あれから一年か…早いものだ

 

「「「お疲れ様でしたー!」」」


 パンパンの店員さん達による、美少女グランプリの打ち上げが始まった。もう夜だから、年下の店員さんは眠そう。ライラはもう寝ている…白獅子は夜行性じゃないのか?

 因みにフリシアちゃんのお疲れ様会と歓迎会も兼ねている。


 今の私はメイド服スタイル…


「ありがとうございます! 優勝は出来ませんでしたが、去年よりとてもとても楽しかったです!」

「可愛いかったですよー!」「脱げ脱げー」「お疲れ様ですー!」



「ヘルちゃん、あれだけ民衆から反発があるんだから特別賞くらい貰えるんじゃない?」

「そうね。第一皇女派が天使を味方にした時点で、アレスティア王女は用済みだし。そこら辺は朝に姉さんと話すんでしょ?」


「そうだねー。それにしても、もうお姉様って呼ばないの?」

「呼ばないわ。私は皇族を抜けるし、聖女なのがバレたからね。対等に話させて貰うわ」


 第一皇女を回復させた時に神聖の魔眼を見られたからね。

 まぁ聖女だとバレても今更生活に支障は無いから気にする事も無いか。

 むしろ世界の脅威を伝えたヘンリエッテの方が聖女だと広まるだろうし。


「とりあえず美少女グランプリは終わったから、明日か明後日にエルメシアに行ってくるね」

「行ってらっしゃい。と言いたい所だけれど、エルメシア観光がしたいからアーたんと一緒に付いて行くわ」


「えー、私も一緒に観光したーい」

「私をエルドラドに連れて行かない罰よ。我慢しなさい」


「やだやだー私も観光したーい」

「じゃあエルドラドに連れて行ってくれる?」


 それはだめー。

 私の予想通りなら回復特化のヘルちゃんが真っ先に狙われるからね。

 遠くで観戦も駄目だよ。

 ロンドは転移能力もあるから。

 …ヘンリエッテがそわそわしながらやって来た。どしたの?


「ねぇアレスティア、景品ってどうなったの?」

「とりあえず今の装備品でスゲーネックレス以外は授与しよう」


「やったー!」

「後は…まぁ何か考えておくよ。ミズキさんは…聖剣レンタル権」


「えっ、貰えないの?」

「私を楽しませてくれたらあげますよ。はい、聖剣を貸してあげます。あっ、ミーレイちゃーん」


「ん? アスティちゃんどうしたの?」

「ランネイさんに会ったよー」


「あら、おば様に? 何か話した?」

「うんっ、ミーレイちゃんの会社の件、出資してくれるって」


「…それってつまり?」

「逃げられないよっ」


 あっ、ミーレイちゃんが泣きそうだ。魔導ブラ会議は見た事あるけれど、みんな真剣だから会議が難航するんだよね。取りまとめるミーレイちゃんはいつも泣きそうに…


「…アスティちゃん、助けてね」

「もちろん。私のコネをフルに使うからねっ」


「いや…それは怖いからいい…」

「怖くないよ。私がエルドラドから帰ってきたら商業許可証や組合証を取って、地区内会の入会に、連合会、保証組合に、女性部会、理事会と、後は…」


「ほんと、沢山部会に入らなければいけないのが面倒なのよねぇ…」

「うん、経営者が行く部会以外は代理で良いからねー」


「はぁ…学校に行く暇あるかな…」

「週一日なら行けるんじゃない?」


「そうよねぇ…じゃあ二組かな。レーナが居るから大丈夫か」

「あっ、私もたまに行くからねー」


「えっ…ほんとっ!?」


 もう第一皇女派は私の傘下だからね。素顔で学校に通えるし、騎士団の受付だって出来る。

 という事で、色々終わったら復帰する予定…多分。


 …おっ? 動いたか。


「ヘルちゃん、ちょっと行って来るね」

「行ってらっしゃい。フリシアが待っているから早く帰るのよ」


「はーい」


 地味メガネを装着。

 地味メイドに変身してパンパンを出た。


 ベアトリスクの暗部さんにはコーデリア宛ての手紙を渡してある。内容は待ち合わせ場所を書いてあるだけだ。

 暗部さんとコーデリアの魔力は覚えていた…今動き出して、帝都の外へと向かっている。


 先回りして待ち合わせ場所へ行こう。

 以前ミズキと対面した場所だ。


「この場所は…何処かで……待たせたわね。白雲」


 ……うん、風が気持ち良い。

 月が赤く光って柔らかい光が降り注いでいる。

 やぁやぁコーデリアさん。


「さて…呼び出しに応えて戴きありがとうございます。コーデリア姫」

「…白雲…あなたのせいで計画が崩れたわ。責任は取って貰う」


 コーデリアが暗部さん二人を連れてやって来た。

 明らかな敵意…暗部さん達に敵意は無いけれど、用心した方が良いか。


「へぇ、どう責任を取って貰うんですか?」

「簡単よ。死んでもらうの」


 コーデリアの合図と共に、ドンッ、と空から着地してきた白く光る剣を持った黒髪の女性…ミズキが私の前に降り立った。

 私を見据える視線はいつもの目じゃない…アホ、また操られたのか。

 ヘンリエッテが襲われた時に心の隙に入り込まれたんだな…アホっ。


「……レティ、私はあなたを殺さないといけない」

「ふふっ、それは困りましたね。またこの場所で殺し合いですか」


 あれから一年か…


 ミズキなら視れるか? よし…

 深淵の瞳でミズキに掛けられた魔眼の力が視えた。


 うわ…運命を変える魔眼。

 まじかよ…厄介な魔眼だな…

 私と同じ位の魔眼だから、力が解っても解除は出来ない。


「私とあなたは殺し合う運命にある…」

「そうですか。この運命には、抗ってみたいですね」


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