気分爽快ご機嫌うまい!
* * * * * *
愉快犯が去った後、侍女や騎士達が雪崩れ込み王妃と近衛騎士の容態を確認…直ぐに搬送していった。
コーデリアはその様子を眺め、ディアスの回復を始める。
「姫様…お怪我はございませんか?」
「えぇ、無いわ。少し、ディアス室長と話をしたいから下がって貰える?」
「いえ、私も同席致します」
「…お願い」
「……分かりました、部屋の外で待っております。終わったら王妃殿下の側に居て戴きますから」
「……考えておくわ」
渋々ながらも侍女は部屋を出ていった。
脇腹を擦るディアスが紅茶を淹れ、コーデリアを座らせて紅茶を置いた。
「あの女は…何者なんですか? 殺したかったのに…手を出せなかった…」
「あの御方は、そうですねぇ…女神様の使いと言った方が良いですかな」
「……天使だというの…あんな奴が…」
「ヨホホホ、あれは仮の姿にございます。アレスティア様の私物を持ち出したのは、きっとお友達なのでしょう」
「……お友達…それなら…教えてくれても良かったのに」
「…コーデリア姫の剣幕に、言い出せなかったのでしょう。己のコントロールも修行の一つですよ」
少し前の自分を思い浮かべて、ばつが悪そうに俯いた。アレスティアの事になると我を忘れてしまう程に…コーデリアの中でアレスティアは中心に居た。
「また…私…暴走して……ちゃんと話せば…教えて貰えましたよね」
「あの御方は優しい方ですから、次は落ち着いてみてはいかがですかな」
「はい…精進します。あの…また来たら教えてもらえませんか?」
「周りが許すのであれば」
「お願いします…なんか…凄く胸が高鳴るんです。不思議なくらいに……憎い筈なのに…」
「ヨホホホ…この場合、憎しみは何も生みませんよ」
コーデリアに少しの成長が見られ、ディアスの口角が少し上がる。コーデリアは決意の表情を浮かべ、部屋から出ていった。
「もし…あの女がお姉さまの隣に居るのなら……もっと…頑張らなきゃ……先ずはアースの王女を殺して、お姉さまに褒めてもらおう」
* * * * * *
「ふんふふーん、ふーん♪」
気分爽快ご機嫌うまい!
私の心は晴れ渡った空のように良い気分!
一番難しいと思っていた目的を達成するって良いね!
宿便を成敗した気分だよ!
ご機嫌でパンパンへと帰って来た。
時刻は深夜…みんな寝ているかな。
そーっと中に入ると、リアちゃんが作業中。ぱそこんをカタカタしている。
「リアちゃん、ただいま」
「アスきゅん、おかえりなさい。どうだった?」
「満足のいく結果でした!」
「ふふふっ、嬉しそうだね。聞かせてもらえる?」
「はい! 私の親は私でした!」
「……ごめんちょっと解らない」
興奮して意味解らん事言ってもうた。
なんて言ったら良いんだろう…
「先ず…完璧主義のベアトリスク王妃は私を作る為に最高の血を求めていたんですが…中々見付かりませんでした」
「最高の血ねぇ…理想は初代皇帝みたいな?」
「はい。そこでベアトリスクは何を思ったか禁術書を使って魔族を召喚しようとしました」
「禁術…なるほど、魔族の血を使おうと思ったのか。続けて」
「フーツー城の屋上に怪しげな祭壇がありまして、そこで禁術書を使ったんですが…私に似た人が召喚されたんです」
「その人の血って事ね。もう一人は?」
「もう一人というか……生贄に使った美少女百人の血を禁術で一滴に纏めていましたね」
「……だからこんなに可愛いのね」
リアちゃん…私の中々に重い生い立ちをスルーしたな。
美少女百人を買ったお金が結構掛かったのに、私が失敗作だったからあんなに嫌っていたという訳だ。
今の私を見てどう思うんだろうね。
美少女百人も居れば、初代皇帝が先祖の人だって居た筈だし。
ベースが私に似た人で、美少女百人分の血……百人分の深く重い想い…深淵の瞳が発動する訳だ。
「美少女百人は歴史や戸籍から抹消されているので、足取りは解りません。ですがもう一人について調べてみようとは思います」
「深追いは駄目よ。まぁ、私の方でも当たってみるわ」
「ありがとうございます。まぁここまで解れば充分ですがね…美少女達を想うのならベアトリスクは私の手で殺す必要がありますよねぇ…」
「アスきゅんしゅごいわ。一人でここまで調べられる子は見た事無いから、今度ご褒美あげりゅね」
わーい。ご褒美ご褒美ー。どんなご褒美ですかー?
秘密? 教えてよー。
「あっ、元妹に会ってきましたが…まぁ、うん、魔眼に覚醒していましたが、何の魔眼か解りませんでした…」
「あら、解らないって事は超位の魔眼…興味あるわね」
そこら辺はリアちゃんに任せよう。
正直ここまで解ったから、天使な私単体でも元母親が悔しがりそうな気もしてきたけれど、念には念を…かな。
「じゃあ幼女と寝てきますね」
「うん、おやすみなさい」
リアちゃんにおやすみのチューをしてから、幼女の部屋へ。
中に入るとベッドに小山が二つ…幼女と…誰だ?
……布団を捲ると、寝ている幼女ともう一人…ライラか。
よしっ、幼女とケモ耳美少女の間に入って寝よう。
あぁ…暖かい…これ良い…おやすみなさーい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
意識が浮上…裏世界に到着した。
「…おかぁさんおはようございます」
「あぁアスティおはよう。弁当は食べたか?」
「はい! とっても美味しかったです! 私の憧れが叶いました!」
「ふふっ、良かった」
ルゼルはリアちゃんと同じく、ぱそこんをカタカタしていた。
なんだろう…私もカタカタすれば大人女子になれるのかな。
起き上がって、ルゼルを後ろからギュッとしてぱそこんを見る。うん、何書いてあるか解らん…そもそも裏世界で読み書きが出来ないな。
「私も読み書き出来るようになりたいです」
「良いぞ」
わーい。言語表と分厚い辞書、絵本をくれた。
頬っぺにチューしてお礼を伝えよう。
おっ、ニヤニヤを抑えようとして顔が引きつっている…デレッてしてよー。
「じーっ」
「……もう少し待って」
「気になったんですけれど…」
「……何?」
「お仕事って何されているんですか?」
「簡単に言うと便利屋だな」
「殺しもします?」
「そうだな」
へぇー。
リアちゃんが言っていた殺し屋ってルゼルの事かな?
「いつでも良いので、社会見学をしても良いですか?」
「それは構わないが、どうしたんだ?」
「いやぁ…目標や夢はあるんですが、将来の事ってあまり考えていなくて…もちろんおかぁさんと暮らしたい気持ちはあるんですが、仕事をしたいんですよ」
「仕事か…我の仕事は特殊だからな。現状は?」
「表世界では、帝国の騎士団所属で女神のお世話係です…騎士団は辞めるつもりですし、お世話は幼女を抱っこしているだけですからね……何かやりがいのある仕事がしたいんです」
「そうか…我の力を手にすると、人の世では生きられぬからな…」
えっ、そうなの?
強くなり過ぎて世界を管理する神が嫌がるのかな?
でも強くなりながら長生きしたいし…
「まだ時間はあるので、ゆっくり考えます。あと、お願いがあります…深魔貴族と戦ってみたいです」
「ふふっ、良いぞ。よしっ、終わった! 行こうか!」
ん? あれ? 今から?
あっ、うん、ルゼルは凄い嬉しそう…
じゃあ…頑張りますか。
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