友情が芽生えた?
今日はいつも通りの受付業務。
レティちゃんに会いに来るおじさん達の相手をしながら、事務作業。
今日はヘルちゃんのお姉様の誕生日だっけ。メモを渡したけれど、ちゃんと説明したかな。
やる事とやりたい事が多いから、割りと忙しい。
今もどんなアクセサリーを作ろうかスケッチしながら考えているし。バラスの所にいつ行こうだとか、キリエの記憶、地形図の確認、新規開拓、リックの奥義、ルルの槍技、新しい魔法や技、商品開発、パンケーキを食べる、食べ歩き、グレートモス探し、みんなとデート。……ざっとあげるだけでも結構ある。
傀儡人形を使えば良いんだけれど、仕事だとボロが出るし…学校だとフラムちゃんとミーレイちゃんが猛反対する。
だから傀儡人形の使い道が、今のところ私自身のマッサージだけという……
「おはようございます」
「おはようレティちゃん、今日のレジンさんの予定を教えて」
「はい、午前は訓練場で指導。午後は騎士学校で打ち合わせと、授業見学。終わり次第そのまま退勤です」
「あー、そっかぁ。ありがとう!」
最近地味アスティの出番が無い。
騎士団ではレティで居る時が大半……詰所の奥で作業している時もレティ状態。周りの希望によるものだと推測している。まぁ、地味より癒しだよね。私でもそうするし。
だから地味じゃない男モードで活動しても良いんじゃないかと思い始めている。元々男の振りをする為に地味眼鏡をしている訳だし……男モードに切り替えられるのであれば、地味じゃなくても良い筈…だよね。
アスティかアレスが兄で、レティが妹。これがハッキリとしていれば良い訳で…学校でも眼鏡を外せる?
地味な眼鏡野郎が嫌という訳ではないけれど、自己分析をすると…現在私は思春期。可愛いく見られたい、格好良く見られたいと思っているんだ。ちょっとだけ。
それにある程度の強さも手にした。人脈も手にした。
でも…外すタイミングが解らない。
普段は出来るだけ外そうとは思う。
騎士団ではまだ良いか。
皇子が来る可能性もあるし。
学校ではどうか……顔の差が激しいからなぁ……クラス以外で一回外してみようか。
反応次第で考えよう。
ちょっと楽しみ。
「レティさん! 今日も良い天気ですね!」
「曇天を良い天気と言うのであれば、良い天気ですね」
太陽さんが出たら言う台詞だよ、ダグラス君。
今日はどうしたのさ。
「あの…演劇を観に行きませんか! 続編が公開されるんですよ!」
「続編…王女のアレですか?」
「はい!」
続編が出たのか……内容は気になるな。あれで完結なのに、どう尾ヒレを付けるのか……行くなら一人もしくは私の正体を知っている人が望ましいんだ。
「恐らくお友達と行きます。申し訳ありません」
「あっ、いや、大丈夫、です、よ」
泣くな泣くな。君はモテるだろうに……
女子友達と行ってくれ。
誰か来た、おっ? 第二皇子さんいらっしゃい。
「レティ、ルーデの事で……」
「……事で?」
事で何さ。泣きそうなダグラス君を見てちょっと引いているのかい? あまり人に聞かれたく無い事なら詰所に来なければ良いのに。今日はお姉様の誕生日だろ、君はここで何をしている。
あっ、モタモタしているからまた誰か来ちゃったじゃん。
「失礼します……えっ……」
「あらジードさん、お久しぶりですね」
ジードさんや、ベストなタイミングで来たね。
今は帝都の騎士学校に通っているんだっけ?
