114話 訓練相手
アキトは昨日セナから言われたがやはり本人から聞くまでは確信が持てなかったので一応、ルナに話を聞こうと思い、アキトは午前の授業が始まるまでにルナを探しているところだった。
「アキト……誰を探してるの?」
アキトがキョロキョロと視線を移動させているとそれを察したのかユイが声をかけてくる。
「ん?いや、ルナって子を探してるんだけど……」
「あーあの子……」
「知ってる?」
「それならさっき見たかも。確かあっちの方で一人ぼーっとしてた」
「情報提供ありがとうさん」
「もう直ぐ授業(訓練)が始まるから時間には気をつけてね」
アキトは、ユイが指さした方向へとりあえず疑うことなく素直に従い向かってみることにした。残り時間が三十分をきっているので出来るなら早めに見つけたいところだが。
早足で向かっていると意外にも直ぐに見つかった。
「あっ!来た!」
アキトの存在を察知したのか、アキトが声をかける前にルナは振り返ると手を振っていた。
「大体わかってるって顔だな」
「そうね。昨日はセナが先に言っちゃったみたいで」
「ああ、それは別に良いんだが。なんで俺は首を切られたんですかね……」
別にどんな理由だろうと、アキトが首を突っ込むことはないが当事者として理由ぐらいはせめて聞いておきたい。
「そうね。概ね、セナから聞いたと思うけど、このままアキトに教わり続けるんじゃなくて自分でやってみたいと思っちゃったのよね」
「そうか」
本当にルナがそう思っているならアキトの出番はこれで終わりだ。
「これまでありがとうね。魔導修練祭じゃ私の強さ見せてあげるわ!」
「ああ、楽しみにしてるよ。それに、もし何かあったら俺を頼ってくれて良いからな」
「もし、本当に行き詰まったらその時は助けを求めることにする。それじゃもう直ぐ授業始まるし、行きましょアキト」
彼女は軽いステップで立ち上がり、歩き出し、少し早足で駆け出す。
アキトは、なんだかんだで、人とレベル上げしたのは久しぶりで楽しかったんだなぁと自分で改めて実感する。
……アキトは午前の授業の後、昼ごはんを終え午後の特訓の為に良さそうな場所を探している。
ルナはあの場所を使い続けるという事なので、同じ場所にいたら結局意味ないのでアキトが出て来た。この授業という名の訓練が始まって以来、皆各々、午後の場所が固定化されていてなかなか見つからない状態に陥っていた。
アキトは一時間、校内あちこちを散策している。
ルナに少し頼み込んであの場所の一部を貸してもらえば良かったなと今更後悔し始めているぐらいだった。
シロネにアキトは頼んでみたが、他の連中を鍛えているからまた後にしてくれと言われ、今は一人だった。
そして、結局学園内を行ったり来たりはしたが、良い場所は見つからなかったので、学園の庭園にあるベンチに一人座っていた。
「久しぶりだねアキト」
「びっくりさせるなよな……」
アキトは後ろから突然声をかけられつい反射的に振り向くとそこにはハヤトがいた。
そういえば、最初にこの授業のフィールドを作ったんではないかと疑ってしまったことが脳裏によぎってしまう。
「どうしたんだ?」
「たまたまここを通りかかったらアキトの姿を見かけたからね。どうしたのかなと思って」
「いやぁ……特訓したいんだけど場所がなかなか見つからなくてね」
すると、ハヤトは瞳孔を少し大きくし、驚く。
「てっきり、黒聖の人たちと一緒にやってると思ってたよ」
「うるせいやい」
「まあそういう僕も白聖だと物足りなさすぎて困ってたんだよ。この荷重は面白いけど慣れちゃえばどうってことないからね」
「一緒にやるか残りの期間」
「そうだね。やろうか」
ハヤトはレベル八十なのでレベル上げというよりは努力レベル……つまり戦闘経験を積むという目的もある。
「こちらとしてもレベル八十が相手してくるのはありがたい」
「アキトに言われるとなんだか嬉しいね。あ、それと、僕はレベル八十ではあるけれど無課金だからそこはあしからず」
「ああ、それは分かってる。二人なら少し俺のボックス内のアイテムを開放するか」
「え!まだ使ってなかったの?」
「まあ、多少は使ってたがまだ全然だ。それに俺は貧乏性なとこがあるからな、なんか勿体無く思っちゃうんだよ」
「分かるなあ〜けど、使わないと損するよ、僕もそうだったから」
アキトはハヤトのその助言を信じることにする。
ボックスを開きアイテムを名前順に並べ替えソートし、お目当のアイテムを取り出す。
「へぇ〜」
アキトが取り出したアイテムを見てハヤトは少し目を細める。
「夜まで残り四時間程度か」
「うん、そうだね」
取り出した、神社の鳥居の形をした首飾りをアキトは身につける。
すると、二人が立っている場所から直ぐ隣の空間が歪み始めその空間の先に道が出来る。
「久しぶりに使うなこれ」
「’裂け目’だっけそれ……」
このアイテムは街中などで使えるアイテムで、主に一定の大きさの空間を作り出し、その中へ入ることが出来るアイテムだ。
OOPARTSオンラインの時は、他の人に話を聞かれたくない時や、今の二人のようにレベル上げを魔物を狩ること以外でやりたい人、反省部屋としても使っている人もいた。
ただ、そんな使用頻度が高い物ではなかったのでガチャでは外れの部類だったし、ガチャ以外で入手出来るレアリティの物でも十分なくらいの能力があったので、後半は低レアリティのもので済ませていたせいで、かなり余っている物の一つでもある。
今回は少し広めの範囲設定、定員を二人にし、場所は神社になっている。
この場所もアイテムごとに異なり、様々ある。
「さて、行くか」
「楽しみだね」
気楽にアキト達はそのゲートに足を踏み入れる。
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