深淵

 

 そもそも深淵とは何か。簡単に言うと物事の表と裏…裏の方。

 この世界とは違う裏の世界を指す。


 人や魔物の深淵を覗く場合は、記憶や本質…潜在能力、何者であるかを視られる。多分頑張れば家系図も視られる。


 魔法の場合…深淵魔法とは、リアちゃん曰く主に邪神族が使う魔法。

 裏の世界から現象を呼び出し使役する。

 アビスフレイムの場合は、裏世界の炎を召喚して操るって事かな。


 この世界の魔法は、この世界で可能な範囲の現象まで…だから別の世界からの現象を引っ張ってくる深淵魔法は燃費が悪い。


「――アビスコールド」

 ――ピキバキピキ

 オーガが黒い氷漬けに。

 これで深淵魔法を十発撃った。


「……ふぅ。疲れた」


 右目を酷使するから、右頭痛と右肩こりが私の敵。

 …そういえばミーレイちゃんは肩こりが悩み……私も言ってみたいな、『おっぱいが大きいからって良い事ばかりじゃないのよ』…それは有るから言える事だよ。

 私は下着屋さんに堂々と入れないんだ。

 隅っこに並んでいるスポブラコーナーにトボトボ行く気持ちなんて解らないよね。

 エロい下着が似合う女になりたいよ。


「……」


 岩場を抜けた荒野の入口で、魔物が来るのを待つ。

 ここは前にデスジャイヂ・ギガンテスに遭遇した場所。

 ボコボコの地面…少しだけ闘いの跡が残っている。


 ギリギリだったなぁ…


 ……遠くから向かってくる何かを見詰めながら、ミズキから視た超級魔法の事を考える。

 シャイニングロード・ペガサスは、制御しきれない程の光魔法に、光の道を走らせるという情報だけを刻み込んだ魔法。

 もっと制御力が上がればペガサスに乗る事だって出来る。


 単純な情報だからこそ穴があった。アビスフレイムで燃え尽きるという情報を刻めた。

 私が潜在能力を底上げさせてあげれば、多分ミズキはもっと強くなる。…まぁ…チューしなきゃいけないけれど……保留で。


『――ガァァアアア!』

 目の前には、デスクリーチャーオーク。

 ランクはA+。

 主食はオーガ。

 緑色にくすんだ大きな豚さん。


 大木のような槍を持ち、踏み込みで地面が沈む程の力強さ。

 大きく振りかぶって槍を叩き付けてきた。


 ――ドゴンッ!

 大きな衝撃に地面が抉れる。


 後退しながら魔眼を解放。


「深淵の瞳」


 ビクンッと豚さんの身体が跳ね、沈黙。

 精神を攻撃してみたけれど…結構凶悪だなぁ…

 オーク種の思考は単純…食べたい殺りたい犯したいだから、精神攻撃に弱い。


 スパンッと首を跳ねて、魔石を取り出し魔力を取り込む。

 ……ん? 魔力の取り込む量が増えている。

 ズキズキしている右目が落ち着いてきた……高ランク魔石を使えば副作用も軽減するのかな。


 だとしたら…Sランクを倒し続ける事が出来る。

 複数の相手も出来る……

 オーガで稼ぐよりも遥かに効率が良いな。

 青トカゲさんは、ブルーオーブが集まるのを待つ時間があるから何回も倒せないし。


 次回から、一人の時は荒野で修行だな。

 荒野はAランク以上が蔓延る激戦区だから。


 確か荒野を抜けた先に草原が広がり、もっと奥には鬱蒼としたジャングル。

 白銀獅子は草原に居るらしい。


 今日と明日は高ランクの魔物を倒していこう。

 明日の夕方はヘルちゃんが家に来るし…いつ白銀獅子に挑戦しようかな。あっ、どんな魔物か調べてからだ。

 皇城にある書庫に魔物図鑑とかあれば見たいんだけれど…ヘルちゃんに聞いてみよ。


『――キシャァァア!』


 デスグランドバイパー。ランクA。

 大きな蛇さん。


「深淵魔法・アビスコールド」


 ピキバキピキ――爬虫類は氷に弱いから、一瞬で氷漬け。

 ……こんなに簡単で良いのかな?

 魔石を取り出して魔力を吸収すると、やっぱり右目のズキズキが引いてくる。

 Aランク以上の魔石なら右目が回復する……贅沢な右目だな。


 深淵ねぇ……私の深淵を覗けるのなら楽しそうだけれど。

 ……鏡があれば解るかな。


 もう少し慣れたら私の深淵を覗いてみよう。


 御先祖様に会えるかもしれないから。 


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