久しぶりに働く気がする。
あの後は魔法の勉強中だったアーリィちゃんと家庭教師のチロルちゃんに挨拶して終わり。
いつもの通り、ご飯を食べていって攻撃は回避。ご飯って育ちが出るから…また探られるって思うと…ね。
次の日はお花屋さんで働く。
久しぶりに働く気がするけれど、いつも空き時間に働いている。
「いらっしゃいませー」
「あらアスティちゃん、目の調子はどう?」
「順調ですよ。これは鉄貨二枚ですねー」
噂好きのおば様は、早速私の眼帯を周りに広めていた。
私の情報って話題になりやすいから…近くのベンチで私を凝視しているシエラの事も聞きたそうにしている。
「あぁ…アスティさまぁ…可愛い…可愛い過ぎる…」
シエラ…今だけだよ。
私に関わるとみんな忙しくなるんだから。
なんだろう…シエラが居るお蔭で少年達が寄って来ない。
よくやった!
褒美に白いお花を髪に挿してやろう。
「うん、可愛い」
「はぅっ! 幸せぇ!」
……今、リアちゃんが一瞬現れてシエラの写真を撮って消えていった気がする。
幸せそうな顔をしていたから良い瞬間が撮れたね。
美少女アルバム第二弾の為に奔走しているのかな?
一応美少女アルバム第一弾は完成して、発売した。
パンパンの店員さん達が頑張っている姿を撮影。
私、ムルムー、ヘルちゃんは諸事情により写っていないけれど、試しに作った千部は一時間で完売した。
お値段は金貨一枚…有名人の写真集は銀貨五枚と考えたら高めかな。
それでもパンパンの店員さん達はその界隈で絶大な人気を誇るから、増版しても売り切れた。
凄いね…きっと出版者のムルムーは私より稼ぐようになるんだよ…もう私が雇っている意味ある?
まぁ…美少女について考えていたのは、目の前に美少女が居るからで…
「アスティ、私に似合うお花を選んでちょうだい」
ヘルちゃんが来店。
金髪ツインテールを揺らしながら、少し不機嫌な様子で私を見詰める。首から下げた紐付きのガマ口が、初めてのおつかいみたいで私のキュンキュンポイントを刺激している。
「ヘルちゃん…可愛い」
「ふんっ、言葉を返すわ」
そっか、シエラが居るから不機嫌なのか。
剣技大会のライバルだもんね。
色々あってこうなりました。
シエラは私とヘルちゃんが並んでいる事に感動している…無視して良いからね。
「ヘルちゃんにはねぇ…これなんてどうかな? 銅貨二枚で少し高いけれど…」
「綺麗な赤ね。茎まで赤い…なんていうお花?」
「
「…素敵ね。貰うわ。あと…お姉様に花を贈りたいの。もうすぐ誕生日だから」
お姉様とな、是非お近付きに……ごめん睨まないで。
お姉様は私達より二つ上の十五歳。
ヘルちゃんは優しいお姉様が大好きだから、よく話に聞く。
誕生日は二日後かぁ…
第一皇女さんだから、高貴な華が良いとは思うんだけれど…どんな人か会った事ないし。
恐らく帝国美人だから赤い花が似合う。
…でも私の経験談からすると、立場上お花なんて見慣れているもんなぁ。
「赤い花が良いとは思うんだけれど…正直普段から見慣れているよね。特別感があるものか……」
「お金はあるから。アスティと一緒に選びたいの」
パンパンで働いたお金で買ってあげたいとか…可愛い過ぎる。
特別感…ブルークイーンとか、帝都で見ない花の方が良いか。
「よし、じゃあ探しに行こう」
「探しに?」
「うん、ラジャーナに行って探すの。良い草原があるから、そこで見付けよう! なんとか頑張れば日帰り出来るから!」
「私の為に……ありがと」
そう、ラジャーナの奥。
草原はまだ見ぬ花がある筈。
帰りは送ってくれる優しい方が居るから、安心だよ。
明日の早朝にお迎え行くね。
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