第3話 琥珀の間

 翌日、ロスサンチェスアコード事務所。

 「どうして私ついてきたんだろう」

 サニーはつぶやきながら車から出た。

 マイルズとチャド、ダスティはベラナと一緒に事務所に入った。

 二階の会議室に入るとヒラー捜査官、ガーランド、チャールズ、栗本、ジェスロ、横山、グロリアが顔を揃えていた。

 「進展があったのですか?」

 ダスティがたずねた。

 「我々FBIがチャドとマイルズを手伝いに借りたのはもちろんハッキングするためだ」

 ヒラー捜査官は口を開いた。

 「え?何を?」

 「クルップ社、飯綱開発社、レイス電設社は隕石に関心をよせていて政府関係者と一緒に砂漠入りしている。会社のパソコンにハッキングをしてほしい」

 ヒラーは資料を出した。

 「いいよ」

 うなづくチャド。

 「整備所の仕事の前はハッカーだった。産業スパイって奴」

 自慢げに言うマイルズ。

 「整備所の仕事の前はハッカーとシステム構築の仕事をしていた」

 チャドは笑みを浮かべる。

 「そして政府のコンピュータや各国政府のコンピュータに侵入して情報を盗んだ」

 ヒラーはしゃらっと言う。

 「もう二〇年前の話だよ。すっかり足を洗っている」

 チャドが真剣な顔になる。

 「だからこの三社にハッキングしてほしいんだ。あとでギャラの方は相談だ」

 ヒラーが言う。

 うなづくチャドとマイルズ。

 「なんで日本の企業が入っているんですか」

 サニーが質問した。

 「飯綱開発は表向きは半導体、鉄鋼関連の会社だが夜刀浦の飯綱製薬が前身の会社で社員は全員そこの出身でインスマスと同じような半漁人だ。社長は立花巌。駆逐艦「雪風」と融合するミュータントだ」

 ヒラーは資料を出した。

 「初耳だ」

 それを言ったのは栗本である。

 「雪風ってあの太平洋戦争の激戦でも生き残って戦後は台湾軍に払い下げられた軍艦ですよね」

 ダスティが思い出す。

 自分も図書館で雪風に関する本は読んだことがある。

 駆逐艦「雪風」は大戦中、損傷らしい損傷を追うことなく日本軍の作戦に参加。そのたびに生き残った。戦艦大和との沖縄特攻でも生き残って帰ってきた。それはミュータントだったからもあるが彼は邪神ハンターで武芸に秀でていたからかもしれない。その幸運艦がなんで半漁人たちが社員の会社の社長になっているのか不思議だ。

 「日本政府もこの会社はマークしているけど法律には違反することはしていない」

 栗本は腕を組んだ。

 「今の所だろ」

 しれっと言うジェスロ。

 「クルップ社は通信関係、バイオ関連会社でレイス電設はエネルギー、携帯電話関係の会社だね」

 チャドが指摘する。

 「飯綱開発に協力企業はあまりいない。日本の経団連も警戒していて紹介もしない。だけどこの数社がいる」

 「質屋と骨董屋、貿易関係で社長は零戦のミュータントと夜間戦闘機、一式陸攻のミュータントだ」

 ヒラーは写真を出した。

 「戦友つながりか」

 ラズリーが言う。

 「戦友つながりで半漁人が社員がなんで集まったのか興味あるね。なにをやっているか私達は調査を開始する」

 ラズリーとチャールズはうなづく。

 「僕とチャドはハッキングするよ。でも琥珀の間とのつながりってなんだろう?」

 マイルズが首をかしげた。

 「クルップ社のクレメン社長や立花たちも琥珀の間に興味を持っている」

 ヒラーは腕を組んだ。

 「琥珀の間は戦後アインシュタイン博士がその手がかりを隠したからだろうね」

 それを言ったのはガーランドである。

 「ジェスロ、スパイクの護衛つきでアメリカに戻った博士は”地図にない町の教会”に隠した。ワシも立ち会ったんだ」

 どこか遠い目をするガーランド。

 「初耳ですが」

 ジェスロが驚く。

 「でもそれは時空コンパスでしか反応しない。時間関係、時空関係のものはそのコンパスに反応する。たぶん落下隕石もコンパスに反応するだろうね」

 ガーランドは五つの琥珀玉を机に出すとコンパスをかざす。

 琥珀玉はコンパスに磁石のようにくっつく。

 「すごい・・・」

 絶句するベラナたち。

 「地図にない町ってノースロップジャクソンフォードですか?」

 ひらめくダスティ。

 「え?」

 「あの町はグーグルのストリートビューからも抜けているしグーグル社も通りすぎる程無名な町だよ。地名は出るけどストリートビューはでない。それに町はずれに壊れかけた教会が半分埋まってるよ」

