24話 3人の属性
森の中を走り始めてアキト達はまず走りながら食料になりそうな物と水を探していた。水や食料は一番大事になってくるから序盤のうちに徐々に進みながら調達したかった。
バルトはもう復活し先頭を突っ走っている。
体力大丈夫かと心配になるくらいとばしているのでアキトの提案で少し休むことにした。
「だいぶ距離稼げたんじゃないか?アキト」
「いや、まだ全然だ。そんなに焦らなくても制限時間内につけばいいんだもう少し気楽にいけよ……」
三人は少し立ち止まり、辺りに生えている果物や水辺を探していた。
「アキト来る」
ユイはそう言うと矢を引き臨戦態勢に入る。
アキトとバルトも静かに頷き、聞き耳を立てる。
すると茂みから三体の人型のゴブリンが現れる。ゴブリンは全員棍棒を持っており、かなりグロテスクな顔をしていた。
意外と転生してきて始めてゴブリンと対峙する。
これまでスケルトンとハマグリばっかだったからちょうどいい気分転換だった。
三対三か……ちょうどいいバルトとユイの戦力を見るいい機会だ。
アキトは二人がどう言う風に動くのか、今後の為に見ておきたかった。
「ちぇえええやああああああああ」
その声と同時にバルトが勢いよく飛び出しゴブリン達へいきなり斬りかかる。
血気盛んなやつだなぁと思いながらアキトはバルトの性格を把握する。
(あいつあほじゃな)
シロネは、真剣な眼差しでバッサリと言うのでアキトは触れないであげた。
そして、アキトが考えている内に、バルトが切りかかった矢先ユイが三本の矢に切り替え同時に矢を放つ。
二本はゴブリンの脳天を貫通し絶命する。
そして一本の矢はバルトの頭をかすめ矢の軌道が少しずれゴブリンの左目に突き刺さる。
ゴブリンは悶えながら突き刺さった矢を抜こうともがく。その隙にバルトが持っていた片手剣で首を切り落とす。
「ってあっぶねぇだろうがユイ!!ちゃんと狙え下手くそー」
バルトがさっき掠めた矢についてユイにクレームつけている。
アキトから見てもかなりギリギリだったので、妥当な怒りだった。
「チッそのまま死ねばよかったのに」
ユイもユイで悪いという気持ちはこれっぽっちもなく、顔を逸らす。
チームワークはともかく二人ともいい動きをしていたので、これなら試験も簡単に突破できるだろうとアキトは考えていた。
「おーい喧嘩はそれくらいにして野営の準備始めるぞ〜」
もう十六時ごろになる、そろそろ始めないと暗くなってからでは危険になる。
三人で分担を決め、何かあったらすぐに魔法かスキルを空に打ち上げるこで危険を知らせるという方針をとった。
アキトの担当は薪拾いである。バルトとユイは二人でご飯の準備と火の管理だ。
(わしにも何かくれんかのー)
アキトはアイテムボックスからシロネ用のご飯を取り出し影に投げ入れる。
(てか、シロネは宿屋で一旦ごはん食べてこればいいじゃないか……)
(小さいことは気にするもんじゃないぞアキトよ)
シロネと会話しながら薪を拾い集める。
幸い何ともなくご飯にありつけ今は夜ご飯の最中だ。今日の献立はこの森に生えていたきの実とキルコ(見た目はまんまきのこ)のスープと、デザートにさっき取れたコリュというりんごに似た果物だ、コリュは食感はりんごより柔らかく、甘さもあってかなりジューシーになっている。
この森にはこれらが結構生えているのでこの献立が今後のご飯になりそうだった。
ご飯を食べ終わりアキト達はそれぞれ使える属性についてや連携をどうとるかというところに重点を置いて話し合っていた。
まず、ユイが説明する。
「私は自然属性を使います。基本的にはこの弓矢と魔法、スキルを組み合わせて主に後衛サポートになると思う。あと回復魔法もある程度は使える……」
自然魔法か……なかなかこれは珍しい。全ての魔法、スキルの元となる自然属性はその名の通り自然を操る能力だ。
OOPARTSオンラインの時もこれに気づいてその先の火や水といった属性に行かず、ずっと自然属性を極めてたやつもいた程だ。アキトの中では上位に位置すると言っても過言ではない評価だった。
そして自然属性に弓矢はとても相性がいい。自然魔法で矢はMPが尽きるまで何本でも生み出せるし、スキルで矢をいろいろカスタマイズできたりする。
