」

「あ!そうだ、明日は大丈夫そうかいアキト?」

「はい、明日は大丈夫ですけど……」

「じゃあ、さっきのロナのお詫びとしてこの国を案内してあげるよ」


ーーおお、それはありがたい。


 アキトは地図はあるが、その土地に実際いる人に案内してもらったほうが絶対に面白い。


「みなさんはいいんですか?」

「ああ、俺はいいぜ!!」

「「いいよ」」

「てな感じだ。後、今は魔導修練祭で冒険者も帝国内での仕事も多いからね、警備がてらやらしてもらうつもり」

「それじゃあお願いします」


 その日はパーティ、ガレッドと別れ時間も時間だったのでアキトは目的地に歩を進めていた。

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