想定外だな…

 

 あれから星属性強化の修行が本格化してきた。


「もう少し力を抜いて…そう、良い感じ」

「…ちょっと…まだバランスが…あっ」


 ポフッ…練っていた力が四散。

 うーん…難しい。

 星属性の力を、玉の形にして目の前に浮かせる。これが中々難しい。

 星属性を人や魔法に流し込む事は出来るけれど、単体で操作する場合…星属性の力が強すぎて……


「焦るでないよ。昔は闇の力…エビルエナジーを使っていたが、光に弱くてな。バランスが悪かった」

「バランスって大事ですよね。メガエナジーってどんな風に修練したんですか?」


「戦えば戦う程強くなれるから、この裏世界でただひたすら戦ったよ」

「それで裏世界で二番目の強さに……一番って王様ですか?」


「あぁ、不本意ながらな」


 裏世界の王か…

 あっ、そういえば…


「ロンドっていう執事みたいな方はこのお城に居るんですか?」

「あいつは死んだからもう居ないぞ」


「えっ? 何かあったんですか?」

「つい最近、今代の邪神と喧嘩してな…ボコボコされた。丁度その時に別の戦闘中だった深魔貴族に出くわして…吸収されてしまったんだ」


 それは…御愁傷様。今代の邪神…セッテンシュゼツだっけ? いや邪神キリエ? あれ? というかキリエとルゼルが闘ってから、どれだけ時間が経ったルゼルと話しているんだ?


「あの…キリエと闘ってから、何年経ちました?」

「んー…アラスの時間で計算すると、三千年くらいかな。時間軸を繋げるのが大変だったぞ」


「……三千年も…私の事を待っていたんですか?」

「そうだな。まぁ、我にとって長い時ではない」


 三千年…他に弟子を取らずにずっと待っていた…ちょっと…一途過ぎて胸がキューってなる。じゃあ…私が産まれる前から私を待っていたのか…


「ありがとうございます…ルゼルさんも運命の方です。だからあの…偽りの身体じゃなくて、本物の身体で過ごしたいです」

「ふふっ、焦るでない。修練が一段落しないと裏世界では過ごせない」


 早く本物の身体で会いたいな。

 でも裏世界は

 表世界と理が違う…焦っちゃ駄目だ。


「ルゼルさんとイチャイチャする為に頑張りますね!」

「ああ。我も手伝うからな」


「はい! あっ、あのロンドを吸収した深魔貴族ってどうなったんです?」

「その戦闘に勝利して、次元の狭間に向かったぞ。我が来るとでも思ったのか、表世界にでも逃げたのだろうな」


 へぇー。表世界ねぇ。ロンドの力を吸収したのなら凄く強そうだ。最近表世界に向かった深魔貴族…なんだろう…嫌な予感がするなぁ…丁度アラスにも深魔貴族が…聞きたくないけれど、聞かないといけないんだろうなぁ…


「その深魔貴族って…蒼い奴ですか?」

「あー…よく解ったな」


「あぁ…そうですか…まずい事になりました」

「もしかして、奴はアラスに居るのか?」


「はい」

 そーなんですよー。いやー…こりゃまずい。ミズキに伝えた深魔貴族の強さはインガラが基準だ。ロンドとなると倍の強さ…想定外過ぎる。

 どうすっかな。って私も強くならないと駄目か。


「ロンドとあやつは格が違うから、完全にロンドの力を得るまでに時間は掛かる。アラスが壊れる事態になったら我にも要請が来る筈だから安心してくれ」


 手伝って欲しいけれど…

 ルゼルは依頼が無いと動けない。

 リアちゃんは色々とルールを守ると思うから動かない。

 アテアちゃんは面倒だからと動かない。


 結局ミズキと私が頑張るのか…

「出来る限り頑張ろうと思います。因みに、深魔貴族とかよく解らないんですが…裏世界にも序列はあるんです?」

「ある。強さの序列が百位以内に入れば深魔貴族を名乗れるんだ。一位は変態、二位は我、三位は破壊神ルナリード、四位は我の同僚、五位は邪神セッテンシュゼツという具合だな」


「へぇー…混沌神も居ますよね?」

「ああ、変り者でな。序列に興味が無いらしいから序列外だ」


 裏世界にも色々あるのか。

 私も百位以内に入れば深魔貴族アレスティア…ちょっと憧れる。修行がてら序列に参加してみようかな。


「ところでロンドと邪神はなんで喧嘩したんですか?」

「まぁ、恐らくゼツが居ない時に話し掛けたんだろう。ロンドとセッテンシュは元々反りが合わなくてな」


「……ん? 邪神は二人なんですか?」

「四人で邪神なんだ。まぁ会ったら解るが、ゼツ以外は極度の人見知りだから、胡散臭いロンドみたいな奴とはまともに会話をしようとしないんだ」


「えー…会ってみたいです」

「じゃあ、聞いてみるよ」


 やったー。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 表世界に戻り、ミズキに報告しなきゃいけないので、ミズキの部屋に到着。


「ミズキさん、エーリン、大変です」

「アレスティアー…最近寂しいですー」

「大変そうに見えないけど、なに?」


「エーリン、後でね。ミズキさん、もっと強くならなければいけません。五倍くらい」

「…やだぁ」


「やだぁ…じゃありません。女子高生の状態で元の世界に帰るんですよね? 妥協するんですか?」

「だってぇ…」


 弱気だなぁ…

 ……あぁ、迷宮にキモくて強い魔物が増えてきたのか。

 手伝ってあげたいけれど、私も修行やらアテアちゃんのお世話があるし。

 帝国組もイベントがあると中々来られない。今は剣技大会かな。


「頑張ればある程度の力を持った状態で帰れますよ。ところで王女さんは元気ですか?」

「まぁ、元気と言えば元気かな。実は姫も迷宮に潜っていてさ…」


 ほうほう、王女も頑張っているんだな。

 …なんでも私とミズキの事を聞いたらしく、何を思ったのか強くなると言い出したらしい。

 面倒だから会わない方が良いか。


「ミズキさん、王女さんが来たので帰りますね」

「う、うん」

「アレスティアー、私も帰りますー」



 エーリンと一緒に扉をくぐる。何気に久し振りだなエーリンさんよ。


 部屋に戻ると、アテアちゃんを抱っこしたリアちゃんが待っていた。アテアちゃんは相変わらず寝ている…リアちゃんは深刻な顔をして私を見ていた。


「…おはようございます」

「アスきゅん…あのね…私、気付いたの…大変なの…」


 もじもじして…どうしたのさ。

 ……あぁ、聞けって?


「はい、どうしたんで…「ケモミミ枠が居ないの!」


 被せて来たな…どうしても言いたかったんだね。ケモミミ枠?

 ……私の繋がりの話かな。

 大きく分けて……ヘルちゃん達含め人間枠、フーさんクーちゃんのエルフ、エーリンの鬼族、リアちゃんの謎枠、アテアちゃんの女神に、ルゼルの天使……


「いや、特に必要…「必要よ!」


 最後まで喋らせてよ。

 で、どうしたいのさ。

 ……えー……行くのー?


「つまり、私に探して来いと…」


 ニンマリと笑うリアちゃん…こんな時にマイペースだなぁ。

 はいはい、解りましたよー。


「ケモミミ美少女きぼんぬ!」

 いや、私の希望じゃないんだから手伝ってよ。

 ケモミミ…ケモミミねぇ…

 あっ、バラスの娘に会おうと思っていたんだ。

 まぁケモミミ枠というか、ケモノ枠だけれど…耳があるから大丈夫か。

 はい、ラジャーナに送って下さいね。

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