私は行き遅れを狙っている。

 風の日。学校へ行き、六年二組の教室へ。

 後ろの席に座っていると、前の方に座っている男の子達が盛り上がっている。


「今日居るかな?」

「先週は風と土の日だったからな」

「俺見れなかったんだよ。居たら教えて」


 誰か有名な人が居たのかな?

 帝都だから、有名人なんて沢山居る。

 騎士団の人とか、魔法士団の人とか、劇場の人とか……そういえば、王女のお芝居どうなったんだろ…

 フラムちゃんとなら行けるけど…なんか気不味いというか…

 王女と皇子の話なんて、空想の話なんだけどね。



「ようアレス。今日も地味だな」

「やぁティーダ君」


 今日も地味だなって言われるのが普通になっている。

 まぁ、私に取っては褒め言葉だけどね。


「アレスは見たか?」

「何を?」

「天使だよ。凄い綺麗な子が居るんだ」

「ふーん。何組?」


 凄い綺麗な子と聞いたら見に行きたい。

 お近づきになりたい。

 でもティーダ君が言うには、学年も組も謎らしい。


「フラムと一緒に歩いて居たらしい」

「フラムちゃんと?聞いてみようかな」


 フラムちゃんのお友達でしたか。

 それならお近づきになれそうですね。


 学活が終わり、ティーダ君と魔物学の教室へ。

 四組の方を見たけど、人の壁があるだけでフラムちゃんは見えなかった。



 魔物学の教室でも、天使の話題が聞こえる。

 気になるさー。


「アレスは剣術やらないのか?」

「やるけど、人気の無い流派だからね。

 帝国流剣術は出来ないし」


 学校で習うの剣術は、帝国流の剣、槍、斧術。

 興味が無いのが現状かな。


「まぁ帝都大会だと、上位に入るのが帝国流剣術ばかりだからなー」


 帝都大会、男子の部と女子の部で分かれている。

 一応学校、道場、騎士団から出場出来るけど、やるなら女子の部かなー。

 強くて可愛い子に会えるから。



 今日は魔物学で面白い事を聞いた。

 理論上…魔物を倒して、壁を超えるという事に限度は無いらしい。

 取り入れる魔力の量が、壁を超える度に少なくなるから、成長が頭打ちに感じる。


 それが本当なら、強さに限界は無いという事だ。

 私に取っては朗報だね。


 授業が終わり、一人になったので『聖域』へ行く。

 人の流れは把握している。私に死角は無い。


 ……


 ……


 地味眼鏡を外してピンクのワンピースを装着。

 二番『聖域』から出ると、誰も居ない。

 フラムちゃんや、何処ですか?


 とりあえず、一番と三番の『聖域』に行ってみよう。

 聖域間の距離って結構遠い。トコトコ歩いて一番を目指す。

 …みんな見てくるけど、今日の服似合わないかな?


「あの!何組なんですか!」


 ビクッ_男子よ…いきなり大声出さないで下さい…びっくりしたなぁ。

 何組って言われても…秘密じゃ駄目?


「…友達を…迎えに…来ただけです」


 苦しい言い訳。間違ってはいないよね。着替えてフラムちゃんを迎えに行くっていう…


 あっ、フラムちゃん発見。

 四組の前に居た。

 …今日は一段と友達多いね。30人くらいに囲まれて、フラムちゃん人気者。


「フラムちゃーん。迎えに来たよー」

「あっ、ごめん!通して!」


 ギュンッ!っていう擬音が適切かな…友達が全員こっち見た…ビビる…


 フラムちゃんが私の手を取って早歩き。

 友達も付いてくるけど、皆帰りかな?


「フラムちゃん。凄い綺麗な子と友達って聞いたけど、どんな子?」

「…えっ?」


 何言ってるの? っていう顔で見ないで。何? 私?

 ……なるほど。

 私が可愛くて可愛くて噂になっておると…ふむ。

 私この学校では可愛いのか。


「フラムちゃんと並んでも、釣り合いが取れるなら嬉しいよ」

「アスティちゃん…他には何も感想無いの?」

「うん。どうせ私は男の子と付き合えないし」

「そ、そうなの?」

「家柄が激しく邪魔してるからね」


 フラムちゃんには、良い所の家柄とは言ってある。

 絶賛家出中な私だけれど、守っている事はあるんですよ。


 男性との交際は成人まで出来ない。

 一応、元王女ですから…交際は出来ません。


 逆を言えば成人してしまえばこっちの物!


 婚約者も居ない行き遅れですからね!



「じゃ、じゃあ彼氏は作る気無いの?」

「成人すればなんとやら。18歳までは男性とお付き合いは出来ませんよー」

「そ、そっかぁ。じゃあ私もアスティちゃんに付き合うね!」


 それだと、フラムちゃんが行き遅れになるから駄目だよ。

 一般的には、女性は18歳で大体結婚する。

 20歳はまだ大丈夫。

 25歳超えると絶望的。


 貴族や王族は、20歳で結婚出来なければ行き遅れ。


 私はこれを狙ってる。



 あっ、でも子供は欲しいかも。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 フラムちゃんは道場へ行くかと思ったら、風の日は休む。

 私に合わせてくれた。


 という事で、着替えて二人でラジャーナへ。



「フラムちゃん。ラジャーナは辺境だから、まだ開拓していない場所があるの」

「その開拓していない場所を探すの?」

「そう!一攫千金!最低でも鉄の鉱脈が欲しい!」


 周辺の地図を眺めながら、考えるけど鉱脈がありそうな場所は結構奥…フラムちゃんが危険。今度一人で来よう。


 早速今日は諦めた。

 地道にオーガを狩ろう。


 いつもの通り、岩場方向へ。


 衛兵さんから、オーガの素材だけを納品する新人冒険者が居るらしい。

 多分私達が放置したオーガですね。

 大地に還るまで一時間くらい掛かるから、おこぼれを狙ったんだろう。


 光の魔力を強く込めれば1分で大地に還る。

 今日はこれで行こう。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「_首狩り!」


 フラムちゃんが身体を沈め、

 全身のバネを使って高速移動。

 オーガの首を跳ばす。


「出来たぁ!アスティちゃん!出来たよぉ!」


 フラムちゃんが飛び上がって喜びを表現。

 ポヨンポヨンとおっぱいが揺れている。


 大分首狩りが上手くなった。

 やっぱり実践あるのみだね。


 フラムちゃんは10体くらい倒してもう一回壁を超え、もう一対一なら楽勝。

 倒したオーガから魔石を取ったら、直ぐに光の魔力を当てる。



 遠目に冒険者が見える。

 おこぼれを狙った奴らかな。

 あげないよ。

 自分の努力で勝ち取ってくれ。


 正直おこぼれを狙うのは良いけど、オーガが徘徊しているから危ないよ。

 ほら、遭遇して逃げてる。

 言わんこっちゃない。


「アスティちゃんは冒険者助けないの?」


「余程暇じゃない限り、助けないかな。自己責任だし。助けたら助けたで、いちゃもん付けられるんだ。

 俺たちが狙ってたオーガだから寄越せってね」


「なんか嫌だね。恩を仇で返すなんて」


 全員がそうじゃ無いのは解ってる。

 良い人だったら大歓迎。

 良い人でも、悪い人が周りに居たら駄目。


 線引きはしっかりしないと。


 人付き合いは大事だから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る