卑怯な技ほど思い付くよ…

 

 魔族の序列はなんだろな。

 倒したら解るか…さっきの魔法から見て風系統。


 私の様子を見ているから先手を打とう。


「さぁ、勝負しましょう。光飛連斬!」

 エナジースピードで二倍に加速した連撃…普段は最高二十連だから四十連!

 広範囲、等間隔に放っているから躱す事は難しい筈。


『ふむ、ルーキーか。エアロバリア』

 空気の膜が魔族を包む。

 光の刃が直撃…せずに逸れていった。


 放出系統の攻撃は効かないとみた方が良いか。

 それなら…直接!


「無元流…」

『むっ、空爆』


 空気が圧縮…これはまずい!


「十連ライトシールド!」

 激しい破裂音と共にシールドが次々と割れていく。

 あと一枚…これは防御よりも断ち切るが最善!


「私流剣技・白三日月!」


 光の斬撃をその場に停滞。

 迫る空爆を両断していく。

 あっ、やばっ、飛ばされそう。

 背中にライトシールドを発生させて背もたれにする。


 どうすっかなぁ…空爆で上手く近付けない。

 仕方無い…ゴリ押しするか。


「レーザーブレイド」

 今回は、ライトソードを起点にソルレーザーを発生させる。

 つまり…


『なんだ…それは』


 ソルレーザーをぶん回せるのだ!

 名付けて卑怯ブレイド!

 周りを巻き込むから一人じゃないと使えないボッチ技!


「無元流…乱れ桜!」

『くっ…エアロバリア!』


 剣速はいつも通り!

 一撃でエアロバリアを斬り捨てる。

 お次は四肢を斬るけれど、流石は魔族…中々防御が堅い。

 もちろん攻撃は緩めない!

 速く…もっと速く!


『ぐぁぁ! 大空爆!』

「無駄ですよ!」


 空気が中心に集まる。

 させぬよ!

 中心に剣を向けるだけでソルレーザーが魔族の魔力を散らしてくれる。


 防御が堅くて中々止めは刺せない…でも大丈夫!

「エナジーマジック!」

『何! 威力がっ!』


 ソルレーザーが太く輝きを増す。

 魔族は防御に徹していたけれど、耐えきれなくなってきた。


「ありがとうございました。私流剣技・戦鬼横断!」


 高速で駆け抜けながら斬り付け、急停止しながらその場で回転。

 背中に渾身の一撃をお見舞い。


『がっ…はっ…』

 その反動で逆回転。

 今度は首を狙い…

 スパンッと首を跳ねた。


「ふぅ…上手くいったな」

『お見事だ』


「うおっ! 喋った!」

『上位の魔族となればこれくらいでは死なぬよ。知らぬのか?』


「はい、私は表世界から来たので…あまり裏世界の事は知りません」

『そうか…精々足掻いてみろ』


 あっ、消えた。


≪勝者アレスティア≫

 わーい。


≪続行する場合は一分以内に魔力を通して下さい≫

 今日はもう良いかな。

 序列はっと…『アレスティア。序列・千八百位』

 おー! 十万以上も上がった!

 良いね良いね!


 一分待ってみよう……

 ……おっ、景色が変わった。

 目の前にはクーリンさん。


「お疲れ様ー」

「はい、今日はこのくらいで終わろうと思います」


「ふふっ、頑張ってー。あっ、上位に挑戦する場合は気を付けてね。都合の良い上位者をランダムで選ぶから、五十位以下の深魔貴族が選出される場合もあるのよー」

「へぇー。その方が好都合ですね。深魔貴族って名乗りたいんで」


 今が千八百だから、あと何日かで戦えそう。

 楽しみだなー。


「アスティ、余裕だったな」

「緊張しましたけれどね。今日は終わるつもりです!」


「そうか、じゃあ行きたい時はいつでも言ってくれ」

「ありがとうございます!」


 嬉しいからルゼルに抱き付いて、谷間に顔を埋める。温かい…


「あらー、仲良しなんですねー。ルゼルさんが笑うの久々に見ましたー」

「あぁ…仲良しだ。また来る」


 ルゼルに抱っこされ、クーリンさんに手を振るとニコニコしながら振り返してくれた。

 クーリンさんはいつアラスに来てくれるんだろう。


「アスティ、序列は幾つになった?」

「千八百です! この調子で頑張ります!」


「ふふっ、それならあと数回で百位に届きそうだな。安心したよ」

「おかぁさんのお蔭です。ありがとうございます。お礼は身体で返しますね!」



 そのまま城まで帰ってきた。

 表世界に戻らないとなぁ…もう少し一緒に居たい。


「そういえば、表世界と往き来するのはどうやるんですか?」

「方法は沢山ある。繋がっている迷宮から往くか、次元の歪みに飛び込むか、我が使う次元転移、アスティのように媒体を使う方法が主だな」


「ロンドがやっていた大量動員は?」

「あれは各世界に繋がっている次元の歪みに邪気を流し、裏世界と同調する事で出来る禁術だな」


 へぇー、色々あるんだなぁ。

 結構危ない世界もあるんじゃないかな。進行形で。


「表の世界が裏の住人に支配されたらどうなるんです?」

「生命が死に絶え、死の星になる。それを防ぐ為に天異界同盟があるんだが…まだまだ完璧とはいかない」


 危なくなったら助け合おうって奴だね。同盟の目的って何なのかよく解らなかったけれど、これで解ったかな。

 確かに幼女だけだと世界が滅びそうだし…

 ルゼルが天異界同盟と繋がっている事も解った。


「あっ、そろそろ帰らないと」

「あぁ、行ってらっしゃい」


「へへっ、行ってきます!」



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ぱっと意識が切り替わり、起きると幼女がテーブルでご飯を食べていた。口一杯に入れてモキュモキュしている。

 ライラは居ない、子供組と勉強会かな。


「ふぁれふひぃふぁふぉふぁふぉう」

「はい、おはようございます。私はどれくらい寝ていました?」


「ふふふぁふふぁい」

「えっ、二日も寝ていたんですか? 時間は…やばっ! 急ぎますよ! ヘルちゃんの剣技大会今日なんですから!」


「ふぁふぉひぃふぁふぁ」

「あと二皿じゃないですよ! ほらっ、なんでパンツしか履いてないんですか! 服着て!」


「ごくんっ。えー……アレスティアだけ行けば良いじゃろ」

「あっ、そうか」


 えーと、地味スタイルは駄目か…

 よしっ

 金髪ぐるぐるメガネ女で行こう!


「行ってきまーす!」

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