第9話 ボス戦1
「んっ?今なんて?」
オーラスは俺がボスに挑むわけがないと思っていたのか、疲れた顔が一気に驚きの顔に変わり、聞き返してきた。
「だから、ボスに挑むんだよ。この洞窟の」
「えっ。」
俺がボスに挑むというと、オーラスは驚きの顔から悲しみの顔になり、
「おっ、おい、海也。さっきからお前よりも遥かに強いスライム凄い必殺技で倒すし、レッドウルフを二秒で倒すし、お前の頭はついに壊れてしまったのか。いや、俺の頭が壊れてるのか。あれは全部幻覚なのか。ああー、もう何が何だか分からないや」
そう言ってオーラスは髪を掻きむしって叫んでいる。
数秒してオーラスは一旦落ち着いてこんな変なことを言う。
「召喚者海也、お前のいた世界にはあったか知らんが、この世界には
『病院』の脳科というところで、お前みたいに頭がおかしくなった人を手術して治すことができるところがあるんだよ」
オーラスこそ頭がおかしくなっちまったんじゃねーのか。
さっきから俺の頭が壊れてるとか、おかしいとか、そんなわけねぇだろ。
しかし、この世界にも病院はあるのか。
俺は少しホッとした。
そしてオーラスに俺の頭は壊れていないということを伝えるべく、話しかける。
「オーラス、俺のっ……!」
「そうだよね、海也。自分の頭がおかしいとようやく分かったんだよね。じゃあボスとは戦わずに、今すぐここから出て、病院に向かおうか」
「いやっ、だか……」
「えっ?金はどうするんだって?
ああ、金は俺が全部払うよ。だから心配しなくていいんだよ。えっ?手術が怖いって?大丈夫。手術といっても機械がするんだし、数秒で終わるから、そんなに怖がらなくていいんだよ」
そう言って、オーラスは何か満足げに外の方に歩いて行く。
その時、俺はこう思った。
もう、俺が話す余地なんてなかった。
話しても多分効果がないだろう。
だから、
「よーし、俺は今からボス戦に行くかーー」
といって、俺は腕をぐるっと回して、首を左右に傾ける。
オーラスは歩くのをやめた。
そして俺は続ける。
「でも、俺まだ18レベだし、一人じゃちょっと怖いなー。誰かお強いお方がいたら少し安心するんだけどなー」
オーラスはまだ俺に背を向けたままだ。
そして俺は最後のとどめを刺す。
「うーん、誰もおらないのかぁ。じゃあ、仕方ないか。俺一人で行くしかないな」
と俺が言った瞬間、
「待った!!!」
そんな声が洞窟中に響く。
その声はもちろんオーラスの声だった。
かかったな。
「海也、ここにおるぜ」
そう、オーラスが言うと、さらに格好つけて、
「レベル52の、イケメンで頼りがいがある、とてもお強いお兄さん。
オーラス様がな!!!」
イタい。
そのオーラスの容姿は、光源よりも眩しくて、キメ顔を決めているところがとてもイタかった。
でもまあ、良かった。
あれだけ言ってもし、オーラスが食いついて来なかったら、本当に俺一人で行くことになっていたところだった。
て、いうかお兄さん!?
オーラスってどう見ても高校生にしか見えないけどな。
「おい、年っていくつ何だ?」
「28」
オーラスは即答だった。
「28でその顔!?若っ!?」
俺はマジで驚いた。
夜影よりも若く見えたのに、28!?
オーラスって顔年齢何歳なんだろ。
俺の「若っ!?」という言葉にオーラスは、
「や、やめてよ。も、もう、こんな事言われたら、照れちゃいますわ」
と、オーラスは頰を赤くして、もじもじしながら、女口調で言う。
この時のオーラスが今までで一番キモかった。
まっ、そんなことは置いといて、
「とりあえず、ボスと戦うために、奥に進むか」
その時、オーラスが、
「待った!?」
と言って俺を止める。
何か言いたいことがあるそうだ。
「お前、ボスがどれくらい強いか分かってるのか?」
俺は即答で、
「50レベくらいだろ」
と言う。
しかし、オーラスは目を大きく開き、
「と、とんでもない。70レベだよ」
なっ、70レベ……
倒せそうって問題じゃないな。
レベル差が52とか。
もうオーラスのレベルと一緒じゃねえか。
でも俺はあの時と同じ台詞を言う。
「この洞窟のボスに挑もう!」
◆◆◆
ギルドにて
「はい」
と答えたその人は、召喚者だった。
「じゃあ、この召喚者は私が担当しますわ」
と、言ったのはカレンと言う人だった。
その後召喚者は、簡単な手続きを終え、いよいよ職業選択のところに来た。
その職業の欄には、「薬の勇者」と、もう一つあった。
「人殺しの勇者」
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