ブルーオーブの青トカゲ。
青トカゲ…縦に繋がっているブルーオーブは一体、一メートル。十体だから全長十メートルの大きさ。
うーむ…魔法攻撃主体なのに、爪とか口とか要らないんじゃない?
目は無いけど…私を見据えているのは解る。
ブルーオーブの集合体。
魔法体の魔物は、本当に不思議な生態だ。
本来、魔法体の魔物は臆病者。
こうやって、戦うよりも逃げるを選択する筈。
なら、今は…こうやって力を合わせて戦う程の価値がある相手。
…私の魔力…か。
ごちそう…デスジャイヂ・ギガンテスも言っていた。
私は、魔物にとって最高のご飯なのかもしれない。
「…望む所。むしろ、その方が夢に近付く」
魔物をわざわざ探さなくて良い。
…でも一人の時だけ出くわすのはちょっとね…
「先ずは試しに__ソルレーザー!」
バシュンッ!__
頭目掛けて光の柱を落とす。
青トカゲの頭が呑み込まれる。
…光が晴れたら頭は消えていた。
「…再生スピードは、早いか」
ニョキニョキ頭が生えて来る。
…一気に吹き飛ばさないと駄目か。
大きいソルレーザーを放つには溜めが必要。
けど、溜めの時間はくれそうに無い。
指先を青トカゲの頭上に向けて魔力の起点を作っても、ウォーターボールを飛ばされて起点が消される。
周囲は水浸しだから、ちょっと不利かな。
「そんなら!人並みのファイヤーボール!」
ボンッ__ジュゥ…
まぁそうだよね。
平均以下のファイヤーボールを放つ私が悪い。
『…サブ…マージョン…』
「__っ!うわ…喋りおった…」
青トカゲの魔力が上がっていく。
ザーー!__
青トカゲを中心に水が溢れ出して来た。
これは…更に水浸しにして有利な状況を作っているのか。
…膝下まで水に浸かっている。
ちべたい…いや違うそうじゃなくて、機動力が悪くなる。
「__ソルレーザー!」
バシュンッ!__
水の出所目掛けて青トカゲもろとも攻撃。
水は止まって、少しずつ水位は低くなっていく。
青トカゲが口を開けて水弾を発射。
重い足を動かして回避。
バシュッバシュッバシュッバコッ!__
「__ぐっ…」
_私の肩に被弾__痛ーい!肩が削られている!
やばいやばい!ドバドバ血が流れている!
「_ハイヒール!」
水弾を躱しながら回復。
痛みと回復と迫り来る水弾で、集中力が切れそうだ。
何とか回復したけど、どうするどうする…
剣の攻撃は返り討ちに会う。
仕方無い…連続でソルレーザーを撃ち込むか。
「__ソルレーザー!ソルレーザー!ソルレーザー!ソルレーザー!ソルレーザー!ソルレーザー!」
バシュンッ!バシュンッ!バシュンッ!__
青トカゲ目掛けて光の柱を連続で撃ち込む。
吹き飛ばしては再生を繰り返している。
尚も追撃。ソルレーザーを連続で撃ち込む。
「__ソルレーザー!…はぁ…はぁ…少しずつ身体が小さくなっている…もう少しだ」
迫り来る水弾を躱しながら連続でソルレーザーを撃ちまくる。
あと四メートル…二メートル…これで最後か!
「__ソルレーザー!」
バシュンッ!__
小さくなった青トカゲに止めの一撃。
…なんとか、倒せたかな…
周囲を見渡して、バシャバシャと歩きながら青トカゲが居た場所まで歩く。
「…ん?あれ?無いよ?なんで?」
…魔石が無い。
…おかしい。
魔石が無い魔物なんて居ない筈なのに。
この違和感はなんだろう…
…水がまだ、完全に引いていない…
生きている?
ならどこに…
__水の中か!まずい!
ザバァ!__
「__のぉぉぉーーー!」
一瞬見えた青トカゲの大きな口。
私は…青トカゲに呑み込まれた。
…狭い水に閉じ込められた感覚。
魔力が吸われる…
息が、出来ない。
しかも…中で回っている…洗濯の魔導具の中に入ったらこんな感じなのかぁ…出たら綺麗になるかなぁ…と思考が逸れるけれど…そんな事を考えている場合じゃ無い。
魔力を吸われながら…ぐるぐる回る。気持ち悪いな。
どないしよう…後二分くらいで死ぬ…
「……」
青トカゲはご飯中で動かない…ご飯は私。
美味しいかい?
