58話 最後の朝餐
入学式当日、いつものルーティンを終わらせ汗を洗い流した後アキトは鏡の前で新品の制服に袖を通す。
ベルトが付いていなかったのでアイテムボックスにあった装飾品アイテム「高質なベルト」というアイテムを取り出し、ズボンのループにベルトを入れちょうど良い具合まで締める。
そして、最後にそっとベルトの金具を閉じて準備完了する。
この時、制服とベルトにより若干ステータスが上がる。
見た目が若くなったかもしれないとアキトは鏡の前に立つ。目の下の隈は相変わらず、ぼさっとした髪の毛。制服を着ているにも関わらず全くと言って若く見えなかった。
アキトはこの部屋に心の中で感謝を告げ最後のホルドの朝ごはんを食べに行く。
「おはようございます。ホルドさん」
「あら、おはようアキトちゃん」
アキトは軽く挨拶を交わし、いつも使っている机を拭く。基本アキトは朝早く起きるのでこうやって軽い手伝いをしている。
「今日で最後ねー」
「はい、ありがとうございました」
「こちらこそ楽しかったわ!それにシロネちゃんのことよろしくね」
「はい……任せてください」
「それとね……この機会に良いと思ってねシロネちゃんには大方過去の事は話したわ」
それを聞いて、アキトは少し驚く。
「シロネはなんて?」
「大丈夫だって。それにみんなには心配かけたくないそうよ」
「まあ、そうなりますよね」
そう言ってホルドはテーブルに朝ごはんを並べる。
「おはよう。いつも早い……アキトは……」
まだ寝たりないのか大きなあくびを手で抑え静止しながら降りてくるユイ。ユイもすでに制服に身を包んでおり、制服のスカートが普段のユイと違う雰囲気を醸し出しておりとても良く似合っていた。
「おはようユイ。早起きが特技みたいなとこあるからな」
「まだみんな起きてないんだ」
「もうすぐ起きてくると思うぞ」
ユイはアキトの後ろを通り反対の向かいの席に着席する。すると、ユイが来てからは数分置きに一階に集まりだし、二十分もしない内に全員集まった。
今日は珍しくバルトもちゃんと起きている。まぁ絶対ナナミちゃんに起こしてもらったに違いないだろうが……
最後は全員で朝ごはんを食べようとエルが提案したのだ。
この宿屋に来て最初はみんな集まって食べてたが、最近はそれぞれやる事があってなかなか揃う機会がなかったのでアキトもエルの提案に賛同する。
「みんなありがとね協力してくれて」
「構わんさ」「最後くらいみんなで食べたいですよね」
「じゃあ、食べようか」
会話し、いつもよりゆっくりと食べながら、この時間を楽しむ。
だが、それも直ぐに終わってしまう。
食べ終わった後は各々やることを済ませて、そのまま宿屋の扉の前で集まる。
「ほんと……寂しくなるわねー」
ホルドは宿屋の出入り口で準備しているアキト達のところまで見送りしてくれる。
「卒業したら、絶対にまた来ます」
エーフが泣きそうな顔で、ホルドに抱きつく。
「ホルドのご飯が食べれんのは痛手じゃの〜」
「今度一度手合わせ願いたい」「本当に助かったぜ」
そう言ってトルスとバルトは同時にホルドと握手する。バルトが左手で、トルスは右手……がっしりと組み交わしている。
「お世話になりました……」
「本当にありがとうございました」
エルが懇切丁寧にお辞儀をし、お礼を述べる。
「宿代……しっかり稼げるよう精進します!!」
これは一番忘れてはいけない事項だと思い最後アキトは言い放つ。
「そうね。みんなの活躍楽しみにしてる。宿代も期待してるわよー誰が1番に払ってくれるかしら……それと……このパイオニアをありがとう、お互い頑張りましょうね!さ、もう時間でしょほら行きなさいな」
照れ隠しをするようにアキト達の背中を押し、外へと押し出してくる。 そして、そのままされるがまま外に出る。
「本当にありがとうございました」
アキトは出る際にお礼を言う。そして、ホルドはアキト達の姿が見えなくなるまでずっと見守ってくれていた。
途中、ナナミとも別れバルトがわんわん泣いてたが無理やりユイが引き剥がしズルズル引きずっている。こっちはこっちで本当困ったものだった。
そして、ついにアキト、シロネ、バルト、ユイ、エーフ、エル、トルスの七人は学園の門をくぐる。
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