 ダスティは端末タブレットを出して地図を出した。地図が出てくるが目印は農場である。

 「そこの教会へそのコンパスを持って行こうよ」

 ダスティが地図を指さして言う。

 「もちろん我々も同行する」

 ヒラーとベラナはうなづく。

 「時空コンパスは特別に貸そう」

 ガーランドはコンパスをダスティに渡す。

 「チャド、マイルズ、ラズリー、チャールズはFBI本部の私の同僚と一緒にハッキングして調査するんだ」

 ヒラーは名刺を渡した。

 ラズリーは名刺を受け取る。

 四人は退室した。

 「私と横山は周辺を警備する」

 「我々も協力する」

 名乗り出るジェスロと栗本。

 グロリア、横山、ジェスロ、栗本は出て行った。

 「ダスティ、サニー。ベラナ大尉、ヒラー捜査官。行こうか」

 ガーランドは笑みを浮かべた。


 ノースロップジャクソンフォード郊外にある古い教会の広場に輸送ヘリコプターが着陸した。機内からガーランドたち五人出ている。

五人を降ろすと輸送ヘリは飛び去る。

 ダスティは時空コンパスをバックから出して半分埋もれている教会に近づく。教会はだいぶ使われておらず管理会社もなく荒れるまま放置されていた。

 半壊した壁から入るダスティ。

 天井のステンドグラスはなくなり二階のハシゴや階段は壊れたままだ。

 コンパスの針はしばらくクルクル回ったあとある物を指さした。

 「壷?」

 ヒラーとベラナ、サニーが口をそろえた。

 おもむろに壷を拾うダスティ。

 半分砂に埋もれていた花瓶台をつかんだ。蓋がはずれてレジスターのようなものが出てきた。

 「これはエニグマ暗号機だ」

 あっと声を上げるベラナ。

 黙ったままのガーランド。

 「これは修理しないと無理だね。チャドとマイルズに頼むしかないな」

 ヒラーは錆びついた機器の状態を確認しながら言う。

 壷をひっくり返すダスティ。

 壷の底が外れて砂地に落ちた。壷の底にあった円板には火の玉やルービックキューブと数字が書かれていた。

 「この火の玉って隕石じゃない?」

 サニーが指摘する。

 「さすが天才博士だ」

 感心するヒラーとベラナ。

 「すごいわ。インディ・ジョーンズみたい」

 サニーが破顔する。

 「ダスティ。君は合格だ。そのコンパスはGPSの代わりにもなる。迷ったら羅針盤を使うんだ」

 肩をたたくガーランド。

 深くうなづくダスティ。

 「次はどこへ行くの?」

 サニーが聞いた。

 「この火の玉。隕石だよ」

 ダスティはバックに円板とコンパスをしまうと教会の外に出た。

 教会から出てくるベラナたち。

 ベラナは振り向きざまにナイフを投げた。

 ナイフは枯れた大木に刺さる。そこから浮き出るように同化していたミュータントが落ちた。

 山の向こうからヘリコプターが接近する。

 「もう呼んだの?」

 ダスティが聞いた。

 「おかしい。そんなハズがない」

 片腕をバルカン砲に変形させるベラナ。

 銃を抜くヒラー。

 「逃げろ!!」

 ベラナは戦闘機に変身した。

 逃げ出すサニーたち。

 ヘリコプターから飛び出す人影。着地するとミグ29やスホーイ27といった戦闘機に変身した。

 飛び去る戦闘ヘリ。

 機内から機関銃を持った男が身を乗り出す。

 機関銃のかわいた銃声が響く。

 ダスティはバックをサニーに渡すと農薬散布飛行機に変身した。彼はそこにあった岩を拾うと舞い上がった。

 ダスティは六対の鎖を出して戦闘ヘリの機体にかじりつき持っていた岩でローター基部をたたきこわした。

 ダスティが離れると戦闘ヘリは黒煙を出して墜落した。

 「ベラナを助けないと」

 ダスティは着地すると機首を向けた。

 「無理だ。相手はミグとスホーイだ」

 ヒラーが制止する。

 「そうだよ。その方がいいよ」

 ふいに声が響いて振り向くと見覚えのあるミグ29がいた。チャックである。

 「チャック。刑務所じゃないんだ」

 威嚇音を出すダスティ。

 「保釈金を払ったんだ」

 チャックは機体から六対の鎖を出した。

 飛翔音が聞こえて教会の方角で爆発音が響いた。

 砂地にたたきつけられる三機のミグ、スホーイ戦闘機。

 舞い降りてくるF22とF15の二機。

 チャックはダスティに飛びかかり、機体背部に飛び乗り二対の鎖を主翼に巻きつけた。

 各坐するダスティ。

 機体背部を鉤爪で何度も引っかくチャック。

 くぐくもった声を上げもがくダスティ。

 いくら強く何度も引っかかれても傷がつかずゴムのようにへっこむだけ。でも切り裂かれる激痛は嫌でもわかる。

 「ショックウエーブ」

 ガーランドは呪文を唱えた。持っていた杖を向けた。力ある言葉に応えて衝撃波によりチャックは吹き飛ばされ地面にたたきつけられた。

 息を切らすダスティ。

 駆けつけるサニー。

 ダスティはサニーの前に出た。

 チャックが変身するミグからバルカン砲が連射される。

 「ぐはっ!!」

 六対の鎖で機体を支えよろけるダスティ。彼はサニーを突き飛ばす。

 チャックは鎖の先端を槍に変えて六対の槍つき鎖で交互に突き刺した。

 「おまえのコアをえぐってやる!!」

 ダスティはその六対の鎖をつかんだ。

 しかし自分には武器はない。でもなんとかなる。

 「やれるものならやってみろ!!ガキが」

 チャックは六対の鎖を引き抜くと同時にダスティが動いた。何度も交差して二機は地面に着地。

 くぐくもった声を上げるダスティ。

 彼の機体は傷だらけだった。

 「おいクソガキ。もっと怒ってみろよ」

 チャックは挑発した。

 「子供を挑発してどうする?まず刑務所からは出られないぞ」

 ヒラーは銃を抜いて何度も撃った。

 しかしチャックの機体に銃弾は弾かれる。

 「この惑星は俺達マシンミュータントが支配するんだよ」

 チャックは笑う。

 「おまえのもの物じゃないぞ」

 反論するダスティ。

 「戦闘本能が抑えられないんだよ。戦闘機や戦闘車両、軍艦のミュータントは常に戦場を求めるんだ。おまえもわかるようになる。戦闘本能は民間機にもあるんだ」

 「僕は戦いたくない」

 「戦争になれば民間機や客船のミュータントも戦場に狩りだされる。あの二度の大戦がそうじゃないか。おまえも戦うようになれば戦いの味が忘れられなくなる。戦いの味を教えてやっていたのに拒否するんだ」

 自慢げに言うチャック。

 「僕はおまえとちがう。僕を抑えつけて喜んでいた。その度にベラナや同僚に吹き飛ばされていた。それに僕だけじゃなく他のマシンミュータントの子供もいじめていた。弱い者イジメするなよ」

 ビシッと鎖で指さすダスティ。

 「おいジジイ。攻撃魔術を使ってみろよ」

 チャックは挑発した。

 「ファイアーボール」

 上空から鋭い声が響いた。

 「え?」

 チャックの真上から火の玉がいくつも降り注ぎ爆発。そしてどこからともなく水が集まってきて機体にまとわりつき水滴は大きくなり彼を包んだ。

 舞い降りてくるあめ色の零戦とP51D型ムスタング。栗本とジェスロである。

 くぐくもった声を上げ六対の鎖をばたつかせるチャック。

 ダスティは機体を六対の鎖で支えた。

 しばらくすると彼はおぼれて目を剥いて地面に落ちた。

 「チャック。おまえは刑務所行きだ」

 ジェスロは言った。

 

 その頃、スパイクはロスサンチェスの不動産屋で物件を眺めていた。自分は結婚はしていないし一人身である。単身者用の安アパートでもいいのである。それに他の街に行ったら仕事を探さないといけないがそれはなんとかなるだろう。

 スパイクは二つの物件を見比べていた。


 「軍の輸送機か」

 チャドがつまらなさそうに言う。

 「でも幸運と思わなきゃ。これは事件だ」

 マイルズはノートPCを操作しながら言う。

 「FBIのおかげで調査ははかどっている」

 ラズリーが言う。

 「この人たちは?」

 ベラナが聞いた。

 「エミリー・タイタスとエル・ハリス捜査官だ」

 ヒラーは女性二人を紹介した。

 「タイタスって邪神ハンターの?」

 身を乗り出すダスティ。

 「クロウ・タイタスの孫よ。よろしく」

 エミリーと呼ばれた女性はダスティと握手をする。

 「本物の・・・でも孫だよ」

 目を輝かせるダスティ。

 「チャックはどうなった?」

 サニーが聞いた。

 「あいつは刑務所だ。マシンミュータント専用の刑務所に送られる。妻へのDV容疑に児童虐待にこの事件で二〇年は出れない」

 横山が答える。

 うなづくサニー。

 マシンミュータント専用の刑務所は人間とミュータント用の刑務所とはちがう。乗り物に変形できないような制御腕輪と魔術や能力が使えないような装置をつけられ永久牢獄に収監されるのである。そこは次元ブリッジの中にあり一歩外へ出たら元の場所に出られないという場所にある。

 「そうなんだ。よかった」

 ダスティは窓の外をのぞいた。

 カーテンで仕切られた部屋に入るエミリーとガーランド。

 「ガーランドさん。彼はまだ子供ね。でも時空コンパスを使えるマシンミュータントはいないわ。それにドロップインや感覚同調は人間やミュータントしかないはずよ」

 エミリーはささやいた。

 「ワシも驚いている。でも彼は時空コンパスを扱える。そろそろワシも引退だな」

 笑みを浮かべるガーランド。

 「そう簡単に引退されては困ります」

 エミリーが困った顔をする。

 「ワシは二五七歳の老人だ。そろそろ老人ホームを探さないといけないね」

 ガーランドはため息をついた。

 

