123話 酒場 ”ゲーテ”
ーー集合場所はと
アキトは、昨日冒険者パーティ’ガレッド’と一緒に食事した酒場に来ていた。
「この店、’ゲーテ’って言うんだ……」
集合時間より少し早く来てしまったので時間を潰そうと中に入ろうとする。
「営業してるのか?」
酒場と聞くとやはり夜にやっているイメージが強いのでアキトは今の時間だとやっているか不安で仕方がなかった。
「あ、やっぱ開いてない」
扉を開けようとしたが全く人の気配がしないのですぐに察することができた。
アキトは酒場’ゲーテ’の近くの壁に寄りかかりアイテムボックスを開いて、集合時間まで適当に時間を潰す。
昨日泊まった宿泊施設はかなり豪華で、帝国の本気度が窺えた。
例え弱いルイン魔導学園だからと言って待遇が悪い事は無く、全ての対応が完璧だった。
そして、最後にウタゲから魔導修練祭でのルール説明を再度受け、当日のチーム分けが発表された。一年二年三年それぞれ混合せず、一年は一年だけでチームを組む。
基本、三人一組み(例外はあるが)で、作戦はこの学園のリーダーを務める生徒執行会長を中心に放射状に広がり二年、三年で外側を固め、内側を三年で構成する。
この試合では、最後に生き残っていた生徒の学園が勝ちなので誰でもいいから生き延びればいい。なので基本こちらから攻め込むことはないと言っていた。
どの学園もそう考えたら、ずっと膠着状態が続くんじゃないかと思ってウタゲに聞いてみたが、そんなことはないと言う。
なぜなら、レイ・クラウド学園がいるからだ。
アキトはその意味がよく分からなかったが、ウタゲが教えてくれる。
確かに膠着状態でいればヤジは凄そうだが、時間制限でみんなが一位という、平和的なものになる。
しかし、レイ・クラウド学園は自分たちが一位にならないといけないプライドと帝国最強の学園としての誇示もある。
一回、かなり昔にそう言った膠着状態があったが、その時はレイ・クラウド学園が全ての学園を攻撃し、ものの半日で全ての学園を葬ったという事例もあるくらいだ。
なので、絶対にそれはないとウタゲは言い切った。
次にエルが質問したことだ……学園同士が結託していた場合どうなるか。
その質問にはウタゲは即答で、「別に違反でもないし、やりたければやればいい」と答えた。ただ、その後に付け加えてウタゲは、「終わって勝てばまだいいが負ければ帝国には二度と来れなくなる」と付け加え、そこで話が終わった。
そりゃ、そうだ。
学園の試合は帝国内での注目の的だ。
そんな、仲良しごっこなど誰も期待していない。
「お!早いねアキト」
アキトは、開いていたアイテムボックスをそっと閉じ、エストに向き直る。
「おはようございます」
「おう!!よく寝たかよ!!」
がしがしとガドンさんに頭を叩かれる。
「「時間ぴったりですね……」」
アキトが意外だったのがコロとロナも来てくれている事だ。アキトは来るとは聞いていたが結構気分屋なとこありそうだったから勝手に自分の中で来ないと思っていた。
「アキトはどこか行きたい場所はあるかい?」
「’ガレッド’の皆さんのおすすめでお願いします」
「お!じゃあ、あそこでいいんじゃねぇか!」
「あそこは、確かに静かだけど……」
エストは少し渋そうな表情をするが、すぐに何か自分の中で結論付けたのか表情は元に戻る。
「今はどこも人が多いから最適だと思うよ」
コロとロナも同意し、それを見てエストも頷く。アキトは、どこに連れて行ってくれるのか正直検討もつかないので置いてきぼりだった。
「よっしゃ!じゃあ行くか!!」
*
アキトは今日一日で人混みを大嫌いになった。元からそんなに好きな方ではなかったが、今日で百パーセントまで到達した。
さっきから、帝国一大きい通りをひたすらに歩いて行く。勿論その先を示すのはレイ・クラウド帝国の長がいる居城。
前いた世界では、基本こう言う居城を建てる時は、敵の攻撃を凌ぎやすいように街を配置したりと思考をするものだが、この帝国は全く敵の侵入など考えていない設計だ。
帝国の城の前には二本の大きな川が流れており、そこにかかっている橋を渡らないと城にはたどり着けない仕様になっている。
「あれ?」
アキトはてっきり、その橋を渡って城を案内してくれるとばかり思っていた。
「おいおいまさか城に入れると思ってたかよアキト!」
「ええ、まあ」
「残念だが、部外者は一定のランク以上の冒険者もしくは国王に許可を得てるやつしか入れねぇようになってるんだよ」
「そうなんですね……」
城の中はともかく周りを少し見学するくらい許されるとアキトは思っていた。
「そう、いつかは堂々と入れるようにはなりたいけどね……」
「そうだな!!」
「私達が行くのはこっちよ」
その川を渡る手前で左に曲がる。すると、そこには横にある城には劣るが建物にしたら異常に綺麗に保たれ、外観も白と銀を基調とした教会が聳え立っていた。
豪華絢爛な建物はいくつも見て来て、OOPARTSオンラインでもかなり凄いデザインのものを見てきたがそれと比べても、トップクラスに踊り出るくらいの建物だった。
アキトが声を出せずにいると、分かる分かるといった相槌をみんなで打っていた。
「これが!帝国の第三の名物といってもいいな!」
「ただ、今の時間帯は入れないようになっているんだ」
「え?じゃあ、どうやって」
「ガッハッハ!!アキト、お前さんはただこの建物を見に来ただけって思っただろ!!」
「はい」
「そこは、大丈夫。僕らしか知らない裏道があるんだ」
ーーそれ、大丈夫なん?
アキトは何か嫌な雰囲気しかないが、ここはエスト達について行くことにした。
エストらガレッドは敷地内の入り口を潜り、そのまま正面からではなく裏側に周る。
するとーー
そこには、何かボロくなって入れる穴があるとか、従業員用入り口的な裏口がある訳でもなく、ただの壁があるだけだった。
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