遠距離攻撃、後方支援など後衛にはもってこいだ。
ユイはこれで終わりと目で訴えてくる。
次はバルトの番になる。
「俺の属性は火だ!!」
バルトは手のひらの上で火を灯してみせる。
火属性はありきたりだったのでアキトとしては興味はユイよりは薄かった。だが、これからの成長次第ではどう化けるか分からないと言う面白さはある属性だ。
補足するならどの属性も極めれば強い、ただ火属性はOOPARTSオンラインではかなり上級者向けだった。初心者がやると大概火属性をただ極めるだけで終わってしまう。それでは火属性の50%も引き出せていない。火属性はさらなるその上の段階がある、そこに辿りついたならば属性の能力値だけみたら確実にトップクラスだ。
「そんでもって俺は武器はなんでも使えるんだ!」
火属性の魔法に火の武器を生成する能力があり、それを活かせばどこで戦っているか、相手の武器、相手との力量の差などで使う武器を変更できる。
バルトがそれを使えるかは分からないがアドバンテージは取れるメリットとしてアキトは火属性より興味深かった。
アキトは真剣に考え、ユイは基本無視なので気まずそうにバルトがどんどんしょぼくれていく。
「あんまり……興味ない?」
「いや……ちゃんと聞いてるから心配するな」
「興味ない……」
ユイは基本バルトには辛辣で、もうちょっと仲良くというのを心がけて貰えるとアキトとしても嬉しいが中々上手くはいかなかった。
「ふんっ!ならこれならどうだ!!俺は確かにいろんな武器を扱えるが結局一番使うのがこの拳なのだ!!」
バルトは手のひらを握り締め天に右手を掲げる。
ユイは相変わらず無反応で、アキトも「ああ」と苦笑いを返しておいた。
「お前らノリわるいぜぇー」
バルトは分かりやすく項垂れる。
「次は、俺の能力だな」
そう言うと頭を下げていたバルトとユイの二人がアキトの方を凝視する。
「「アキトの能力は気になる」」
何故か期待度が高いアキトの能力説明だったが、ここまでとは思っていなかったのでアキトは言い出しづらかった。
「俺は闇属性を使う、使う武器は拳系統の武器になる。一応前中後衛こなせるけど、基本は前衛だな」
アキトはOOPARTSオンラインをしていた時、最強の前衛と最強の後衛二人に囲まれてたから楽だった。
一人になってからは全てをこなさないといけなかったのでそのノウハウを叩き込んだのもアキトにとってはもう懐かしい記憶だった。
「てっきり俺は水属性かなんかだと思ってたぜ」
「私は雷」
二人共率直な意見を言う。
「どんな能力を使うかはお互い実戦にとっておくということで」
「そうだなそうしようぜ」
「アキトに同意」
アキト達はテントの準備をし、後はその辺で軽く三人同時に睡眠をとるかもしくはローテーションで寝て、順番を回すかだ。
アキト達は後者を取り、テントを一つだけはり、その半径二十五mを設置型の魔法やスキルで囲い誰かが踏み入れた瞬間知らせが来る仕組みとなっている。
見張りを一人配置し、後の二人は寝る。
これを三十分交互に行う。
ちなみにもうシロネは寝ている、時々聞こえる寝息がこちらの眠気を誘う。
今はアキトの番である。
一人で夜を過ごすのはなかなかに退屈で三十分は異様に長く感じた。
本来はテントを持っている人はほぼいないだろう、なのでアイテムボックスからテントを出した時、アキトは二人に随分と驚かれた。
アキトはレベル上げでよく使っていたのでそれがたまたままだ入っていたのだ……
アキトは寝ないように時々太ももあたりをつねり眠気を覚ましながら耐えていると、設置した魔法やスキルの範囲に入る前誰か来た事に気づく。
これは別にアキトの勘が冴えている訳ではなく、何も警戒せずにズカズカと向かって来ているので音や気配が無防備に伝わってくるからだ。
はぁ……とアキトはため息をつき二人を起こしにテントに近づくとその気配に気づいたのか二人共目を覚ましていた。
アキト達は静かに手筈通りに所定の位置に移動する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。