…いや、そうじゃなくて…
このまま食べられるくらいなら。
…足掻いてみせよう…
手を伸ばして、指を上に。
魔力の起点なんて解らないから、とりあえず上。
自分の中に魔力を溜めて…
狙うは…私!
一気に放つ!
「__ぶぉぶぶぇぇばぁ!(ソルレーザー!)」
キイィィィン!__
光の柱が私を押し出す。
バシャン!__出られた!
空中に投げ出され、青い空が目に入る。
…先ずは後退しなきゃ。
尻で着地。痛い。
青トカゲから距離を取り、一気に空気を取り込んだ。
「はぁ…はぁ…危なかった」
呼吸を安定させ、脱力感を感じながら青トカゲを見据える。
少し魔力を取られ過ぎたかな…
とりあえず水の中は危険と判断。
飛んでくる水弾を躱しながら岩に登る。
バシュッバシュッバシュッ__
水弾の勢いが強い…怒っているのかな。
まぁ、そりゃそうか。
大人しく食べられてくれない、活きの良い私ですから。
ピチピチですよ?
「さっきのソルレーザーで、何か…掴んだ気がする」
ソルレーザーは、上から下に光の柱を落とす魔法。
対象の頭上に魔力の起点を作って、撃つ訳だけど…
さっき、私は空中に投げ出された。
それってつまり、下から上に発射されたって事。
無元流は…新たな閃きで技を変化させる事で、真価を発揮する剣技。
なら、魔法だって一緒。
下から上に発射するのは、意識して直ぐ出来るものじゃない。
けど…魔力の起点をウォーターボールで消されるなら…その起点を動かせば良い。
「__ライト!」
ライトの光を十個。青トカゲの周囲に付ける。
青トカゲがライトを消そうとしているけど、魔力を操作して躱す。
その間に、ライトの一つをソルレーザーの起点にする。
…少し難しいけれど、ライトは私がずっと使っていた魔法。
ぶっつけ本番でも、出来ない事は無い。
…移動するライトを起点に、魔力を集中していく。
九個のダミーがあるから簡単には消されない。
あと少し……来た!来た来た来た!
「…青トカゲさん。ありがとうございました。あなたのお蔭で、私は階段を一つ上がる事が出来ました」
ライトを操作。
ダミーを青トカゲの頭上に配置。
本物は後方。
「__ソルレーザー・ラン!」
キイィィィン!__
全力のソルレーザー。
太い光の柱が発生。
青トカゲの後ろから
ドドドド!__
移動するソルレーザー。
動きが遅い青トカゲは躱す事が出来ずに後ろから消えていく。
やがて、頭の部分まで到達。
念には念を…ソルレーザーを走らせ、往復したりぐるぐるさせる。
水は全て蒸発。
水蒸気すら吹き飛ばす。
そこで、私の魔力はほとんど空になった。
「はぁ…はぁ…ひぃ…ふぅ…やった」
光が晴れる。
水は干上がり、黒い岩石は溶けてドロドロしている。
ゆっくりと近づいて、ブルーオーブが居ないか確認。
…居ない。
勝った…疲れたぁ…
黒い岩石は白い光を放っている。
私のソルレーザーで変質したのかな。
その中心には、青白い魔石があった。
…大きいな。Sランク並みの大きさ。
…ブルーオーブの魔石みたいに青色だけど…白も混ざっている…んー?
とりあえず魔力を流してみよう。
ギュンッ__
「__うひゃっ!壁を越えたー!」
やったよ!魔力も回復した!
それに、水属性も強くなったかもしれない!
「__ウォーターボール!」
ポンッ_
手の平から、水の玉が出てきた。
やった…玉になった…立ちションから玉になった…
人並みのウォーターボールになったよ…
魔法体だから、素材は基本的に魔石しか出ない。
その分魔力が濃いから、割りと高い筈。
これは売って、収納腕輪の資金にしよう。
「ふぅー…今日も勝てたぁー。この場所、私のソルレーザーで休憩所になったな。ちょっと休憩して、ブルーオーブ狩りでもしようかな」
ソルレーザーのコツを掴んだ私は、合体したブルーオーブなんて怖くない。
その後、また青トカゲを倒せた。
…良い狩り場を発見出来たかも。
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