第7話 不良と低血圧子はささやかな謎を解き明かす⑧
ダンジョンの主は二度目の挑戦で倒すことができた。
「もう一戦……は必要なさそうだね」
ウタゲが早くも宝箱のコマをチャック袋にしまいながら、言った。
「それで、わかったというのは?」
「ああ。今から説明する」
とは言えオレはウタゲと違って説明がヘタだからなあ。多少わかりにくくてもそこは許してくれよ。
「『ドラゴンクエストダンジョン』で使われているキューブは、他のゲームでは使われていない。したがって、篠原の思い出のゲームは『ドラゴンクエストダンジョン』である。一方で、篠原は静岡県中部ボードゲームで実際に遊んでみて、思い出のゲームがどうしても『ドラゴンクエストダンジョン』だとは思えなかった。オレはこの二つの事柄を、両方とも正しいと仮定してみた」
「矛盾しない?」
「まあ待ってくれ。さっきウタゲは中学時代の篠原のことを『緊張しているのがモロに顔に出る』感じだと言っていたよな。小学二年生の篠原だったらなおさらそうだったと思わないか?」
「それは否定しないけど」
「だとしたら、今のオレたちみたいに隣のおねえさんと篠原とがまともに対戦したら、全く勝負にならないんじゃないか?」
「まぁ、それも否定しないよ」
「……おかしいとは思わないか? そもそも隣のおねえちゃんは篠原がテレビゲームでうまく遊べなかったから、他の遊び方を考えたんだろう? でも『ドラゴンクエストダンジョン』では同じ轍を踏むことになる。テレビゲームの代わりにはなり得ないんだ。にも関わらず二人は『一時期はそのゲームでばっかり遊んでいた』という。オレはだから、思い出のゲームは『ドラゴンクエストダンジョン』ではなかったんだと確信している」
「しかし――」
「そう。わかってる。このキューブはドラゴンクエストダンジョン以外では使われていないんだろう? オレはお前の知識も信じているよ。ついで篠原も『洞窟を探検するゲーム』と言っていたしな。モノ自体は間違いなこいつなんだよ。ただ、ルールが違ったんだ」
「ルールが……違う?」
「そう。お隣のおねえさんは、『ドラゴンクエストダンジョン』を何とか篠原と一緒に遊べるようにすることができないかと思い、内容物をそのまま使ってまったく別のゲームに作り替えたんだ。例えばそうだな――片方のプレイヤーがダンジョンに関する断片的な情報を与えて、もう片方がその情報を元に規定ターン内にダンジョンを踏破していく、とかな」
「それって……」
「ああ。篠原が好きな協力ゲームだよな」
「ボードゲームの原体験は協力ゲームの原体験でもあったわけか」
「ま、今のところはあくまでオレの推測だけどな」
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