90話 カチグミ
「ちょっと!何してくれるのよ!」
その少女は剣先をアキトに向け威嚇する。目つきが鋭いがあの本当に以前出会った少女なんだろうかとアキトには疑問しかなかった。制服を来ていて、見た目もまんま以前会った少女なのでアキトは怒られるてるよりも先にそっちが気になって仕方ない。
「ねぇ!聞いてる?」
「あ、すまない」
いつの間にかその少女は刀剣をアイテムボックスにしまい両手を腰に当て下から覗いてくる。
「たく、私が倒そうとしていたゴーレムを横取りだなんて信じられない!」
「いやー申し訳ない、魔物を見るとつい攻撃する癖が」
アキトは頭の後ろに手を当ていかにもな嘘をつく。
目の前の少女はアキトをジロジロ観察しついでに睨みつけてくる。
「ま、いいわここで会ったのも何かの縁ってことであなた!私に付き合いなさい!」
「え?」
「違うわよ!」
つい勘違いをして聞き返してしまう。それが癇に障ったのか頬を赤らめながら膝を思いっきり蹴ろうとしてくる。
アキトは咄嗟に反応し一歩ひいて回避する。
「避けないでよね」
「いや、当たったら痛いしなぁ……」
「そう、隙ありね……」
「ぐふぅっ!!」
一瞬のアキトの隙をついて少女は接近する。
そのまま少女の拳がアキトの鳩尾にめり込み腹筋を抉ってくる。若干拳をめり込ませた後にほんの少し上下させ、さらにこの細身の体からは考えられないほどの力が入っていて痛みが予想外だった。
アキトは大の字に地面に背中を付け倒れる。岩肌の天井が慰めてくれるようなそんな感覚に襲われアキトは天井に心の中で礼を告げる。
「ちょっと何寝てるのよ!!」
「す……すまない」
アキトは手をついてゆっくり起き上がりお腹をさする。
「ま、いいわ。で、さっきの続きなんだけど私の特訓に付き合いなさい」
「さっきのゴーレムじゃダメなのか?」
「ええそうよ。ゴーレムだと動きが単調で鈍いの体力がなくなったら確かに辛い相手に鳴るけどそれまでの過程がどうしてもお粗末になるの」
怒ってばかりかとアキトは思っていたがしっかり考えて特訓しており少し好感を持てた。
「少し話が湾曲するが、君は以前魔導書館で俺と何度か会っていないか?」
すると少女はキョトンとした顔になる。
「あなたと会ったのは今日で初めて……あ!そういうことねちょっとここで待ってなさい」
少女はさっき俺が下りてきた階段を上がって行ってしまう。
数分もしないうちに今度はその少女の他に殆んど顔に誤差がないもう一人の子を連れてくる。
「お待たせ。多分あなたと会っていたのはこの子じゃない?」
少女が抱えて持ってきたその子は眠たそうに寝ぼけ眼を擦っている。
「確かに……この子だ」
そうアキトが会っていたのはこの子だった。
見た瞬間しっくりする感覚が降りてくる。この眠たそうなジト目で髪のボサボサ加減がまさにって感じだった。
するとまたその子はさっきまで少し開けていた目を閉じ眠ってしまった。寝てしまったのを見て少女はちょっとしたスペースにその子をそっと置いて話を続ける。
「私とこの子は双子の姉妹なの私が姉でこの子が妹」
「なるほどなどうりで似てるわけだ」
「そうでしょ次会った時見分けつかないんじゃない?」
「そ、そうかもしれんな……」
アキトは強く言い寄られしぶしぶ口に出す。
「あ、そうだ自己紹介がまだだったわね私はルナ・アリアでこっちがセナ・アリアって言うのよろしくね」
「俺はアキトっていうクラスは黒聖で一年だよろしく」
「黒聖なのは知ってるわよ同じクラスじゃない」
「え……」
アキトはその情報に対し必死に脳内を駆け巡るがこの二人の事が一切出てこない。
「はぁ〜別に無理しなくていいわよ私もあなたの名前までは把握してなかったしね」
「え?じゃあなんで平民の俺なんかに?」
「あのね!私を見くびらないでもらえるかしら確かにこれまでは平民を下に見ていたところはあるけどね前のバルトくんとトレインくんの戦いを見て目を覚ましたわ」
意外に理解があるルナの話を聞いたアキトは気分がよかった。
「よっしゃ!じゃあ俺が二人の特訓を付き合ってやる」
すると、姉のルナの方が目を少し伏せ寝ているセナを見る。
「あの子はいいわ……」
「なぜだ?」
「あの子は……私なんかよりも才能が凄いの今回の魔導学園の入学だってすんごいお父さんとお母さんから期待されてたし何よりあの子が特訓した姿見たことないもの……」
そのあとに小さくルナが「それなのにあの子に勝ったこと一度もない」と呟いたのをアキトはしっかりと聞き取った。
それを聞き俄然アキトは何故だかやる気がでる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。