 ネバタ州ブラックロック砂漠。

 砂漠には軍用車両の他に調査用の車両も混じっている。車両だけでなくプレハブ施設がいくつも建っている。

 ガーランドたちは輸送機を降りると爆心地にある隕石に近づいた。

 ダスティは時空コンパスを出した。すると針はクルクル回りだしある数字を指し示す。

 四つに割れた隕石が割れて扉が開いた。中からドーナツ状の輪が転がり出てきた。青銀色の不思議な物体である。

 ダスティはおもむろに拾った。唐突に弓に変形した。

 驚きの声を上げるガーランドたち。

 「僕が部活でアーチェリー部だから弓?」

 ダスティはおもむろに弦を引いた。陽炎ような光が集まり弓矢の形が浮き出た。弦を戻すと光る弓矢は消えた。

 「貸して」

 エミリーが名乗り出る。

 ダスティは弓を渡した。

 エミリーが弓を引いた。しかし弦はしなりもせずまるで棒のように動かない。それどころか元のドーナツ型に戻った。

 次はベラナとヒラーが握ったが元のドーナツ型に戻ったままだ。

 「どうやらこの子にしか使えないようね」

 ハリス捜査官が腕を組んだ。

 ダスティはドーナツ状になった武器をつかんだ。すると二メートルの青銀色の棒に変形した。

 「これなら戦える」

 破顔するダスティ。

 「きっとこの子の気持ちを読んで傷つけない武器に変形しているようだ」

 不意に声がして振り向くダスティ。

 「失礼。私は隕石や宇宙物理、考古学のジョセフ・ローランド・マリニーだ」

 三十前後の男性が名乗った。

 「あなたは宇宙物理や今回の隕石の解説でテレビに出ていた学者ですね」

 チャドがふと思い出した。

 「次期ノーベル賞候補だよ」

 マイルズがつぶやく。

 「地球上にはない物質で出来ているがなぜその子に反応するのかが不思議だ。まるで未来をわかっていたかのようだ」

 メガネをかけるジョセフ博士。

 「じゃあこの隕石のことは把握していたんですか?」

 鋭い質問をぶつけるベラナ。

 「他の学者とNASAは小惑星に釘付けとかいっているが私はこの隕石に目をつけていたんだ。私の祖父はアインシュタイン博士と親しい間柄でよく飲みに行っていた。祖父は酔った彼から隕石が落下することをつぶやいていた」

 真剣な顔になるジョセフ博士。

 「どうする?」

 エミリーがたずねた。

 「話だけ聞こうか」

 少し考えてからガーランドは言った。

 プレハブの研究施設に入るガーランド達。

 「ここには盗聴器も盗撮器はない」

 ジョセフ博士は声を低めた。

 「それはよかった」

 ヒラーとハリスが周囲を見回す。

 「私の祖父は彼から日記とフィルムをもらいました」

 ジュラルミンケースを二つ出すジョセフ。

 「あなたはおしげもなく貴重なものを出そうとしている。どうして我々が来るとわかる」

 チャールズは疑問をぶつける。

 「博士は相対性理論を発表しただけでなく時空ブリッジ伝説を研究していた」

 ジョセフは説明しながら古い錆びた映写装置を出してフィルムを据え付けた。

 「あなたの祖父はその共同研究者だった。名前はアンリ・ローランド・マリニー。クロウ・タイタスとコンビを組んでいた」

 エミリーが口を開いた。

 「知り合いですか?」

 ヒラーがたずねた。

 「私は会うのは始めてよ。よく父から聞かされていた。父は祖父から琥珀のペンダントをもらった。金庫に閉まってあるわ」

 エミリーは思い出しながら言う。

 「スパイクも琥珀の玉がはまっている剣をもらってよく使っていたな」

 栗本がふと思い出す。彼は数珠を出した。

 「俺は腕輪を金庫に閉まっている」

 ジェスロはつぶやく。

 「私達は指輪だ」

 ラズリーとチャールズが口をそろえる。

 「まずは映像を見て」

 ジョセフは照明を落とした。

 部屋が暗くなり正面スクリーンに白黒映像が出た。映像には琥珀の間らしい物や何人かの研究者と教科書で見る人物がいた。アインシュタイン博士だ。

 「ラバン・シュリュジュベリー博士とレミー・アーミティッジ博士よ」

 エミリーが指摘する。

 「ドイツ国内に潜入は成功。ナチスから琥珀の間は言い方は悪いが奪った」

 アインシュタイン博士は口を開いた。

 

 

  「琥珀の間だけでなくナチスドイツの信奉者や邪神を信奉する連中は時空ブリッジの向こうにいる時空侵略者たちを呼び寄せようとするだろう。時空ブリッジを巡って大昔から戦いが起こっている。それを見てきた先人たちは世界の名画や骨董品、美術品、遺跡という形で封印した」

 アインシュタイン博士はピラミッドやモナリザ、マヤカレンダーの写真を指さしながら説明する。

 「そこで我々はチームを組むことを考えた」

 ラバン・シュリュジュベリー博士ははっきり言う。

 「時空ブリッジ対策チーム。「ゲートスクワッド」を戦争が終わったら結成する。歴史上何度も結成されてきた。時空ブリッジを守らねば時空侵略者がやってくるだろう」

 レミー・アーミティッジ博士は腕を組む。

 「我々も蜃気楼のように映っているもう一つの世界と通信をしたことがある。黄金色のオーロラが出たときに試みた。それは成功した。向こうの世界もナチスドイツと連合軍が戦っているそうだ。年代も変わらない。平行世界でつながっている。向こうの世界には特命チームがあり大昔から時空侵略者や邪神を信奉する者達と戦っているそうだ。そして時空侵略者と戦っている。彼らはナチスドイツや日本、イタリアの黒幕だ。彼らの情報ももらっている。彼らは連合軍と特命チームに押されて敗走している」

 アインシュタイン博士は世界地図を出す。

 「ナチスドイツ、日本、イタリアの敗戦は時間の問題で時空侵略者が世界から出て行く日は近いというより出て行くしなかない」

 レミー・アーミティッジ博士が言う。

 「鍵になるのは時空コンパスだ。気になる隕石を観測した。軌道といいこの隕石Xは確実に地球のどこかに落ちる。時空コンパスに反応する隕石であると過程する」

 アインシュタイン博士は黒板に数式や記号をびっしり書いていく。

 「未来というのは見てはいけないものだが未来人は警告にやってくる。平行世界の向こうの世界も同じらしい。平行世界では三十一世紀の東京でこっちは三十一世紀のサンフランシスコから来るそうだ。時空侵略者にもいろいろタイプがあり一番危険なタイプが二度の大戦を起こす。もう一つは資源枯渇させるタイプと人類をエサにしかみない奴ら。一番性質が悪いのは全時空、全時代に自分たちの存在を知らしめようとして破壊するタイプがいる。戦後は我々はその未来に向けての準備をする」

 ラバン・シュリュジュベリー博士ははっきり言う。

 「時には向こうの世界の選ばれたチームと共同作戦を取ることになるかもしれない。みんなで知恵を絞り、奴らの弱点を突くこで科学力が遅れていても勝てる。同時に邪神の信奉者やナチスドイツの信奉者といった危険な輩から守る事も重要だ」

