深魔貴族さんでしたか
パンパンにてヘルちゃんの祝勝会も終わり、店員さん達のキラキラした視線を受けながら、現在私の独演会が始まっていた。
何故かと言うと、私がアレスティア王女だと確定してしまったからね。
まぁ…幼女がアレスティアアレスティア言うからみんな知っていたんだけれど…
「――そんなこんなで今に至ります」
ぱちぱちぱちぱちー。
はい、ありがとうございますーありがとうございますー。
「はい質問!」
「レーナちゃんどうぞー」
「いずれは…何処かへ行っちゃうんですか?」
「そうだね。でもちょいちょい帰っては来るよ」
「ちょいちょいってどのくらいですか?」
「今のペースくらいかな…」
裏世界から行って帰って来るくらいペースだと思う。二、三日に一度帰るくらい。
じゃないとヘルちゃんが泣くし…みんなも悲しむし…帰る場所があるのは嬉しいし…幼女がまともに働いてしまうし…
……いや幼女は働いて良いのか。
私が居ない方が幼女の為になると思う。
今も一切の筋力を使わずに私にへばりついているし…
「…アレスティア、直に尻を揉むでない」
「私にただでくっ付けると思ったら大間違いですよ」
「皆の前ではせめてパンツ越しにするのじゃ」
「普段みんなに悪戯しているから見せしめですよ。しかもこれ私秘蔵のエスカちゃんのパンツじゃないですか…」
「あっ、そういえば序列戦は一ヶ月後に決まったからの」
「はい、序列何位と戦うんですか?」
「くじ引きじゃ!」
「えー…一位とか当たったら負けそうじゃないですかー」
「わっちが二十位じゃから、有り得るの」
「えー…」
十九分の一か…じゃあ、その内キリエにも会えるかも…恐らく上位だし。
でも私なんかパシュンと殺られるんだろうなぁ…
一応序列戦で死んでも復活出来るから、全力で出来るって言われてもねぇ。
「勝ちが全てじゃないからなんとかなるぞえ。でも、外れくじのジョーカーを引いたらアウトじゃな」
「ジョーカー?」
「強すぎて戦いにならんのじゃよ」
アテアちゃんが強すぎるというくらいだから、相当なものだろう。ルゼルに聞いてみよ。
「じゃあ、早速裏世界に行ってきます」
「あっ、そうじゃ」
「なんです?」
「ちょっと調べたんじゃがな。あと三ヶ月くらいで深魔貴族が本格的にエルドラドを進行しそうなのじゃ」
あぁ…忘れ掛けていた。美少女グランプリが終わってから向かえば丁度良いかな? ミズキとアース王女の最後の思い出になるかも知れないし……
先ずは一ヶ月後に向けて強くならなきゃ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
裏世界に到着。
意識が切り替わると、ルゼルが部屋で難しい顔をしながら本を読んでいた。
「おかぁさんっ、何読んでいるんです?」
「あぁおかえり。旅行誌だ」
「何処かへ行きたいんですか?」
「いや、友の世界で何が流行っているか見ていただけだな」
へぇー…他世界の情報誌。
……なんか色々凄いな。世界規模の名所がズラリ…そもそもこれは誰向けの雑誌なんだろう…
「あっ、一ヶ月後に天異界の序列戦があるんですけれど…ジョーカーって知っていますか?」
「まぁな。ジョーカーは複数居るんだが…我もその一人だ」
「あっ、そんな気はしていました。もしかしたら会うかもしれませんね!」
「ふふっ、その時は容赦出来ないから許してくれ。行こうか?」
「はい!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
闘技場に到着。
クーリンさんに挨拶をしてから、序列カードに強めの魔力を込めた。
バシュンと景色が変わると、前と同じく集団の中。
みんな緊張している雰囲気…
そして、前方に魔法陣が出現した。
何が来るかなー。
『さてみなさん、よろしくお願いします』
『『『なっ!』』』
ん? みんな驚いているけれど有名人?
なんか黒いダボダボした服…巫女服の真っ黒いやつを着て白い髪に青白い顔をしたお兄さん。
みんな邪魔だし、隅に寄ってちょっと様子を見よう。
やけくそ気味で突進する魔物や、興奮して雄叫びを上げる魔物達。当たりって言っているから深魔貴族かな?
『おやおや、落ち着きましょう。…束縛の呪言』
ん? みんな止まっちゃった。
動けずにもがいている…
拘束系の魔法かな?
『さようなら。カースサンダー』
黒い雷が落ちてきたな。
ライトシールドっと。
おーおー響く響く。
あーあ…みんな消し炭になっちゃった。
強いなー。
よしっ、やるか!
「有名な方ですか?」
『…おや、強者が紛れていましたか。わたくし、序列九十八位…ジュマと申します』
「あっ、序列千八百位のアレスティアです。深魔貴族さんだったんですね」
『末席ですがね…では、楽しませて貰いましょうか』
勝てるかな…
いや、勝たなきゃ。
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