第7話 予想外

「えっ」


俺は思わず驚いてしまった。

一緒に冒険?

ということはオーラスと一緒にパーティを組むということだな。

ぼっち歴二十四年の俺が?

いや、十五年?

でも、ついにぼっちは卒業になるのか?

俺もそれはそれで嬉しいのだが、いきなりそんなこと言われると、なんだか

不安。

俺はしっかりとオーラスと一緒に冒険できるのだろうか。

でも確かに仲間を増やした方が楽に冒険が出来るだろう。


「ああ、いいぜ。これからよろしくな」


そう言って俺とオーラスは握手を交わした。


そういうことで、俺はオーラスと一緒に冒険することになった。




その後俺は、オーラスと一緒に装備の素材集めとしてギルドから少し遠いナナという町の洞窟にやってきた。

どうやら素材を集めてギルドに持っていくと、武器や防具のクラスアップができるらしい。

「えっと、攻撃のマントの素材の一つはここで手に入るんだな」


「ああ、赤のカケラ五個、レッドウルフを倒すと出てくるらしいぜ」


「レッドウルフはどれくらい強いんだ?」


「レベル15くらいかな」


レベル15。

俺のレベルは今11レベル。

届いてねえじゃねえかよ。

少し不安になってきたな。


「なあ、オーラス。この洞窟って何レベくらいがいいんだ?」


「んー、20レベくらい?」


「俺まだ11レベなんだけど!」


「えーーー!!!!!」


オーラスはこの洞窟全体に染み渡るくらい大きな声で叫び、驚いた。

そんなに驚かなくても。

そんなに驚かれたら俺がとても弱いように思うじゃねえか。

俺は少し怒り気味でオーラスに問いかけた。


「お、おい、じゃ、じゃあお前は何レベなんだよ」


「えっ?52レベだけど。」


ご、52レベ!?

俺とオーラスってどんだけレベルの差激しいんだよ。

すると向こうから敵が襲いかかってきた。

スライムだ。

しかも20体ほど。


「ほ、ほら、お前が大声出したせいで

いっぱい敵が寄ってきたじゃねえかよ。なんとかしろよ」


俺はオーラスの後ろに行ってスライム達に怯えた。


「おい、なんだよこれくらいの敵も倒せないのか?」


そう言ってオーラスは俺を持ち上げて前に出す。


「えっ、ちょ、おまっ」

「お前がやるんだ」


オーラスはそう言って俺の背中をドンっと押す。


「お前ならできる」


俺はオーラスにそう励まされると、眼を敵に向け、攻撃の準備をする。


やってみよう。


そう思い、俺はフィンガーナイフでスライムをどんどんキルしていく。

スライムは俺のナイフの一撃で倒れていく。

4,3,2,後一体。

そう思った時、なんとキルしたスライムが水色の粒子に変わり、残った一体の中に入っていく。

そして全部の粒子がスライムの中に入ると、スライムが光を放ち、先程のスライムとは違い、数十倍に大きくなったスライムが目の前にあった。


「こ、こんなの、聞いてないぜ」


「ああ、これは予想外だったな。海也、お前は俺の後ろに下がれ、こいつは危険だ。早く!」


オーラスは俺に避難を知らせた。

でも、

「オーラス、お前はさっき俺にできると言っていただろ。いいさ、これは俺が仕留める」


「いや、駄目だ。こいつは30レベくらいのやつだぞ。お前の弱さでは倒せない」


「いいから任せとけ!」


俺はそう言ってビッグスライムの方に行く。


オーラス。俺を舐めんじゃねえよ。

俺は引きこもり歴十五年の海也だぞ。

こんな雑魚スライムに負けるわけがないだろ。


俺はそう思い、スライムをナイフで斬りかかる。

しかし、スライムが厚すぎてなかなか斬ることが出来ない。


「くそっ」


俺が何回斬ってもスライムは倒れない。

するとスライムが大きな手に変形し、攻撃をしてきた。

しかし俺は軽々とスライムの攻撃を回避していく。

スライムの攻撃を回避するなんて、引きこもりにしては簡単すぎるわ。

だけど素早さが早くて良かったよ。


それから数分間、ずっと回避していた俺は、スライムの動きにも慣れて、スキを見つけてスライムに攻撃をしていった。


「す、凄い」


オーラスが俺の戦闘を見てふとそんなことを呟いた。

まだだぜ、オーラス。

俺の必殺技を見て俺が低レベルでもどれだけ強いか見せてやるぜ。

俺はそう思うとスライムに向かって必殺技を繰り出す。


「いけっ!必殺技、瞬斬刃光線モーメントキルビーム!!」


そう俺は叫ぶと、手を凄まじいスピードで動かし、スライムの体をナイフで斬っていき、その切り傷の中に銃を打ち込んでいき、その動作が毎秒60回のペースで攻撃していく。

そしてあっという間にスライムは倒れてしまった。

正直疲れた。


テッテレー♪


俺は3レベル上がった。

そして俺は新しい技を覚えた。


「煙幕?」


どうやら身を隠す時に使う技らしい。

なんだか忍者っぽいな。


俺が後ろを振り向くと、そこには口をまだ開けているオーラスの姿があった。


「いつまで口開けているんだよ、オーラス」


俺がそう声をかけると、オーラスは

ハッとなって口を閉じる。


「あれ、ここは……ハッ!確か海也がスライムに凄い技出していたんだっけ。いやーあれは凄かったな。いつその技出来上がったんだ?」


「今」


「えっ、今!?」


うん、今である。必殺技とかテキトウに決めちゃたけど、まあ倒れたしいいだろう。


「お前、倍以上の敵に勝つなんて聞いたことないぞ」


「へー」


そうなんだ。


「それに、お前とか言わずに、仲間なんだからオーラスって呼んでよ」


「ああ、じゃあ俺のことも海也って呼んでくれよ」


こうして、俺とオーラスは強い握手を交わした。


最初の握手よりも強い握手を。


握手をした後、俺たちは再び洞窟での冒険を再開した。









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