 レミー・アーミティッジ博士が言う。

 「私はパンくずをたどって来れるように手がかりを置いていく。地図にない街に隠してきた。これを見ているのは誰かわからないが見るころには戦争はとっくの昔の過去のものになり平和になっているかもしれない。そんな時に準備をしてそれを乱そうという輩が現われる。この映像を見たというのはその時が来たようだね。君らに幸運を」

 アインシュタイン博士は舌を出した。

 映像はそこで終了した。

 照明をつけるジョセフ博士。

 「スパイクを呼び戻さないとだめだね」

 ジェスロがふと思い出す。

 「ボストンに私の研究室があるので琥珀を持って集まりませんか?」

 ジョセフが提案する。

 「そうしよう」

 ガーランドたちは深くうなづいた。

 ノースロップジャクソンフォード郊外にある家に接近する車。

 家の前にはピックアップトラックに家財道具が載っていた。

 車から出てくるガーランド、ダスティ、サニー、ベラナ、ヒラーの五人。

 同僚のハリスはチャドとマイルズと一緒にロスサンチェスのアコード事務所でエニグマ暗号器を修理していていない。

 家から出てくるスパイク。

 「スパイク。出て行くのかね?」

 ガーランドは口を開いた。

 「裁判所の命令だから当たり前だろ」

 不快な顔をするスパイク。

 「司法取引しないか。ここを出て行かない代わりに邪神ハンターとして復帰するというのはどうだ?」

 ヒラーが提案する。

 「誰かが時空ブリッジを使って時空侵略者を呼ぼうとしている。それは七十年前のナチスドイツがやっていたことを復活させようとしている。このままほっとけば邪神クトゥルーが復活する。力を貸してくれないか?」

 ベラナは訴えるように言う。

 「やだね。面倒に巻き込まれるのはごめんだね」

 しゃらっというスパイク。

 「スパイク。君の持ち物の中に琥珀がはまった物とかないですか?」

 質問を変えるダスティ。

 「そこの金庫にあるから持っていけば」

 スパイクはトラックに載っている金庫を指さして雑巾をつかんだ。

 ガーランドはその腕をつかんだ。

 「おまえの引っ越し先はニューヨークではないぞ。ここだ。仕事がある」

 強い口調で言うガーランド。

 にらむスパイク。

 「引っ越したってうまく行くとは思えないけど」

 黙っていたサニーが口を開く。

 「戦闘本能が抑えられないんだろ。私もそうだ。それに融合の苦痛のトラウマにも悩んでいる」

 ベラナが核心にせまる。

 黙ってしまうスパイク。

 「君は孤立化なんてのぞんでいない」

 ダスティがはっきり指摘する。

 「ワシが町長を説得しよう」

 ガーランドがさとすように言う。

 「我々も裁判所や検事と相談して刑事告訴を取り下げてもらうようにする。なんとかなるだろう」

 ヒラーが食い下がる。

 「給料は払うし、ハンター資格も剥奪はなくなる。そしてチームに入ってもらう」

 ガーランドは笑みを浮かべる。

 「わかった」

 うなづくスパイク。

 破顔するダスティ。

 「家財道具を戻すのを手伝うよ」

 ガーランドは言った。


 クルップ社。

 「ほう。あのミュータントは刑務所行きになったのか」

 クレメンは社長室でパソコンのコンピュータ相手にチェスをしていた。

 「送り込んだ傭兵も全部捕まったのだろう」

 立花が口を開いた。

 「そうですね。軍の留置場に入れられていて本国に送還される予定です

 イレーヌは書類を見ながら報告する。

 「FBIが動いているようだね

 クレメンはチェスをやりながら言う。

 「あの少年とFBIとアコードを切り離せないか?

 すました顔をするクレメン。

 「それは難しいかと思います。これ以上介入すると我々が疑われます」

 イレーヌが指摘する。

 「以外に早くアコードが動いたな。あの少年の力に気づいたか」

 立花がつぶやく。

 クレメンは画面を切り替えて画面を立花やイレーヌに見せた。

 画面には電波塔に似たタワーが建っている。

 「計画に支障がでないようにしないとね。それとチャックというミュータントは使える。このミュータントの同僚や知人はあの子と関係があるのかね?」

 クレメンはたずねた。

 「同じ傭兵仲間でいますね。チャック同様にしょうもないですが」

 イレーヌが資料を出した。

 「ほう。そうか。それを使うとしてインスマスに支店長を派遣しなさい。報告は私にすること」

 クレメンはすました顔で言った。


 ロスサンチェスアコード事務所。

 ガーランド、ダスティ、サニー、ベラナ、ヒラー、スパイクが事務所に戻ってくると会議室の机に古そうな本や資料が山積みになっていた。

 「これは?」

 ダスティがたずねた。

 「アコード本部に頼んで琥珀の間に関係する資料を集めたんだ」

 ガーランドが答えた。

 「すごい量だ」

 ヒラーとベラナは声をそろえる。

 「今日はもう遅いからどこかホテルを取らないといけないか」

 サニーがつぶやく。

 「ホテルなら心配するな。宿舎なら上の階に人数分とってあるし食堂もある」

 ガーランドは部屋の鍵を出した。

 受け取るサニー。

 ダスティは時空ブリッジを紹介する本を読み始める。

 「アインシュタイン博士は時空ブリッジに関係する論文も書いているんですね」

 ヒラーはファイルを読みながら言う。

 専門用語が多すぎて自分にはわからない。

 「時空ブリッジに関係する論文をマリニー博士と一緒に共同出版している」

 ベラナが書類を見せた。

 「エニグマ暗号器を修理したんだ」

 会議室に入ってくるハリス捜査官とチャド、マイルズの三人。

 「え?あの錆びだらけの暗号器を?」

 ダスティがわりこんだ。

 チャドはパソコンとつないだエニグマ暗号器を見せた。


 エニグマ暗号機は、一九一八年にドイツの発明家アルトゥール・シェルビウスによって発明された電気機械式暗号機械で、一九二五年にはドイツ軍が正式採用し約三万台が軍用として使用された。

暗号方式は換字式であり、詳しくは順変多表式である。エニグマはM-209と同様な

反転暗号となり、暗号文を同じ鍵で再暗号化すると平文が得られる特徴がある。大戦中に連合国側はエニグマ解読に成功したが、その事実は徹底して秘密にされ、ドイツ軍は終戦までエニグマを使用し続けた。

現代では解読を不可能とするために複数の暗号アルゴリズムで構成される複合式の暗号もあり、アルゴリズムの実行順序がダイナミックに変更される。複合式の暗号はとても本来のエニグマに見られるような換字式暗号とは言えない。手前にキーボードがあり、その奥にランプボード(表示盤)、一番奥には三枚のローターが入っていて、ローターの初期状態を設定できるようにホイールの端が出ている。ローターの左にはリフレクター(反転ローター)がつけられている。キーボードの手前にはプラグボードが格納されている。 上蓋の内側の下にプラグコードが格納されている。キーボードで平文の一文字を打ち込むとランプボードの一つが点灯して暗号文の一文字が得られる。暗号文を復号する際も、同様にキーボードで暗号文を打ち込むとランプボードが点灯して平文が得られる。

