五章…深魔貴族編

おい…

 

 あれからなんとかヘルちゃんとクーちゃんの長期休みが取れるらしいので、金髪ぐるぐる眼鏡女に変身して帝都でお買い物をしていた。

 もちろん幼女を抱っこしながら…

 幼女ってそろそろ仕事した方が良いんじゃないのかな?

 まぁでも女神幼女から見たら一、二年くらいは少しの時間だし…きっと怒られるまで堕落していると思う。


「のうアレスティア」

「なんですか?」


「今日ハズラからお願いしたのが来るでの」

「へぇー、何をお願いしたんですか?」


「まぁ、来たら解るの」

「ふーん。あっ、これ可愛い」


「迷宮に行くのに服選びとは余裕じゃの」

「ご飯と寝るのはパンパンなので、服ぐらいしか買うものが無いんですよ」


 じゃあそのまま行けよという視線を躱して服選び。と言っても最近白い服しか着ないから同じような服が増えていく。

 でも買い物はやめられない…衝動買いが趣味だから。


「私とヘルちゃんが居ないので、アテアちゃんはどうするんですか?」

「イったんの部屋に引きこもるぞえ」


「それをリアちゃんが許すんですか?」

「交渉済みじゃ」


 何を交渉したんだろう。

 何かと引き換えにしないとリアちゃんは動かないから…何か…ナニか?

 あっ、チロルちゃん発見。

 よく一緒に行くお店が並んでいるから、たまに遭遇する。


 ワンピースを眺めて悩んでいたので、そろりそろりと近付いてお尻を触る。

「ひゃっ!」

 チロルちゃん…運動不足だね。また重力に負けているよ…


「……ふむ」

「……アスティちゃん、何してんの?」


「尻占い」

「……結果は?」


「寮に籠って食っちゃ寝する休日に焦っていざ買い物に来てみたけれどボッチだから新規開拓する勇気も無くいつもの店で先週悩んで結局買わなかったワンピースを再び見付けて悩んでいる、今ココ」

「何故知っているぅ!」


 チロルちゃんの行動パターンは把握済みだよ。

 誰かお友達と来なよ…一人だと危ないよ。

 幼女がチロルちゃんのスカートに手を入れて生尻を揉んでいる…穴はやめれよ。


「アレスティア、チロパンツのおなごかえ?」

「あぁ、そうですね。そろそろ私のタンスから勝手にパンツを取るのをやめて下さいよ。私のじゃないパンツも入っているんですから」


「可愛い子だねぇー。誰の子供?」

「わっちはアラステアじゃ」


 あっ、逃げようとしたから捕まえよう。

 がしっ。

 ふっふっふ、逃がさねえからな。


「……アスティちゃん…離して。私は何も聞いてない、聞いていないから帰らせて」

「は? チロルちゃんに帰る選択肢なんてある訳ないじゃん。これからパンパンに連行して抱き枕になって貰うんだから、今日の予定は全てキャンセルしてね」


「アスティちゃん…また私にだけオラオラしてる」

「嬉しいでしょ?」


「……くっ、嬉しいよ。とても嬉しいんだけど…なんか悔しい」


 嬉しいなら良いじゃん。

 オラオラしているのはチロルちゃんだけだぞ? 特別だぞ? 喜べ喜べ。


 買い物も終わり、拘束したチロルちゃんをパンパンに連行。

 逃がさないように幼女はチロルちゃんに抱っこしてもらう。

 そして裏口から入って私の部屋に連れ込んだ。


「アスティちゃん…明日学校なんだけど」

「じゃあ学校までは時間あるって事だね」


「いや、まぁ、そうだけど…」

「本音は?」


「めった嬉しい」

「ふふっ、一緒にゴロゴロしよっか」


「えっ、アラステア様は…」

「わっちも寝るぞえ」


 三人でゴロン。

 ……

 ……

「あっ」

 どうした幼女。

 魔法陣の描かれた紙を取り出して、うにうにしたら転移していった。

 急ぎの用事かな?


「アラステア様はどこに行ったの?」

「多分家に戻ったよ」


「へー、なんでアラステア様が居るの?」

「この前会いに行ったら仲良くなったの」


「うん、よく解らないけど分かったよ」

「チロルちゃんが物事に興味無くて助かるよ」


「それ褒めてないよね」

「褒めているよ? 面倒な説明をしなくても空気に流されてくれるって意味だから」


「褒めてないね!」


 あっ、幼女が帰ってきた。

 ……なんだろう、一瞬幻覚かと思ったけれど…とりあえず話を聞こうか。


「……説明をお願いします」

「言ったじゃろ。お願いしたのが来るって。わっちのお世話係を増やそうと思っての!」


「……アレスティア、会いに来た」


 先日戦った蒼禍が立っていた。

 青い前髪から覗く青い瞳が私を捉え、少し不安そうな表情をされるとどうしたら良いか解らなくなる…

 …いや、いやいや、ハズラの補佐を貰うとかどうかしてるぜ!


「蒼禍さん、また会えましたね。そこの幼女と話をするので少々お待ちを…」

「……分かった。あっ、この人間はアレスティアのか?」


「はい、抱き枕にして良いですよ」

「えっ…」


 蒼禍はチロルちゃんを抱っこしてベッドに座った。

 ……似合うな。チロルちゃんも良い感じに目が死んでいる。


 幼女を見ると親指を上に立てながら褒めて褒めてという顔を向けている。アホか? アホなのか?


「アテアちゃん、何考えているんですか?」

「いや…好きじゃろ?」


「はぁ? 大好物ですがそれとこれとは別問題ですよ!」

「だって…アレスティアに喜んで貰お思て…うぅ…」


 嘘泣きするな。

 これ以上ヒロイン増やすなよ。

 どんどん増えて渋滞中なんだ。

 十八禁の私なんかアレが忙し過ぎて毎日大変なんだぞ?

 解るかこの気持ち…


「とりあえず…蒼禍さんは帰れるんですか?」

「帰れるぞえ!」


「お世話の期間は?」

「アレスティア次第じゃな!」


「蒼禍さんの所属はどうなっていますか?」

「アラス所属じゃな!」


 蒼禍に私の普段幼女にやっている事をさせるのは申し訳ないぞ。普通なら一ミリも力を使わない女神に嫌気が差すと思うけれど…

 もうなってしまったものは仕方ない…のか。


「じゃあ…蒼禍さん…主に精神的に大変でしょうが頑張りましょう」

「ああ、大丈夫だ。アレスティアの力になるならと志願したんだ」


 いや、そんなに意気込まなくても大丈夫だよ。

 これは幼女に釣られて堕落していく自分との戦いだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る