第6話 不良と地味子と空手と歴女は熱き海の秘宝を求む⑤

「島タイルの説明はひとまずここまでにして、ここでカードについて説明します。みなさんはゲーム中、財宝カードを手札に持ちます」


 それから篠原は裏面が赤いカードを各人に2枚ずつ配った。


「見せてしまって良いんですか?」


 篠原が自分の手元のカードを表にしてテーブルに並べたのを見て、梶井さんが尋ねた。


「はい。手札とは言いましたが、全員から見えやすいようにテーブルに並べてください。この財宝カードは財宝のありかを示す手がかりだと思ってください。後でもう一度説明しますが、財宝を入手するためには同じ種類の財宝カードを集めていく必要があります」


 ここで篠原は一旦口を噤んで、オレたちの反応を窺った。ウタゲと比べると、どうしても話し慣れていない印象を受けるが、だからこそ彼女の良いところを真似しようと努めているのが伝わってくる。


 ――頑張れ、篠原。オレもちゃんと聞くから。


「では、具体的にどうやって財宝を入手するのか……ここからは実際のゲームの進行に沿って説明していこうと思います。禁断の島はHYKEとは違って、時計回りに自分の手番をやっていくタイプのゲームです」


「双六みたいに、ってことだな」


「ですです。そして自分の手番でできること――アクションは『移動』『補強』『財宝カードの譲渡』『財宝の獲得』の4つです」


「アクション?」


 まだ具体的なイメージが掴めていないのだろう。梶井さんが小首をかしげて言った。


「アクション!」


 また誤ったイメージを掴んでしまったのだろう。瀞畝が素早く詠春拳風の手捌きをしながら言った。


「各アクションについてもう少し詳しく説明するね。まずは移動。自分のコマを隣接するタイルに移動します。行けるのは基本的に上下左右のみで、斜めへの移動はできません。浸水しているタイルにも特に制限なく移動できますが、


 へぇ。浸水しているタイルにも問題なく出入りできるのか。それはちょっと意外だな。


「次、補強。これは自分のコマがいるタイルか隣接するタイルの中で、浸水しているタイル1個を選んで、カラーの面に戻すアクションです。これも斜めのタイルは選べません。注意したいのは、浸水していないタイルや既にタイルが取り除かれてしまった箇所を補強することはできないという点です」


 あくまで浸水中のタイルを補強することしかできないわけだな。しかし今は他に気になることがあった。


「浸水したたいるの補強って具体的にはどうやってやるんだろう?」


 あくまでイメージの問題だが、探検隊でやれる補強って何なのだろうと思ってしまうのだ。まさか重機を持ち込んだわけでもあるまいし。


「後で説明するけど、土嚢カードなんてものもあるから、やっぱり資材を使って浸水箇所を塞ぐんじゃない?」


「あるいは鍛え上げた筋肉マッスルで堰き止めるのかも知れないね」


 お前の気が知れねえよ。篠原もリアクションに困ってるだろうが。


「……続けます。財宝カードの譲渡。これは、自分が持っている財宝カード1枚を他のプレイヤーに渡すアクションです。このアクションを実行するためにはカードを渡したい相手が自分と同じタイル上にいる必要があります」


「隣じゃなくって、同じタイルにいないとダメなんだな」


「そういうこと。あと、手番のアクションでカードを渡すことはできてももらうことはできないから気をつけてね」


 誰かが欲しいカードを持っていたら、そいつが渡してくれるのを待つ必要があるってわけだ。なかなかもどかしいな。


「最後に財宝の獲得。このアクションを実行するためには、ふたつの条件をクリアしている必要があります。ひとつは、同じ種類の財宝カード4枚が手札にあること。もうひとつは、自分のコマがそのカードに対応したタイルの上にいることです」


「対応?」


「例えば風の像なら――」


 篠原は『囁きの庭園』と書かれたタイルを指さした。よく見ると、タイルの左下にフィギュアと同じ翼獅子の絵が描いてある。


「おお、そういうことか!」


「各財宝につき2枚ずつ対応したタイルがありますが、財宝カードさえ揃っていればどちらからでも同じように財宝を獲得できます。また、タイルが浸水していても構いません」


「でも、完全に沈んでタイルが取り除かれてしまった箇所はダメなんだよな?」


「さっすがマコトさん。その通りです」


「浸水までならセーフ……完全に沈んだらアウト……何となくわかってきた気がします」


「プレイヤーが手番でできるアクションは以上4種です。この4種のアクションを自由に組み合わせて、最大3回までアクションを実行します」


「同じアクションをやっても良いのか?」


「問題ありません。例えば、少し離れた仲間のところまで歩いて行って――」


 篠原はタイル上のコマを1回、2回と動かして、別のコマがと合流させてから、オレのところに炎の水晶が描かれた財宝カードを手渡した。


「財宝カードを渡してこれで3アクション。なんてことができます」


「なるほどな」


「さて、自分の手番でアクションを3回まで行いました。それから次の人に番を回す前にあと二つやることがあります。財宝カードの補充と、浸水の進行です」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る