内部のローター暗号化・復号の鍵は、いくつかあるローターのうちどの三枚を使うかの組み合わせと、ローターをセットする順序、ローターの目盛りの初期位置、およびプラグボード配線である。内部のローターは、中の配線が暗号化機になっている。打ち込んだ文字は三枚のローターを通って変換され、反転ローターでもう一度三枚のローターを逆方向に通って再度変換されて出力される。一文字暗号化する毎にローターが一目盛り回転し、回路が変更されるので、同じ文字を打ち込んでも前回とは別の文字に変換される。端のローターが一回転すると隣のローターが一目盛り回転するので回路の組み合わせは膨大な数になる。これは異なる換字表を一文字ごとに使っていくことと同じである。

各ローターの多表は固定されており、野戦で使用される暗号機は盗まれたり鹵獲されたりする可能性がある。そこでプラグボードが追加された。プラグボードはキーボード・ランプボードとローター換字部の間に挿入され、

単文字換字を行う。アルファベット26個分の入出力端子があり、任意の二つのアルファベットをバナナプラグの付いた1組のケーブルで入れ替えることができる。右の写真では

"A"と"J"、"S"と"O"が入れ替えてある。なおプラグの刺さっていないアルファベットは入出力が短絡された状態である

ドイツ軍は初めは三組、後に一〇組のアルファベットを入れ替えた。ローターの並べ替え・入れ替えに比べ、桁違いの鍵規約数を末端ユーザーが利用できるのが特徴である。しかし頻繁にプラグを入れ替えることは困難であり、実際には一日毎後に八時間毎の入れ替えとなった。ポーランドの解読者は暗号解読に群論を初めて導入し、プラグボードの影響を排除

してローター多表の解析に成功したことがエニグマ解読の重要な一歩となった。

一九二〇年代にドイツ軍は三ロータ型のエニグマを運用開始し、一九三〇年代に入るとイギリス、アメリカ、フランスがこの三ロータ型のエニグマ解読を試みたが不成功に終わった。いっぽう一九三二年、ポーランド暗号局の二七歳という若き数学者マリアン・レイェフスキと、レイェフスキのポズナン大学における後輩ヘンリク・ジガルスキとイェジ・ルジツキは、一九三二年ころ初期型を解読した。これはフランス情報部のスパイが、ベルリン暗号局シフリーシュテーレで勤務するハンス=ティロ・シュミットから得た情報から推察される構造を復元したエニグマを用いて解読された。元々がエニグマ実機が敵国側に堕ちることを想定され設計された暗号機であったので、レイェフスキにより解読された時点で実質エニグマは原理的に敗北したも同然であるといえよう実のところ、レイェフスキの上司であるランゲル少佐はフランス側からローターの日毎の配置を記したコードブックも得ていた。が、戦争激化時のスパイ行為の難しさを見越して独力で解かせることにしていたという。レイエフスキは「ボンバ」という暗号解読機を六台制作、ジガルスキは六枚のコードシート「ジガルスキ・シート」を六枚製作して、当時のドイツが使用していたものより複雑なエニグマでも解読できるようにまで発展させた。ところがドイツ側はローター数やプラグ数を二つ追加、これによりホイールオーダーは原理的に六から六〇に増加、暗号をより強固なものとした。ポーランド暗号局は当時六台制作したボンバとジガルスキ・シートにさらにそれぞれ五四台、五十四枚を追加しなければ太刀打ちできない状況になった。原理は同じものであるから理論的にはレイェフスキの手法で新しいエニグマの暗号解読は十分可能であったが、ドイツとの悲劇的な戦争が差し迫っている中、ポーランド側には五十四台のボンバと五四枚のジガルスキ・シートを追加制作し運用するために割く時間も予算も人員も足りなかった。既にドイツの独裁者であったヒトラーはポーランドへの強硬的な発言を強めており、ポーランドでは危機感が募るばかりで、ドイツが侵攻してくればポーランド側が独自に国土防衛を行いながらボンバを用いた新エニグマ解読作戦を継続することは考えられなかった。のちにレイェフスキはこう述べている。

「僕らは新しいロータの回路をすぐに把握したんだけど、その導入部はロータの配列が六から六〇に増加することを可能としていた。だからそのため解読の鍵を見つけるのにこれまでの一〇倍の労力が必要となってしまったわけだ。つまりこの変化というのは本質的なものではなく単に量的なものだったんだよ。だから僕らは、ボンバを運転したり、穿孔シートを製作したり、その穿孔シート操作したりするための人員をずっと増やさなければならない状況になっていたんだ」

もはやボンバの改良や人員の強化は開戦に間に合わないと悟ったランゲル少佐は、やむなくイギリス・フランスの情報担当官を緊急でワルシャワに招き、"解読不可能"とされていたエニグマ解読の成果を披露し、旧式とはなっていたがドイツ軍用エニグマのレプリカを送呈した。その結果イギリスの政府暗号学校のアラン・チューリングが、一九三九年秋には電動式の暗号解読機「ボンブ」の設計を行った。ポーランドのレィエフスキ・ボンバがエニグマ解読専用の設計であったのに対し、このイギリスのチューリング・ボンブはいわゆるクリブ方式の暗号一般に対応できるよう設計された。そのためには大西洋上のドイツの気象観測船を奇襲により捕獲したり、損傷して自沈のために浮上したUボートを捕獲したりしてエニグマの実物や暗号書を手に入れることが不可欠だった。イギリスの諜報機関内で解読作業をしたグループはウルトラと呼ばれ解読情報はウルトラ情報と呼ばれた。


 「さすが元産業スパイでハッカーね。その腕なら国際ハッカー大会にも出れるわ」

 ハリスが褒めた。

 「どういたしまして。僕達も何度かその大会に出ているんだけど上には上がいる。作業機械のミュータントは地位も低い。いい仕事を持っていくのは人間と普通のミュータントだけ」

 コーヒーを飲むチャドとマイルズ。

 「FBIの嘱託技師として登録できる。事件もハッカーとしての仕事も今の仕事ばかりになってしまうかもしれないけど報酬は出る」

 ヒラーが誘う。

 「いいねえ。それはいい」

 チャドとマイルズは笑みを浮かべた。

 「ローターの方は錆びを落として研磨して磨いたんだ。出力装置をパソコンに入力する方式にしてタイプライターはそのままだ」

 チャドはローターを暗号機にセットした。

 身を乗り出すベラナたち。

 マイルズは慎重にタイプをたたいた。文字がパソコン画面に出てくる。

 「DC-3 5467-09?」

 ハリスが読み上げた。

 「ワシントンDCの電話番号?」

 サニーが首をかしげた。

 「DC-3輸送機の機体番号だ。戦時中俺とスパイクがイギリスからアメリカに博士を乗せた輸送機を護衛した」

 黙っていたスパイクが口を開く。

 「その時の輸送機はどこに?」

 ヒラーがわりこむ。

 「スミソニアン博物館に展示されている」

 ダスティはipad画面を見せた。

 「博物館は閉館している時間だ。明日だな」

 ベラナが時計を見ながら言った。

 翌日。スミソニアン博物館

 世界各国の本物の航空機を展示している。他に、ナショナル・ギャラリーこと国立美術館、国立アメリカ歴史博物館など。産業・技術史の博物館やアメリカ・インディアンの博物館などもある。そのうち9つとナショナルギャラリー(国立美術館)は、国会議事堂前に展開する広い道路「ナショナル・モール」の両脇に配置され、一帯は広大な博物館地域

