92話 ご飯
「火属性と光属性のコラボか……」
OOPARTSオンラインにも二つ三つ五つと組み合わせる事は可能だが結局のところ固有属性を使った方がコスパもいいし威力も高いのでいつの間にか使う人は殆ど居なくなっていた。
だが、別に悪いところだけではない確かに魔法、スキル何方にせよ二回分の消費にはなるが属性が多ければ多いほど対応が難しくなる。
アキトは属性は闇しか無いので二つを組み合わせることはできないが、属性一つを極めてる分威力は桁違いだ。
それにルナが放った斬撃を避ければ確実にここが崩落するのでぶつけて相殺しないといけない。なので、避けるという選択肢はない。さらに相殺するとなると威力が強いだけじゃ問題を解決できない。といった具合に放つと言っても選択肢は狭まってしまう。
「場所が悪いなぁ……はぁ……」
今更に出る後悔につい心の中でため息をついてしまう。後の悔い先に立たずとはよく言ったものだとアキトはゆっくりと腰を下ろす。
アキトは少し湿ってひんやりする地面に両手を付ける。
「それじゃあこっちもいくかな……闇属性スキル<暗夜海洋/ダークオーシャン>」
迫り来る斬撃がアキトとの距離が五メートルを切った瞬間、手を付いた場所の少し前方の地面がまるで胎動するかのように動き、横一直線に紫色のベールが出現する。
そこから光り輝くベールから出ているとは思えないほどのどす黒い液体が地面から吹き出し、壁を作る。その大きさは天井に届くか届かないくらいの高さがあり、横いっぱいの広さだ。上下には黒い液体が波打つがその音が通常海で聞くような波の音ではなく、人が呻いているような不快感を煽る音が響き渡る。
地下ということもあり不快感はいつもの二倍ある。
防御系スキルで便利だがこの音が聞きたく無いのであまり日の目を浴びることはOOPARTSオンラインの時はなかった。
そして発動した巨大な黒い液壁に斬撃がぶつかる。衝突した瞬間、衝撃が上下に分散され、軌道が放射状になりしっかりと液壁が衝撃を吸収している。そのままゆっくりと斬撃を飲み込むように黒い液体が波を発生させ覆っていく。
斬撃を吸収しきり終え、役割を終えたスキルは勝手に消滅する。
消滅した瞬間真っ黒な液体が弾け飛ぶ中桜の花びらのような薄ピンク色で花びらの先が割れている。それが大量に空中に舞っておりくるくるとゆっくり回転しながら様々な軌道を描き幻想的だ。
だが、この花びらは一体……
アキトは不審がりながら手を翳し花びらを一枚掴み取る。
その刹那ーー
「な!……」
アキトは手に痛みを感じ手を開く。
すると、まるで誰かに刀で斬られたかのような傷が手のひらを両断するように刻まれていた。
手の平から手首をつたい肘あたりまで血液が流れ落ちる。
「これは……」
振り落ちる全ての花びらが刃、さっきアキトが掴み取った花びらは血で梅の花びらのように赤く染まっていた。
ルナの持つ両刀はさっきまであった火属性と光属性が混ざり合って刀全体を桃色のオーラが包み込み周りには花びらがまるで意志を持つかのように吹き荒れていた。
もう一度闇属性スキル<暗夜海洋/ダークオーシャン>を放ち今度はアキトの上空の局所に約直径三メートルの円状の壁を出現させ傘の役割を持たせる。上からだけでなく横からも入ってきたりするがそういったイレギュラーの花びらも液壁が反応し防いでくれる。
「まさかそれがルナの固有属性とはね」
「まあね!でもまだこの状態は一分も持たないんだ……」
力を使いすぎたのか固有属性の状態を解いてしまう。
ルナは武器を二つに戻しアイテムボックスに仕舞う。アキトもさっき怪我した傷に薬草を適当に貼り付けその上から布を巻く。
この程度であればポーションを使わずとも自然治癒の範囲内なのでアキトは自力で治す。
「で、どうだった私の実力」
「いや申し分ない。これなら魔導修練際までにはかなり強くなってる」
「そんなこと出来るの?」
「ああ出来るぞ、最悪でも今の実力との差をしっかり感じれるまでにはさせてあげれる」
「そう、それは心強いわね」
「あれ?セナはどこにいったんだ?」
さっきまで寝て居たセナの様子を見ようと思ったんだが姿が見当たらない。
「あの子ならこの時間帯いっつもどっか行ってるのよ。魔導書館にも居ないの」
「どこ行ってるんだ?」
「さあ?あんまり気にしたことなかったわ……」
するとルナのお腹から虫の鳴る音がする。不意のことだったので気にはしてないし人間らしくていいじゃないかと思っていたんだがルナはそうではないらしい。
顔を真っ赤にしてお腹を手で抑えている。
「お腹空いてるのか?」
「昼食べてなくて……」
「おっしゃ俺がいいもん食べさせてあげようじゃないか」
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