学校に行きました。やっぱり一番の問題はアレですよね。

 

「おはようアスティちゃん。今日から学校ねぇ!」


「はい!」


 今日は学校に行く日。

 朝早く準備をして、店長と朝のティータイム。化粧でもしたら?と言われたけれど、地味眼鏡をするからしません。

 一応学校の制服はあるけど、式典の時だけなので着てはいない。

 地味な私服で登校する……可愛い制服着たいなぁ…



 学校へは、東区の転移ゲートから西区の転移ゲートへ転移し、そこから学校まで行く馬車に乗るか、歩きで行く。登校時間は一時間掛からないくらいかな。


 学校ではアレスという名前。フラムちゃんに迷惑が掛からない様に一緒には登校しない。その内一緒に通いたいな。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 転移ゲートからのんびり歩いて学校に到着。受付へ行き、身分証を提示。教材を受けとる。

 こういう時は収納があるから便利だなぁ。忘れ物が無いから。収納自体を忘れたら駄目だけど…因みに収納は布を巻いて隠している。見た目は高価だから。

 一応誤魔化す用のカバンは持っている。カバンの中で収納から出せば完璧。


 そこから教員室へ行く。


「おはようございます。本日からお世話になります。アレスです」


「おはようアレス君。少し時間があるから、ちょっとここで待っててね」


 学校では、最初に学活の時間…クラスで集まり連絡事項等を確認してから、生徒がそれぞれ各講義の場所へ行く仕組み。

 八時半に20分の学活があり、九時から講義が始まる。


 私のクラスは六年二組…一組じゃないのは初めてだ!


「アレス君は特事官なんだって?すごいねぇその年でスカウトされるなんて!」


「はい、お陰様で学校にも通わせて貰えるんで、感謝しています」


 教員は私の素性を知っている。まぁ当然だけど、生徒は知らないという形かな。


 時間が来たので、担当教員…ネスパー先生と共に六年二組へ。因みにクラスは10クラスで1クラス50人…帝都にしては少ない?いや、他の学校もあるからこのくらいかな。

 人数が増えたらクラスも増えるらしいけど、騎士学校や魔法学校の方が人数が多いのかな?


 クラスは成績によって変わる。

 成績優秀で週に五日学校に行く人は一組。後は成績によって分けられる。成績が一番悪いと10組。


 私は五日未満の週二日なので二組からスタート。

 フラムちゃんは何組かな?



 教室に到着。先にネスパー先生が入り、後で私が呼ばれた。


「みんな、今日から風、土の曜日に通うことになったアレス君だ。アレス君、挨拶を」


「はい。アレスと申します。風、土の曜日の週二日、主に魔物学と国語を受講します。宜しくお願いします」


 パチパチ_


 拍手で迎えられ、一番後ろの席に案内された。

 教室は長い机と椅子が並んで、自由に席を変えられる。

 決まった席が無いのは、曜日でクラスメイトが違うからかな。


 女子からは興味無さそうな視線。

 男子からは地味地味と呟かれている。


 …素晴らしい!早くも注目から外れた!地味眼鏡最高ですね!


 因みにフラムちゃんは居なかった…残念。



「アレス、俺ティーダってんだ。宜しく」


「あっ、よろしく」


 隣に座って来たティーダ君。金髪の男の子。話しやすそうな雰囲気で、彼も魔物学を学んでいるから一緒に講義へ行こうという…良かった、一人で行くのは心細かったから。


「アレスはどうして魔物学なんだ?」


「将来の為かな。魔物の生態とか解ると役に立つし」


「へぇー」


 ネスパー先生が連絡事項を告げていく。

 近々初等部の剣技大会があるらしい。優勝したら学校選抜に選ばれて、帝都大会に出れる。

 帝都大会は、他の学校の人と戦ったり、隣国の選抜者とも戦える。私は王女だったから出れなかったなぁ…

 初等部最後の思い出として、男子はほとんど参加するみたい。


 私は別にいいかな。帝都大会で、もし爺やが来ていたら一発でバレるし。可能性はゼロじゃないから。



「アレスは出ないのか?」


「出ないよ。私は地味に生きるから」


「充分地味だぞ。地味過ぎて、もう誰もアレスに注目していないくらいだから」


 素晴らしいじゃないか。憧れの地味な男爵、カーナリ・ジーミー君みたいになれるんだよ!ジーミー君、私だけは注目していたからね!