となっている(ナショナルギャラリー(国立美術館)の運営だけはスミソニアン協会

ではない。国立動物園その他は、ワシントンD.C.の他の地域に、クーパー・ヒューイット国立デザイン博物館、国立アメリカ・インディアン博物館が管轄するジョージ・グスタフ・ヘイ・センターはニューヨーク市にある。これに類した博物館群は、他の国ではほとんど例をみない。ドイツのベルリンにある

ベルリン美術館が、やはり複数の美術館、博物館の集合ではあるが、規模が比較の対象にならない。「スミソニアン・イアーズ」という年報を出している。

一九七一年一二月には、一〇カ国蔵相会議が開催された。このとき、合意した国際通貨に関する一連の措置をスミソニアン協定と呼ぶ。映画「ナイト ミュージアム2」は、このスミソニアン博物館が舞台

となっている。

 

アーサー・M・サックラー・ギャラリー

芸術産業館

フリーア美術館

ハーシュホーン博物館と彫刻の庭

国立航空宇宙博物館

国立アフリカ美術館

国立アメリカ歴史博物館

国立自然史博物館

国立肖像画美術館

国立郵便博物館

スミソニアン・アメリカ美術館

アナコスティア博物館

国立動物園

クーパー・ヒューイット国立デザイン博物館

国立アメリカ・インディアン博物館がある。


国立航空宇宙博物館は合衆国首都ワシントンDCの中でも最も重要な近代建築の作品

として広く考えられている。博物館の場所がアメリカ合衆国議会議事堂に近接しているため、当初博物館の建築を考えた際にスミソニアン協会は、建築学的に印象深いもので且つ議事堂に対して厚かましすぎないような建物にして欲しいと考えていた。その後ミズーリ州のセントルイスを拠点として活動していた日系アメリカ人建築士のギョウ・オバタがこの博物館建築という難問を受け入れ、より小さい展示品や劇場を収容可能で、さらにトラバーチンという材質で囲まれる簡素な四つの立方体というデザインにした。さらにそれらがサイズの大きいミサイルや航空機、宇宙船などの展示品を収容する、鋼鉄・ガラス製の広々とした三つの中央大広間に連結するようにも設計した。

 

 博物館本館は一九七六年七月一日に公式に開館され、ナショナル・モール東のハーシュホーン博物館と国立アメリカ・インディアン博物館の間に位置する。また博物館はワシントン D.C.を訪れる観光客の目的地の一つとして人気が高い。歴史的航空機や他の人工の展示品で埋め尽くされる展示室に加え、アイマックス社製のオムニマックス映写機で投影されるアイマックス・シアターやアルベルト・アインシュタインプラネタリウムといったアトラクション施設も備えている。

 

 

  博物館本館の有名な展示物


ライトフライヤー号 - 一九〇三年にライト兄弟が最初に運転した動力飛行機の実物。

スピリット・オブ・セントルイス - チャールズ・リンドバーグが大西洋を横断に成功した最初の一人乗り用有人飛行機の実物。

ベルX-1 - チャック・イェーガーが世界で初めて音速を突破する水平飛行を成功させた有人飛行機。

Me262-史上初の実戦ジェット戦闘機

V2ロケット(復元) - 史上初めて宇宙空間へ到達した最初の人工ロケット。

アポロ11号司令船 - 月面着陸に人類史上初めて成功したアポロ計画有人ミッションの司令船。

月の石の標本 - 極めて小さいが、触ることも出来る。

パイオニア10号 - 世界初の木星探査機でもある惑星探査機。

スペースシップワン - 世界初の民間企業による有人宇宙飛行機。

スケールド・コンポジッツ社を創設したバート・ルータンにより開発された。

USSエンタープライズ NCC-1701の撮影用模型スタートレックに登場する宇宙船。

ミュージアムショップの真下にあたる地下展示室に展示されている。

ソユーズ再突入カプセル - 秋山豊寛のサインが書かれている。写真と共に紹介文には世界初の民間人宇宙飛行士、ジャーナリストと記載されているが名前は書かれていない。

博物館はスティーブン・F・ウドヴァーヘイジー・センターと言う名称の本館より規模の大きい別館を所有している。日本語では単に「国立航空宇宙博物館別館」とされることもある。位置はワシントンDCの郊外にあるワシントン・ダレス国際空港に隣接しており、二〇〇三年十二月十五日に新設された。館内にはおよそ二〇〇の航空機と百三十五の宇宙船が収蔵品として展示されている。センターはハンガリーの移民で国際リースファイナンス社の設立者でもある、スティーブン・F・ウドヴァーヘイジーによって、一九九九年に六五〇〇万ドルの寄付がスミソニアン協会に贈呈されて創設されたものである。建設竣工には実に十五年の歳月を要した。


博物館別館の有名な展示物


エノラ・ゲイ - 第二次世界大戦時、広島市に原子爆弾を投下したB29長距離通常爆撃機。

ボーイング367-80- アメリカ合衆国のボーイング社によって開発された大型定期旅客機。

KC-135空中給油機やボーイング707旅客機の原型機としても知られる。

SR-71ブラックバード - 高標高、高速度を誇る戦略的偵察機。

エールフランス航空コンコルド - イギリスとフランスの両国による共同開発で作られた

超音速旅客機。

エンタープライズ スペースシャトルの実験機。宇宙飛行を遂げたコロンビア号はこの次の二号機にあたるものである。現在はディスカバリー号が展示されている。エンタープライズ号はニューヨークのイントレピッド博物館に移動された。

復元施設博物館の総展示品数は三万点を超える航空機関連の展示品と九万点を超える宇宙飛行関連の人工展示品を有しており、したがってその総数は本館が収容できる数をゆうに超えている。博物館が所有する航空機の多くはメリーランド州スートランドにある、ポール・E・ガーバー維持・復元・保管施設に収容されている。施設は徐々に増えていくであろう航空機の収集物を保存する保管場所として、一九五二年にスミソニアン協会の一部となった。施設は収集物の前管理者であったポール・E・ガーバーに因みつけられたもので、全三二棟の建造物で構成されている。かつて施設は観光のために開館されていたが、展示可能な収集品は全て博物館別館のスティーブン・F・ウドヴァーヘイジー・センター

に移された。この復元施設には日本の終戦後にアメリカ軍によりアメリカへ運ばれた震電1号機が分解状態のまま保存されている。


 時空コンパスを見ながらダスティはDC-3輸送機を探した。

 周囲を見回すベラナ、サニー、スパイク、ヒラー、ガーランドの六人。

 「パンフレット見た方が早くない」

 サニーはパンフレットを見た。しかし内容と地図は簡略化されていてよくわからない。

 ダスティはDC-3輸送機に乗り込んだ。

 「手がかりがあるのか?」

 スパイクはイスの下をのぞいた。

 ダスティはコクピットの天井を見上げた。そこに不自然に修理した跡がある。彼はその板を外すと鉄板が落ちた。

 「ダスティ。展示物を壊したらいけないでしょ」

 あわてるサニー。

 「あとで私達が博物館に修理代を出すから大丈夫だ」

 ベラナはため息をついた。

 「錆びてる。でもなんか書いてあるけど読めない」

 惜しい顔をするダスティ。

 「チャドやマイルズに頼んだ方がいいね」

 ヒラーが状態を見ながら言う。

 輸送機から出てくる六人。

 周囲を見回すベラナ、スパイク。

 ヒラーは銃を抜いた。

 見学客や観光客が一人もいないのもおかしいし静かすぎるのもおかしい。

 ガーランドは持っていた杖を構えた。

 ダスティはリュックに鉄板とコンパスをしまうと身構えた。

 「ダスティ。サニー。私達から離れるな」

 ベラナが注意する。

 「展示物に隠れてないで出てこいよ」

 スパイクが身構えながら言う。

 すると展示物の物陰や機内から飛び出す黒ずくめ男たち。

 ベラナ、スパイクは男たちのパンチや蹴りをかわし、掌底を弾き、鋭い蹴りを放ちながら男たちを吹き飛ばし地面にたたきつけながら出口へ向かう。

 ヒラーに飛びかかる男。銃を落とすヒラー。彼はつかみかかってきた男の腕をつかみ膝蹴りしてパンチ。そして回し蹴りして転ばせ次の襲いかかってきた男の腕をつかみ足で蹴り上げ巴投げした。