視線は第二皇子…そして私を見て何かを伝えようとしている。
あーなるほど…皇子には私が元王女だと解っているのか問いたいのだね。
答えられないから、会話から察してくれ。
「「「……」」」
男三人の視線が交差する。
……わくわく。
……
……いや、誰か喋ろうよ。気不味いよ。
……何故か険悪な雰囲気だけれど、第二皇子がいるから下手な発言が出来ないのか。世知辛いのう。
「あの、みなさん。用事が無いのでしたら出て行ってくれませんか? 仕事の邪魔です」
「「「……」」」
ほんと邪魔。受付に三人並ぶと視界が埋まるんだよ。先に出た奴が負けルールなんて無いから早く行ってよ。暇なの? しっし。
ほらっ、またまた誰か来たじゃん。私はおじさんの人気者だから長居されると困るんだよ。
「レティちゅわん! あの手作りクッキー感動したよ!」
「ふふっ、騎士団長さんのお口に合って良かったです」
あー…騎士団長さんも登場。凄く狭い。熱い。湿度が一気に高くなった。このまま居られると困るなぁ……あっ、そうだ。
「騎士団長さん、この三人が騎士団長さんの熱いご指導を受けたいみたいですよ」
「「「えっ…」」」
「おー! そうなのか! それなら直接言ってくれたら良かったのに!」
「ふふっ、そうですね」
「よぉし! じゃあ行くぞお前ら!」
「えっ…嘘だろ…」
「レ、レティさん…」
「まじか…」
騎士団長さんが三人を連行していった。
ふっ、仕事の邪魔をするからいけないのだよ。
頑張ってくれたまえ。
「アスティちゃん…悪い女ね」
いやいや、後で笑っていたミリアさんも悪い女だよ。
そういえばジードは何しに来たんだっけ。
まぁ、用事があるならまた来るから良いか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ちょっと訓練場を覗いてみよう。
さぞ暑苦しい訓練をしているのかな。
……おー、やっているなぁ。
騎士団長相手に男三人が剣を振るっている。
男三人は疲弊しているけれど、騎士団長は余裕の表情…
騎士団長は両手に剣の二剣持ちかぁ…格好良いなぁ。
二剣持ちって相当難しい。見よう見真似だと逆に弱くなるし、相当な訓練が必要。私は光速剣があるから必要無いけれど…格好良いなぁ。
……なんだろう…男三人が少しずつ連携し始めた。友情が芽生えたのかな? だとしたら私は良い事をした訳か。
あっ、やっぱり負けた。残念だったね。
「お疲れ様です。騎士団長さん、二剣持ち格好良いですね」
「レティちゅわん! ありがとう!」
「まだ訓練するのですか?」
「ああ! 限界を超えてこそ訓練だからね!」
果実水をどうぞ。流石に手ぶらで様子を見に来るなんてしない…女子力向上中なので。
タオルもどうぞ。
…ダグラス君、タオルの匂いを嗅いでも前に使ったのは多分おっさんだよ。
皇子よ、礼を言え礼を。持ってきて当然みたいな顔をするな。
ジード…微妙な顔をしないでよ。私だってこれくらいするさ。
訓練した後なのか、険悪な雰囲気だったのが今では晴れやかな雰囲気。
……まだ訓練するなら、混ざろうかな。
「騎士団長さん、私も混ざって良いですか?」
「…くくっ、良いよ。思う存分やっちゃって」
悪い顔してんな。
まぁ、ヘルちゃんやフラムちゃんが女性の地位向上の為に頑張っているから、私もそれに習って頑張ろう。
今日はズボンだし。
「じゃあ、みなさん…掛かって来て下さい」
収納からグンザレスさんお手製、私専用木剣を取り出す。
ダグラス君は困惑している。私が闘える事を知らないんだね。
ジードは真剣な表情に変わった。私と闘っているからリベンジかな。
皇子は…
「ふっ、掛かって来いだと? 片目で闘える訳がないだろう」
…鼻で笑いおって。男の方が強いと思っているのかい?
正直俺様系統って恋愛小説だとキャーキャー言えるけれど、実際会ってみると何だコイツって思ってしまう。
壁ドンとかされたら本気で殴るよ。うーむ…皇子と話す時はついつい思考が逸れるな。
「ふふっ、言っておきますが…私は、強いですよ」
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