93話 二人で
アキトはアイテムボックスの中から特性トマトジュースとOOPARTSオンラインで再現されたハンバーガーをルナに渡す。
このハンバーガーもゲーム内の魔物を狩って料理系の固有属性を持っている人が作ったものだ。相当量残っているので個数的にどれだけ食べようとも全く痛くも痒くもない。
最後の方はダンジョンなどよりも皆こういう凝った趣味みたいなことをやっていたので記念にアキトは色々買い込んでいたのだ。
このハンバーガーはアキトも驚いたほどの出来栄えだ。
まさに現実で食べるハンバーガーと全く遜色なくむしろこっちの方が美味しいんじゃないかと思うレベルだ。パティから中の肉、野菜、ソースなどの素材から調味料までこだわりの一品だってよく聞かされていた。
このハンバーガーを作った人は、元飲食店店長でOOPARTSオンラインにのめり込みすぎて店をゲーム内に移転した人だ。
「……」
さっきから何も言わずずっと無言でルナはアキトがあげたハンガーガーを食べている。
ルナは何故か涙目になりながら頬張る。
「美味しいか?……」
「もいしい」
ルナはハンバーガーを口に含みながら答える。
アキトは、作ってくれた店長に感謝と改めて凄い人である事を知り、当事者じゃなくとも誇らしかった。
するといつの間にか食べ終わっていたルナがアキトの方へ手を差し出してくる。
「どうした?」
「もう一個いい?」
「おういいぞー」
アキトはアイテムボックスから取り出すとルナは奪うようにとる。
OOPARTSオンラインの恐ろしいところは一度レシピに入ってしまえばどれだけでも簡単に量産出来てしまう。なので一つ作ったらまた一つとレシピは無限に増えていく。
結局アキトとルナは三十分くらいくつろいでいた。
あの後ももう二つほどルナはハンバーガーを食べよほど気に入ったのか最後の一個は惜しみながらちびちび食べていた。
「そういえばこんなにくつろいでいて何だが先生達は見回りには来てないのか?」
「ええ。ここまでは入ってこないわよ。上の魔導書館は覗くかもしれないけど……」
ここはいわば秘密基地みたいなもので、学園の監視外にある場所なのだ。
OOPARTSオンラインでもよくけんとこうやってくつろぎながらご飯を食べていたのでアキトはとても懐かしかった。
「そんじゃ続きやりますかね」
「そうね、何だかさっきまでの疲れが嘘みたいに無くなってるし料理の力って偉大ね」
アキトが渡したハンバーガーには付与効果もあり、食べると疲労回復する。ルナは不思議そうに自分の体を触り感触を試していた。
アキト達はさっきまで戦闘していた位置に戻り、これからの特訓内容を説明する。
「えっとねぇじゃあまずはさっきのルナが使ってたゴーレムみたいに俺も魔物を出すアイテムを持ってるから、それと戦って実践経験を積もう」
アキトは以前使っていた「ランダム魔物の卵」をアイテムボックスの中から選別する。アキトが前使ってたのがレア度Bの魔物だった。
だが、今回はルナが相手をするのでアキトは様子見でC、D辺りを使う。
アイテムボックス内の魔物卵をレア度CとDの卵だけにしてその中からランダムで一個取り出す。
アキトも後でやるのでついでにレア度Aの卵を取りアイテムボックスを閉じる。
「へぇーそんなアイテム持ってるのね」
「ああ、原理はさっきのゴーレムと殆ど一緒なんだが一つだけ違うのが合言葉が無いんだ。だから絶対に倒さなければならない」
「なるほどね分かったわ。それにしてもどんな魔物かしら?」
「それは知らん……」
「は?」
「えっと結構古いアイテムだから俺も中身は分からないんだ」
「……そういうこと」
アキトは適当に理由を付けて誤魔化す。
「経験値の十倍の書」も一緒に併用する。
「経験値の十倍の書」は、この世界のレベル概念が無い人にどう作用するのか分からなかったが、このアイテムは範囲内にいれば皆効果を共有出来るのでお試しでアキトは使った。
「で、こっちの卵でいいのね」
そう言って置いておいた卵をルナは拾い上げ所定の位置に置く。
そして戦闘準備を済ませたアキト達は卵から距離を取ってまずルナが最初に卵を遠くへ放り投げる。
地面に当たった卵はカタカタと小刻みに揺れ始めヒビが入り割れる。
卵からは瘴気のような煙が湧き出て、明らかに異様な空気を醸し出していた。
「「え?」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。