これで私も深魔貴族…戦力強化だー……
白い剣が大地に突き刺さり、光の膨大なエネルギーが大地を焦がす。
視界が白く染まり、衝撃により脱力している私の身体は簡単に飛ばされた。
宙を舞いながら、落ちたら死ぬかなーと思っていると星属性が戻る感覚…
「やった…星乗り」
深淵の瞳の魔力はまだあるから、黒い星を作り墜落は免れた。
危なかった…
ソルブレイド(仮)の効果かまだ眩しいな…
どんな原理であんな魔法が完成したんだろう……そういえばソルレーザーを覚えた魔法書はまだ続きがあったな。確認してみるか。
やがて光が晴れると、闘技場の中心には大きな谷が出来ていた。
深いなぁ…まだカードから勝敗が出ていないから、ちょっと降りてみよう。
ゆっくりと谷底に降り立ち、辺りを見渡す。
うーん…朱禍はどこだろう。
消滅しちゃったかな…
『……ここだ』
あっ、瓦礫から声がする。
ゴトリと瓦礫が崩れ、ボロボロの状態になった朱禍が現れた。
もう、時間切れかな…
「…もう、勝負は終わりですね」
『そうだな。時間が来てしまったようだ…楽しかったぞ』
「私も…楽しかったです。とても…」
『光栄だな…そうだ、これを受け取ってくれ。アレスティアに使ってもらいたい』
朱禍が私に赤黒い剣を差し出した。
これは、朱天の剣…
「…大事にします」
『それと、これは奥義書だ。気が向いたら使ってくれ』
巻物…あの天壁を使えるようになるのか。
貰いすぎだよ…
「…いつか、剣でも朱禍さんを超えてみせます」
『頼もしいな。これで思い残す事は…あったな。もし、儂の身内に会う事があれば、笑って逝ったと伝えてくれ』
「はぃ…分かりました…」
『出会いがあれば別れもある。一々泣いていたら身が保たぬぞ?』
「だって…悲しいんです…」
『くくっ、ありがとうよ』
朱禍が私の頭に手を伸ばした所で、ボロボロと身体が崩れ消えてしまった。
あぁ…悲しいな。
身内には何て言えば良いんだろう…身内って誰か知らないけれど、天異界序列六位、ハズラか…
気持ちを切り換えよう…
なんだ? 朱禍が消えた跡…何か落ちている。
紫色の球体…魔石? いや、これ…妖呪の核…怨嗟の声が聞こえるけれど、触って大丈夫かな?
一応遺品だから収納しておこう。
≪勝者アレスティア≫
うおっ! びっくりした…
≪カードの更新を行います≫
更新?
あっ、景色が変わった。
目の前には赤い髪の美人…クーリンさん。
「アレスティアちゃんおめでとー! 深魔貴族の仲間入りねー!」
「あっ、そういえばそうでしたね。ありがとうございます!」
「これ新しいカードねー。魔力を通してー」
「はい……出来ました」
新しいカード。
見た目は一緒だな…
『アレスティア。序列・九十八位』
書いてある事も一緒だし…何が変わったんだろう。
「このカードは権限を発動出来るのー。別の闘技場への移動や、お買い物も出来るのよー」
「へぇー、凄いですね」
お買い物って気になる。
ルゼルに教えて貰おう。
あっ、ルゼルが降りてきて抱き締めてくれた。
良い匂い…
「アスティ、おめでとう」
「ありがとうございます!」
「今日はもう帰るか?」
「はい、相談したい事もあるので」
「あっ、アレスティアちゃん。これあげるー、昇進祝いよー」
帰ろうとした所で、クーリンさんがビンに入った液体を渡してきた。キラキラして高そうな薬だなぁ…
「これはなんですか?」
「秘密の霊薬よー。飲むと体力と魔力が回復するわー」
「あっ、こういうの欲しかったんです。ありがとうございます!」
「どういたしまして。次は五十位以内を目指してねー。待っているわー」
クーリンさんにバイバイして、ルゼルに抱っこされながら城へと帰る。クーリンさんって序列何位なんだろ…待っているって事は五十位以内かな?
「アスティ、良い戦いだった」
「へへっ、ありがとうございます。今日は沢山勉強になりました!」
本当に勉強になったな。
新しい魔法も覚えたし…
……なんかいつもより速いな。
というかもう城に着いた…私とイチャイチャしたいから早く帰りたかったんだね!
「相談とはなんだ?」
「はい、朱禍さんが崩れてこれが遺されていたんですけれど、使っても良いのかなって…」
ルゼルに妖呪の核を見せると、光にかざすように眺めて魔力を通した。妖呪の核から怨嗟の声が聞こえなくなったな…
「…これに魔力を通せば良いぞ」
「はい、ありがとうございます。やってみます…」
早速やってみよう。
魔力を通して……あっ、妖呪の核が砕け散って消えてしまった。
ん? なんか覚えたな……ふーん、へぇー、呪われた世界を覚えたぞー、やったぜ!
「覚えたか?」
「はい! 呪われた世界を覚えました!」
これで戦闘は楽になるけれど、頼り過ぎても駄目だから気を付けないと。
……なんだろう、ルゼルが何かを言おうとしているけれど悩んでいる。どうしたんだろう…
「……他の神剣も使ってみるか?」
「はい!」
どんな剣があるんだろう。
折れないソードより強い剣かな?
……なんか取り出したな。
……
「これだ!」
「……一応説明を聞きましょう」
いや、これ冷凍した魚達だよ。
剣じゃないよ。
「マグロブレイドとカツオブレイドだ。なんと攻撃力は折れないソードの三倍! 特殊能力も満載だ!」
「いや、遠慮しておきます」
「えっ……」
……いやごめん、流石に恥ずかしい。
剣じゃなくて鈍器じゃん。
マグロなんて重すぎて持てないし…これ二百キロはある。いやエナジーパワーがあれば持てるけれど、マグロ女子とか出落ちも良いところ……
……あっ、まずい…ルゼルが悲しそうだ。
クーリンさんが昇進祝いをあげたから自分も何かあげたかったんだろう……私に拒否されて落ち込んでいる。
折れないソードの時も思ったけれど、センスが独特というか…
「あの…私も思春期なので、普通の武器が嬉しいかな…なんて」
「普通の…武器…」
なんか衝撃を受けたような顔をしている……もしかして……
「……普通の武器は…無いんですか?」
「……無い」
まじかよ…
この先アバンギャルドな武器を渡されていくのか…
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