あれが神武器……まさかな

 

「……という事なんですよ」

「なるほど…神相手に戦える武器が無いのか」


 裏世界にやって来た。

 ルゼルは相変わらず優雅に過ごしている。


 いつものように今日あった出来事…ヒロトの事や三姉妹の事を話すと楽しそうに聞いてくれた。


「裏世界の武器を表世界の私が使えるようになる方法ってありますか?」

「あるぞ。特に難しい方法じゃあない」


 ルゼルが銀色の小さな魔法陣を作成し、私の胸に当てるとスーッと消えていった。

 ん? なんか…繋がる感じ? 妖精さんにやられた時と似ている。


「あっ、なんか繋がりましたね」

「表と裏の両方で使える収納魔法だ。容量は少ないがな」


「えっ…あっ、ありがとうございます!」


 なんと素晴らしい!

 じゃあ表世界でルゼルのおにぎりが食べられるという事か!

 逆も然り!


「まだ慣れていないと思うから、この下位の剣で我慢してくれ」


 ルゼルが出した二つの剣…黒い剣と白い剣。

 黒い剣は少し大きめ…白い剣は少し小さめ。

 これは…私が持っても良いものなのか?


「神剣…? ですか?」

「あぁ、黒い剣は使い勝手は悪いが折れない。白い剣は使いやすいが攻撃力がへっぽこだ」


「充分ですよ! 名前はあるんですか?」

「神剣・折れないソードと、神剣・がっかりソードだ」


 名前クソだせぇ……

 神武器と言っても性能はピンキリで、木剣よりも弱い神剣だってあるらしい。

 神武器の定義は、平均的な力を持つ神が使っても簡単に壊れない武器。


 折れないソードを振ってみる…少し重いけれど、エナジーパワーを使えば大丈夫かな。

 がっかりソードを振ってみる…凄い使いやすい! 産まれた時から一緒に居るような感覚になる剣だ!


「凄く振りやすいです!」

「使いやすいんだがな…攻撃力がな…」


 攻撃力? 切れ味や破壊力を数値化したものか。

 攻撃力が千を超えれば普通の武器はほとんど太刀打ち出来ないらしい…

 折れないソードは攻撃力が千…やったぜ!


「がっかりソードは?」

「五だ」


「五…がっかりですね」

「だがどんなに硬い敵でも、五は確実にダメージを与えられる能力がある」


「それは…塵も積もればなんとやらですね!」

 多分凄いんだろうな。ルゼルが持っているという事は。

 アテアちゃんに見せたら絶対馬鹿にされそうだけれど…


 うーん…お礼には…パンケーキやらを持って来よう。

 小さな貿易…楽しみだ。


「それにしても、これだけ神剣を振れるという事は…何か神武器を持っているんじゃないか?」

「えっ? 持っていないと思いますよ? 遺伝かと思いますが…」


「武器っぽくない物でも神武器だという事もあるからな」

「んー……ん?」


 武器っぽくない物。

 リアちゃんから貰ったな。

『でんま』……まさかな。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 次元収納に物を入れる為に、表世界に戻って来た。

 夕方か…


「んぅ? アレスティア…早いの」

「荷物を整理したくて戻りました。また行きますよ」


「荷物を整理? ……わっちの事か!」

「自覚あったんですね。次元収納を教えて貰ったんですよ。これ…おにぎり食べます?」


 シャケおにぎりを幼女に見せると、訝しげな表情でくんかくんか。うんと頷いて一口食べると、にぱーっと笑う。


「美味いのう!」

「天使様が握った値段の付けられない一品ですよ。味わって下さい」


「もう無いのかえ?」

「駄目ですよ。後は私のお弁当なので…」


 次元収納を覚えたという事は、表世界でルゼルのお弁当が食べられる。裏世界のルゼルの部屋にあるアレスティア人形を通せばメッセージも送れるし、良い事尽くし!

 お母さんのお弁当を食べるという私の憧れが叶った瞬間でもある。フラムちゃんのお弁当っていつも憧れていたんだよ。あっ、最近フラムちゃんに会っていない気がする…特事班に行けば会えるけれど…


「ちょっとライラの様子を見てきます」

「わっちも行くぞえ」


 幼女をおんぶして下の階のバックヤードへ行くと、勉強中のライラと隣に座るムルムーとヘルちゃん。

 ……ムルムーがよく出来ましたの時にケモ耳を撫でて堪能している。ライラは背中に雪華を背負って肌身離さず持っていた。


「ムルムー、ヘルちゃんありがとね」

「覚えが早いですよ。流石は女神の加護持ちですね」


「わっちの加護じゃからのぉ!」

「自慢気ですね。加護って他に誰が持っているんです?」


「一年に一度は何かに与えるぞい。人や魔物、建物や物、国の場合もあるしの」

「へぇー、建物ってお城とかです?」


「普通の家の場合もあるぞい。この帝都みたいな都会だと、迷子になった時に助けてくれた者の家がほとんどじゃな」

「一応帝都に挑戦はしたんですね」


 加護を与える基準が微妙過ぎる。

 ライラ達が産まれた時に立ち合ったのは、たまたま邪霊樹の様子を見に行ったからだってよ。


「なんで加護を与えたんですか?」

「獅子の子が可愛いくてな。つい…」


「女神様、その節はありがとうございました」

「よいよい。大きくなったの」


 魔物と女神の関係ってどんな感じなんだろう…魔物にも種類はあるし、世界と魔物の関係も気になるところ…


 ライラもうまくやっているみたいだし、安心かな。

 後ろからギュッてすると、腕をはむっと甘噛みしてくれた。少しは信頼してくれている…良かった。お姉ちゃんって呼んで良いからね!

 よしっ、そろそろ行こうかな…


「じゃあ少しお出掛けしてきますね」

「あら、何処へ行くの?」


「実家だよ」

「…そう、付いて行きたいけれど、難しいわね。気を付けてね」


「うん、様子を見に行くだけだから。多分」


 今は夕方…星乗りで飛ばせば夜には着くかな。


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