 ダスティは隕石でもらった時空武器をつかんだ。それは一メートルほどの棍棒に変形。彼はそれを突いた。

 勢いよく床に転がる男たち。

 サニーはそこにあった表示看板で殴った。

 「スリブル」

 ガーランドは呪文を唱えた。力ある言葉に応え甘い匂いが漂う。

 つかみかかってきた男たちはふらつきよろけて倒れた。

 「よく眠りなさい」

 ガーランドはスタスタ歩いていく。

 ベラナ、スパイク、ヒラーに襲いかかってきた男たちも強烈な眠気に襲われてバタバタ倒れた。

 「なるほど魔術封じ結界があるからか」

 ふと気づくダスティ。

 主要都市や公共施設では攻撃魔術が使えなくなる結界が敷いてある。特にここではオブジェや抽象画、記号が組み替えられ攻撃呪文も無害なものに変えてしまうのだ。

 落とした拳銃をしまうヒラー。

 「こいつらは何なんだ」

 ベラナは男たちの覆面を取った。

 普通の人間だった。

 「これはミュータントね」

 サニーが別の襲撃者の覆面を取る。どことなくサル顔のミュータントだ。

 「テロリストですか?」

 ダスティがのぞきこむ。

 「お金で釣られて頼まれたチンピラだろう」

 推測するガーランド。

 「大がかりな組織がバックにいるね」

 ヒラーは所持品を確認しながら言う。

 所持品はたいしたものは持っていない。

 しばらくすると警察車両と警官がやってきて襲撃者を連行していく。

 ひととりの事情聴取を終えて博物館から出るアーランドたち。

 「どうやら襲撃者たちは金で雇われたようだ。それも破格の値段で」

 ヒラーは口を開いた。

 「写真から見てもチンピラだな」

 ベラナが指摘する。

 「少年ギャングや地元のギャングを誰かが集めてわざと襲撃させた。どうやって交渉をまとめたのかわからないが手腕はたいしたものだ」

 ヒラーが感心する。

 「ガーランド。チンピラ共はともかく狙う連中はあの子の力に引かれて来ている」

 スパイクはささやいた。

 「わかっている。だが敵の正体をつかないとな」

 ガーランドはささやく。

 「あ、空港行きのバスが来た」

 指をさすダスティ。

 停留場に止まるバス。

 ガーランドたちはバスに乗り込んだ。


 翌日。ボストン近郊のケンブリッジにある大学の門前にガーランドたちが近づく。

 正門にジェスロ、栗本、ラズリー、チャールズ、エミリーがいる。

 遅れてハリス捜査官とチャド、マイルズが来る。

 「ジョセフ博士の言う研究室ってもしかしてハーバード大学だったんだ」

 ダスティがパンフレットとキャンパスを見比べながら言った。

 

 ハーバード大学は、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジ市に本部を置く

アメリカ合衆国の私立大学である。一六三六年に設置された。アイビー・リーグの一校。米国最古の高等教育機関であり、世界を幅広い分野でリードする。現在に至るまでオバマ大統領を含め八人のアメリカ合衆国大統領や、

75人のノーベル賞受賞者(内卒業生が五五人で、卒業生のノーベル賞受賞者数としては全米1位)、博士課程の卒業生として五人のフィールズ賞受賞者を輩出している。アメリカの学部課程ランキングで1位にランク付けされ、

タイムズ・ハイアー・エデュケーションや上海交通大学などによる世界大学ランキングでは、ほぼ1位を独占している

ハーバード大学は米国最古の高等教育機関であるが、大学がいつの時点で発足したのかは、明確に特定の日付では定められていない。一六三六年九月八日に招集され一〇月二十八日に散会したマサチューセッツ湾植民地の議会は、「学校ないしカレッジ」の新設のために資金を支出することを議決した。翌一六三七年九月七日の植民地議会では、「ジ・カレッジ」を当時のNewe Towneに開設することが議決されている。一六三九年から用いられるようになった「ハーバードカレッジ」という名称は、一六三八年に死去した際に、遺言で蔵書と所有不動産の半分をカレッジに遺贈した、最初の寄付者で清教徒派の牧師ジョン・ハーバードに由来する。一六三八年には、Newe TowneがCambridgeと改称されたが、これは大学の初代学長ヘンリー・ダンスター、最初の寄付者

ジョン・ハーバード、初代校長ナサニエル・イートン、さらに、当時のマサチューセッツ湾植民地総督ジョン・ウィンソープが、いずれもケンブリッジ大学出身であったことに由来している。カレッジでなく、ユニバーシティとして言及した最初の例は、一七八〇年のマサチューセッツ州憲法とされている

大学の中核はボストン近郊、ケンブリッジのハーバードヤードを中心とするケンブリッジキャンパスであり、マサチューセッツ工科大学のキャンパスからは三キロほどの距離にある。キャンパスは、ボストン市内のオールストンやロングウッドにもある。付近には六〇を超える大学があり、ハーバード大とマサチューセッツ工科大にゆかりのあるノーベル賞受賞者を合わせると累計一五〇人(ハーバード七四人、マサチューセッツ工科大学七九人)を超えるなど、世界有数の学園都市を形成している。

 

