11. おっさん、おまわりさんに怯える
目の前で顔を赤くしてもじもじとする獣人っ子。とりあえず背をむける俺。
(あれ?男の子じゃなかったの・・?どういうことだってばよ)
いや、むしろ俺はいつからこの子が男の子だと錯覚していた・・!?
というか、嫌がる女の子を無理やり裸にするとか犯罪じゃねーか・・。やめてください、おまわりさんだけは勘弁してください。
俺パニック。おちつけ俺。俺おちつけ。
とりあえず深呼吸しよう。
「ひっひっふー、ひっひっふー」
よし落ち着いた。
・・おそらく、俺はこの子に甥っ子を重ねていたから男の子だと思い込んでしまったのだろう。うん、なっとく。
それによくよく考えると男の子だろうが女の子だろうが、こんな幼い子が裸になったところで問題無いよね、常識的に考えて。俺ロリコンじゃないし。
そうだよ、意識する方が逆におかしいって。逆にね。
冷静になった俺は獣人っ子の体を洗い始める。
(ふー、大分キレイになった。次は髪だな)
浴室には石鹸しかない。この世界、シャンプーやリンス的なものは無いのだろう。これもあとで買ってやろう。
耳に入らないよう注意しながら洗ってやる。
髪の毛がからまっているので、痛くないよう丁寧にほぐしながら洗っていく。もちろん尻尾も念入りに。
尻尾を洗われるのは少しくすぐったいみたいで、くねくね身をよじっていた。
そうして繰り返し洗ってやると大分キレイになってきた。
洗い始めは流したお湯が茶色に濁っていたが、今はキレイなもんだ。
くすんで灰色に見えていた髪や尻尾も今ではキラキラした銀色。実にびゅーりほー。
泡を流して湯船に浸かる。
だいぶお湯が減ったが、獣人っ子がそのまま座ると顔まで浸かってしまうので膝の上に座らせる。可愛らしいおしりの感触が心地良い。へんないみではない・・けっして。ノーモアおまわりさん。
タオルを湯船に入れ、〈くらげ〉をつくる(中に空気を入れ、きゅっとすぼめて丸くするやつ)。
するとパァァァッと顔をかがやかせてこっちを見る。
おそるおそる触ったあと再びこちらを笑顔で振り返る。
気に入ってくれたようで、てしてしとくらげを叩いている。なんかもうひたすら可愛い。
「そういえばキミ、名前なんていうの?」
くらげをぎゅーっとつぶして、ひとりエキサイトしている獣人っ子に聞いてみる。
こちらを見て、こてんっと首を傾げる。
(うーん、理解できないのかな?言葉は通じていると思うんだよね・・言語理解のスキルあるし。名前が分からないと不便だよなぁ・・とりあえず仮の呼び名でも決めるか。
どんな名前がいいかな?可愛いのがいいよね。・・・・・・・・よし、決めた!)
「とりあえず、キミのことは《シラユキ》と呼ぼうと思うんだけど・・どうかな?」
するとこちらを見つめたあと、ぎゅーーーっと力いっぱいしがみついてきた。犬耳がぴこぴこ嬉しそうに動いている。よかった。
キラキラした銀髪と透けるような白い肌からイメージしました。
我ながら良いネーミングセンスだと思う。
「おれの名前はオサムだよー」
「おしゃ・・ん?」
「惜しい。オサムだよー、お・さ・む!」
「お・しゃ・ん?」
舌ったらずなしゃべりかたも可愛い。
シラユキさんは少し考え ( ゜д゜*)ハッと何かに気づいたような表情になった後、満面の笑顔でこう言った。
「・・おっしゃ~ん!!」
うん、もうそれでいい。だって可愛いもの!それに実際おっさんやし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます