第10話 ボス戦2

俺がそう言うと、オーラスが一旦腕を組んで顔を下に向き、考え事をしていたが、急に顔を上げ笑い出した。


「あっはっは。海也らしいよ。だよな、そう来なくっちゃな」


オーラスはそう言って俺の肩を笑顔で二回ポンポンと叩いた。


「でも流石にレベル差52のボスに勝てるわけはないと思うぜ。でも挑戦してみる価値はあるな。

あのスライムを倒したお前なら」


よかった。オーラスもボス戦に賛成してくれて。

もしさっきのように頭がおかしくなっていたらこの話は無限ループしてしまうところだった。


とりあえず俺はボスのことについてオーラスに聞いてみた。

すると、ボスは俺達よりも遥かに大きいらしい。そしてとにかく攻撃が強く、防御は硬いとのこと。

でも素早さは攻撃や防御のように速くはないらしいから少し安心した。

また、あの複合スライムのレベルは50レベルだったらしい。

つまりレベル差は20……


倒せるかな。


オーラスもここのボスのことを詳しく知ってるくせに戦ったことがないらしいからちょっと不安なんだよな。


でも複合スライムと戦った時に役立った引きこもりで培った能力を使えば案外楽勝なのかも知れないな。


俺達は先に進んでいると一つ違和感を俺は感じた。


俺達が入った時には誰もいなかったけど、今はオーラス以外の人の気配がする。

しかも結構近い。

でも後ろには誰もいない。

多分誰かが透明スキルを使っているのだろう。


そう思っていると、入り口の方からチワワくらいの犬が俺らの方に向かってきた。

全速力で。

しかし、感じ的には敵ではない。

とっても活発なただの犬だ。

「オーラス。こんなところに犬がいるんだけど。」

そう俺はオーラスに呼びかけると、オーラスはパッと振り返り、


「えっワンちゃん!?」


とオーラスが高い声で言った。

オーラスは犬がいるのを確認して、なんだか嬉しそうな顔をしながら、両手を構えて、

「ワンちゃーーーーん!!」

と叫んだオーラスは、犬の背の毛を手のひらで触ってとても気持ちよさそうにしていた。

まるで天国に逝ってしまったかのように。

「は〜さらさらだ〜」

オーラスはそう気持ちよく言う。


前に言っていたけど、どうやらオーラスは大の犬好きらしい。

こうやって犬を見つけると真っ先に毛を手のひらで触るのが普通と言っているくらいだ。


オーラスは背の毛だけじゃなくて頭、首と触っていくが、流石に犬も嫌だったのか、犬はオーラスの手のひらを がぢっと噛んだ。


その痛みはなかなかのものだったのか、オーラスはぎゃぁぁぁぁぁと洞窟の地面をころころと転がっている。


ざまぁみろ。


俺はオーラスに対して、大の犬嫌いだ。

昔、家で飼っていたのだが、臭さいし、そこら辺に小や糞を落とすし、なんだか犬というものがどんどん嫌いになっていったのだ。

そしてとどめは、とにかく戯れてくることだ。

その戯れてくれることで犬好きな人もいると思うけど、俺はその戯れが嫌いだ。

戯れてくると毛がいっぱいつくし、近距離だから臭いが一段と臭くなるし、触っているとたまに小や糞を手に落とすし、なんだかデメリットしか無いじゃないか。

これからはマジ本当に戯られるのはごめんだよ。


そう思っていると、いきなり犬が俺の近くに寄ってきた。

やめてくれ。

そして俺の足に鼻を向け、匂いを嗅いできた。

その様子を見たオーラスは

「いいな、海也は。こんなにワンちゃんに好かれて」

全然だよ。

「いやいや、お前が触ってる時も最初らへんは犬も結構嬉しそうだったぞ。尻尾振ってたし」

左向きにな。

「そ、そうか?」

「ああ、そうだ、と思う。でも触りすぎたから犬も怒って手を噛んだんだと思うよ」


犬。

地獄だ。

早く終わってくれよ。


数分後

犬が俺の足から離れた。

もう匂いを嗅ぎ終わったのだろう。

するとどこかから、

「ふっ、いい匂いだったぞ。あばよ」

と男らしい声が聞こえた。

いい匂い?

はっ!まさか。

俺は気づいた。

さっきの声、まさかあの犬!?

俺ははっと思ってオーラスの方に顔を向ける。

するとオーラスは犬が喋ったことに驚いたのか体が震えている。


「あの犬…喋れるのかよ」

あちゃー。まさか犬が喋るなんて思ってもいなかったよなー

「触られて嫌だったんならちゃんと口でそう言えよ!」


「そこ!?」



◆◆◆



「薬の勇者」、「人殺しの勇者」

彼はこの二つの選択肢の中から選ぶことになった。

すると彼はふっと笑った。

人殺し。ねー。

人殺死。

そう思った彼は目を大きく開いてギルド中に響き渡る笑い声を発した。

するとギルドにいた人達全員が彼の方に目を向けた。

しかしその目は睨みつけるような目ではなかった。

なんだか嬉しそうな目だった。

カレンもそうだった。

なんだか勧誘の目をしてニヤリと笑っていた。

笑った彼は注目を浴びた後、答えた。


「人殺しの勇者にします」


と。


ちなみにこの時アレンは仕事のため、外に出ていた。










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