 「映画モンスターズユニバーシティもここがモデルになっているのを聞いたな」

 チャドがしれっと言う。

 「人間ばっかだな」

 つぶやくベラナ。

 黙ったままのジョセフ博士。

 大学内にある一〇階建てのサイエンスセンターに入るジョセフ博士たち。

 サイエンスセンターには天文台や講堂、ぶしつ、カフェなどが入っている。博士の研究室は五階にあった。

 研究室に入るなり、ジェスロ、栗本、スパイク、ラズリー、チャールズ、エミリーは琥珀がはまった武器や指輪、ネックレスをテーブルに出した。

 隕石から転がり落ちた五つの琥珀玉をガーランドが出した。

 「外しますか?」

 ジョセフは武器や指輪の琥珀を指さす。

 スパイクやラズリー、チャールズ、ジェスロはドライバーを出して琥珀をはずす。

 栗本も惜しいという顔をして数珠から琥珀を外した。

 ダスティは琥珀玉をまじまじと見つめておもむろに蛍光灯に琥珀を当てた。

 すると数字や記号が見えた。

 「光にかざすと数字と記号が見える」

 目を輝かせるダスティ。

 「本当だ」

 チャドやヒラーたちものぞいた。蛍光灯にかざすと確かに不鮮明に数字が見える。

 「赤外線を当ててみよう」

 ジョセフは照明を暗くして赤外線を当てる。

 するともっと鮮明に数字や記号が出てくる。

 「その数字をコンパスに入力してみなさい」

 ガーランドはひげをなでながら促す。

 「はい」

 ダスティはコンパスの針をその出てきた数字と記号の順番に合わせた。

唐突に底の蓋がはずれて紙が落ちた。

 彼は古びた紙を広げる。それはどこかの地図だった。地図はマサチューセッツ州の地図でボストン周辺の地図には間違いないがなぜが他の国の言語の地名になっていた。

 「これはロシア語とドイツ語だ」

 ベラナが指摘する。

 「なんでドイツ語とロシア語?」

 聞き返すサニーとヒラー。

 ダスティはとっさに時空武器をつかみそれを弓に変形させて光る矢を撃った。

 「え?」

 天井から同化していた人影が落ちた。

 ベラナ、横山、グロリア、ジェスロたちは片腕を銃身に変えて天井や壁に同化していた者達を撃っていく。

 撃たれて床に落ちる者達。

 照明をつけるジョセフ。

 ベラナやヒラーたちは覆面を取った。

 「エイリアンだ!!」

 思わず声を上げるチャド、ダスティ、マイルズ、ヒラー、ハリス。

 そのエイリアンはオレンジ色のピッタリヒットする戦闘スーツを着用。背中にはバックパックを背負っている。顔はトカゲめいていて薄緑色でワニのようなウロコで覆われ、あごからセイウチのような硬いヒゲが生えている。両目の瞳は猫の目のように細い。

 「時空侵略者の偵察兵か。向こうの世界に侵入した白い僧侶の下僕が偵察に来たか」

 ガーランドは冷静に見下ろす。

 「そうですね。祖父の日記にもあります」

 ジョセフ博士は日記を出した。

 「すごいリアル」

 ダスティはまじまじと見つめる。

 「本物の宇宙人だ」

 絶句するヒラーとハリス。

 「時空侵略者は都市伝説ではないんですね」

 ベラナは死んだ偵察兵から背中にあったショルダーパットを外した。

 「もしかしてロズゥエル事件ってこういう事件なの?」

 ダスティが聞いた。

 「もしかして一九四七年のあのおさわがせのUFO事件がつながっている?」

 チャドとマイルズが顔をほころばせる。

「今のところはノーコメントだ」

咳払いするガーランド。

「なんかつまらないの」

ダスティはつぶやいた。

しばらくすると大学内にアコードの車両が続々と入ってきてエイリアンの死体を回収していく。

研究室がアコードの現場検証で使えないので上の階のカフェテリアでダスティたちが集まっていた。

店内に学生はいない。自分たちだけだ。

コンパスから落ちた地図と最新のボストン周辺の地図を見比べる。

「セーラム郊外に赤丸がある」

ダスティが指摘する。

「魔女のストーンサークルと呼ばれる遺跡があるんだよ」

ヒラーが思い出す。

「じゃあ行ってみよう」

ダスティが言った。


セーラムとはヘブライ語で「平和」に由来している。その名前の通り、石畳の小道やレンガ造りの街並みには、しっとりと落ち着いた風情が漂う。その街でかつて「魔女狩り」が行われた。十七世紀末、ヨーロッパを震撼させた「魔女狩り」がこの地に飛び火したのだ。実際に魔女裁判が行われ、罪のない尊い命がいくつも失われた。今もそこここに魔女のサインや看板がシンボルのように掲げられハローウインの季節には魔女目当てに全米から観光客が押し寄せる。文字通り魔女の街だ。

 観光地になっている魔女博物館や魔女の家や七破風の家からだいぶ離れた郊外にポツンと魔女のストーンサークルがあるが見る人は誰もいなかった。

 真ん中のストーンに近づくなりダスティはコンパスを近づけた。

 カチッていう音がして真ん中のストーンが回転。足元の蓋が開いた。中には手作り感満載といったルービックキューブと地図が出てきた。

 「店で売っているのとだいぶちがうね。博士は造ったのかな」

 ダスティは記号が書かれているキューブをながめながら言う。

 ルービックキューブならいくつも持っているしクロスワードパズルも何枚もある。パズルはプレゼントや付録目当てでやっているがパズルの方はよく外れる。

 手作りルービックキューブの記号を全部そろえるダスティ。せつなキューブの蓋がはずれて琥珀のネックレスが出てきた。

 「この地図もドイツ語とロシア語でなんかの図面?」

 ベラナと横山が首をかしげた。

 「さすが天才博士だ」

 感心するグロリアとジェスロ。

 「この図面といい地図といいボストン美術館だ」

 あっと思い出すガーランド。

 ダスティはおもむろに琥珀のネックレスを太陽にすかしてのぞく。すると物体が分割して入っているのが見えた。

 「栗本さん。これを燃やして。なんか入っている」

 ダスティが促した。

 灰皿を出すスパイク。

 栗本は琥珀のネックレスを持つと虚空から炎を出した。

 彼は零戦と融合する前は炎を操る能力のミュータントである。炎を出すのは簡単だ。

 どろどろにとけて灰皿に落ちる琥珀。

 ピンセットで残骸をかきわけると金属が出てくる。その金属のパーツを組み立てると鍵の形になった。

 「ボストン美術館と鍵って?」

 ジョセフ博士は首をかしげる。

 ぜんぜん考えつかない。

 「ボストン美術館へ行ってみよう」

 ダスティはうれしそうに言った。


 ボストン美術館は全米でもトップクラスの質と量を誇る美術館だ。開館は一八七六年である。収蔵品はヨーロッパからアメリカ、アジア全域、エジプトまで時代区分では世界四代文明の出土品から現代モダンアートまで網羅している。一二〇年以上にわたって蓄積されたその質の高さは世界レベル。世界の美術品が一堂に会した充実度ともいえる。

 おもな展示品は東洋美術やエジプト、ギリシャ、アメリカの絵画から現代アート。そして中国美術の陶磁器や仏像も展示されている。

 西館入口にインフォメーションセンターがあり無料のツアーが楽しめるのだ。

 ダスティは時空コンパスをみながら正面玄関から入った。館内入口にあったインフォメーションセンターを素通りするダスティ。

 受付係にEBI手帳を見せるヒラーとハリス。

 館内にいる見学者や観光客はまばらだ。

 「FBIです。これは調査ですので見学者を排除してください」

 ヒラーは受付係と学芸員たちに指示を出す。

 彼らは正面玄関を通らないで見学者たちを西館出入口へ誘導していく。

 円形広場で立ち止まるダスティ。

 円形広場の床にモザイク画が描かれているがよく見ると数字や記号が書かれていてモザイク画の真ん中に小さな蓋がある。

 ダスティは組み立てた鍵を出してしゃがんで蓋をめくると鍵穴があり鍵を差し込んだ。

 どこかで重々しい音がして足元のマークが引き戸式に引き込まれ階段が現われた。

 「すごい・・・」

 館長とサニーたちが絶句した。

 ダスティはさっさと階段を降りていく。

 彼のあとをついていくサニーたち。

 長い廊下をしばらく行くと教室が二つ入るほどの大きさの部屋に出た。しかも部屋全体が琥珀で出来ていた。

 「これは・・・琥珀の間だ」

 絶句するスパイクとジェスロ。

 「アインシュタイン博士。僕はあなたが落としたパンくずをたどって来ました」

 ダスティは真剣な顔で言った。

 


 

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