奥義を会得しておこう…
みんなでパンパンへと戻り、クーちゃんとは後でイチャイチャする事を約束して幼女の部屋に入った。
「…ヘルちゃんも来るの?」
「ええ、私は見学よ。代表の他に二人までなら一緒に戦えるらしいから」
「へぇー。じゃあそれまでアテアちゃんはボッチで序列戦をしていたんですね!」
「……それは言わないのじゃ」
ボッチで戦うとか親近感がドバドバ溢れているな。
今まで寂しかったんだね…良いぞ良いぞ深魔貴族の私が頑張ってあげよう。
「とりあえず時間まで奥義書に魔力を通させて下さい」
「良いぞえ。わっちも準備があるからの」
幼女が床に紙を敷いて、もにゃもにゃすると消えていった。
……あっ、家に帰ったな。付いて行けば良かった…
巻物と朱天の剣を取り出して、魔力を込めていく…
「奥義書ってそれかしら?」
「うん、少しでも戦力強化しないと…マグロとカツオを使う羽目になるからさ…」
「魚?」
「見る? 私の最高戦力…」
ドンッと床に置いた冷凍マグロに、ヘルちゃんが生臭そうに顰め面…
ついでにカツオも置いてみる。
「…あら、これは可愛いわね。でも冷たくて持てないわ」
「神武器だから慣れないと持てないんだよねぇ」
「神武器…私も欲しい…」
「うーん…一応聞いてみるね」
「ええ、期待して待っているわ」
おかぁさんの剣はダサいけれど、杖とか槍もあるらしいから聞いてみよう。ダサかったら道連れにすれば良いし。
「おっ、奥義書が光った」
「魔法書と似たようなものかしらね」
「多分ねー。あっ、なんか頭に入って来た……狭い範囲なら天壁を使えそう。やった」
朱禍が使っていた技も初期段階なら使える。
これで準備完了かな。
……幼女遅いな。
「寝ているのかしら」
「…可能性としては有り得る……あっ、来そう」
紙の上に幼女が転移してきた。
……なんか化粧して…ワンピースではなくドレスを着用。気合い入ってんな。
「……待たせたの」
「勝負服ですか?」
「……いや、お風呂に入れられて…着替えさせられて…化粧をされただけじゃ」
「私も代理さんに会いたいです。苦労を分かち合いたいです」
「行っても一日中着せ替え人形にされるだけじゃ…やめとき」
幼女の代わりに管理をしている人が気になるな。
リアちゃんのお友達だと思うけれど…
まぁその内会えるか。
「ところで、何処でやるんですか?」
「あぁ…天異界の本部じゃ。この玉を持っていれば時間が来たら転移出来るぞえ」
幼女が手の平サイズの白い玉を手渡してきた。
これを持っていれば良いんだね。
時間は…あと二分くらいらしい。
ギリギリじゃねえか。
「今度は前もって言って下さいね」
「仕方ないじゃろ、わっちも振り回されておるのじゃから…あっ」
「……なんですか?」
「この戦いが終わったらくじ引きじゃ。相手の都合が良かったら連戦じゃからの」
「……終わったら覚えておいて下さい」
「……だって…あっ、時間じゃ」
白い玉が光り、幼女、私、ヘルちゃんの身体も光る。次の瞬間身体が浮く感覚と共に視界が変わった。
ここは……白い部屋。
広さは数百メートル四方…室内で戦うのか。
天井も高いから星体観測も使えない事もない…
そして、前方には対戦相手。
対戦相手はここに来てみないと解らないらしい。
『…序列二十位、アラステアか。人間を引き連れているとは余裕だな』
「もちろん余裕のヨーゼフじゃ! 序列五十六位ビハン、よろしくの!」
よし、幼女が余裕そうだ。
ビハンは白い服に長髪のオジサン。
少し痩せ型で杖を持っている。
後ろには二人…ガチムチのオジサンと軽薄そうな笑いを浮かべるオジサンを連れている。
オジ三人衆だな。
「アスティ、アテアちゃん、回復くらいはするから言ってね」
「よろしくねー。じゃあ私はあのオジサンにしますよ」
「ほいよ。したらわっちはそこのオッサン二人にするかの」
幼女は大人モードにならないのかな?
……ならないな。
えっ、そのまま戦うのー…
「大人モードのアテアちゃんが見たいです」
「このままでも勝てるからの」
「えっ、普通戦う時とか大人モードになりますよね?」
「まぁ、その気になったらの」
「えー! やだやだー! 見たーい!」
「あっ、始まるぞえ。もし連戦になったら考えるの」
この戦いでは見せてくれないのか…
じゃあ早く見たいから頑張ろう!
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