 学活の時間が終わり、ティーダ君と共に魔物学の講義に向かう。

 場所は少し離れているので、少し歩く。



 歩いていると、視界に赤い髪が映る。あっ、フラムちゃん発見。フラムちゃんの周囲には友達が…多いな。壁みたい。


「フラムちゃん」


「ん?…んー?アス…アレス君?」


 地味過ぎて解りにくいよね。フラムちゃんはまじまじと見詰めて来た。後ろに友達が居るからアスティって言っちゃ駄目だからね。


「そうだよ。フラムちゃんは何組?」


「私は四組。アレス君は最初だから二組かな?」


「うん。今日は魔物学で明日は国語だよ」


「ほんと!明日は私も国語だから一緒だね!またね!」


 ご機嫌で友達の輪に入っていくフラムちゃん。あの地味男は誰よという話をはぐらかしている。大変だな。



「な、なぁアレス…フラムと知り合いなのか?」


「うん。友達なんだ」


「へ、へぇー…友達…」


 何?ティーダ君はフラムちゃんを見ている。好きなのか?フラムちゃん可愛いからね。


「ティーダ君はフラムちゃんが好きなの?」


「ばっ!んな訳ねぇだろ!す、すす好きじゃねえよ」


 うん、好きなんだね。まぁ頑張れティーダ君。きっとライバルは多いよ。あの中でズバ抜けて可愛いからね。

 何?私はフラムちゃん大好きだけど、恋愛対象では無いよ。それを言ったら拗れるから言わないけど。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 そわそわしているティーダ君と共に、魔物学の教室に到着。中は教室と変わらない。

 後ろの席に座り、席を確保。それからぞろぞろ生徒が入ってくる。人数は40人くらい。

 授業では無く、講義。なので、講師の話を聞くのが主。成績を上げるには自分の努力が必要なので、無駄話をする生徒は少ない。


 やがて講師の人がやって来た。眠そうな男性でシガ先生。受付で渡された資料には、帝国の魔物研究所の職員さんが交代で来るらしい。



「アリー」「はい」

「ルーガ」「はい」

「ティーダ」「はいー」

「アレスは今日が初めてだな。宜しく」「はい、宜しくお願いします」


 出席は名前を呼ばれたら手を上げて返事。

 魔物学の教科書を開いて、講義が始まる。

 私は途中からだけど、内容は解る。

 王国の魔物学と似ている。同盟国だから当たり前だけど。



「なぁ、アレスは帝都の出身か?」


「いや、隣の国。帝都には最近来たんだ」


「へ、へぇー。フラムとは何処で知り合ったんだ?あっ、来たばかりって言うからどうやって友達作ったのかなぁって」


 講義中だから話し掛けないで欲しいんだけど…まぁ…好きな女の子と仲が良い男の事は気になるか。


「たまたま知り合ったんだよ。変な男に絡まれててさ、助けた時に友達になったんだ」


「そ、そうか…変な男って大丈夫だったのか?」


「うん。大丈夫だったよ」


 フラムちゃんはティーダ君を認識しているのかな?まぁ良い奴だったら、手助けしてやらんでもないけど。

 …もしカップルになったら私は独りになるな。うん、今は辞めておこう。



 講義の内容は知っている物だった。初等部の講義だから難しい事はやらないか。それに前に居た学校は結構レベルが高かったし。


 講義は前半、後半があって、一時間ずつの合計二時間。


 9時から二時間なので、終わったら11時。それから昼までは教室で自習や図書室に行ける。


 昼からの講義がある人も居るし、私は昼までで終わる予定。


 どうして昼までかと言うと…トイレ問題が深刻だから……やだよ男子トイレ入るの…絶対嫌だ。一番の問題だ。一応元王女ですから…流石に…ねぇ…


 …女子トイレに入るには、変装解除して女の子バージョンになってからじゃないと。

 どうやって女の子バージョンになるかだけど、髪を下ろして眼鏡を外すだけで何とかなると思いたい。

 あと、服装は地味アレスと同じでバレるかもだから、トイレで着替えて堂々と女の子で帰れば良い!

 これで決まり!


 後半の講義が終わり、学校初日は終了した。話せる人が居たのは救いだった…本当に。



「アレスは今日終わりか?」


「うん。後は帰るだけ。ティーダ君は?」


「俺は午後から剣術。じゃあまたなー」


 ティーダ君は二組の教室へ向かって行った。

 私はいつでも帰れる。


 でも…トイレに行きたい。


 仕方無い…早速トイレミッションか……成功させよう。


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