第6話 不良と地味子と空手と歴女は熱き海の秘宝を求む④

 すったもんだはあったが、ともあれオレたち四人は『禁断の島』で遊ぶことにした。


 空いていたテーブルを囲んで、まずは箱を開ける。説明書を脇に避けると、最初に目に飛び込んでくるのが、消しゴムほどの大きさのフィギュアだ。黄色い翼獅子よくじし、水色の杯、焔を模した赤いクリスタル、ひび割れた黒い球体――これらは一体どういうアイテムなのだろう? 興味はつきないが、ひとまずは篠原の説明を待つことにしよう。


 箱の中には他に、厚紙のタイルとカード、人型のコマなどが入っていた。それから数字と目盛りがかかれたメーターのような見た目の小さなボード。物々しいパッケージの割に、中身は結構あっさりしている。


「それでは『禁断の島』について説明しますっ!」


 篠原は気合いたっぷりの声でそう言った。


「……こうやって不思議な縁でボードゲーム会で一緒に遊んでいるあたしたちですが、それは仮の姿。実は世界中を冒険し財宝を発掘する探検隊の一員だったのです!」


 仮の姿って、言いたいだけだろと思わないでもなかったが、本人はノリノリなのでここは水を差さないでおこう。


「な、なんだってー?!」


 お前もノリ良いよな、瀞畝。


「そして今、あたしたちは禁断の島に足を踏み入れました。あたしたちは全員で協力して隠された四つの財宝――風の像、大海の杯、炎の水晶、大地の石を見つけ出し、島から持ち帰らなければなりません。しかし、禁断の島には古代アーキア帝国が作り上げた恐ろしい防衛システムが遺っていました」


「恐ろしい防衛システム……ですって!?」


 梶井さんも割とこういう感じなんだ。


「それは侵入者が現れると、島ごと財宝を海中に沈めるシステムです!」


 毒蛇とか吊り天井とかファラオの呪いとかそういうのじゃないのか。何というか大雑把な文明だな、古代アーキア。


「というわけで、まずはあたしたちが探索することになる島を作りましょう!」


「島を」「作る?」


 瀞畝と梶井さんがお互いの方に首をかしげて尋ねると、篠原はにっこりと笑ってテーブルに並べたタイルを何枚か取って見せた。


「じゃじゃーん。これが島を構成するタイル――その名も島タイルです。これを説明書の図とおり並べてもらえますか! そうそう、そんな感じ!」


 禁断の島は24枚のタイルで構成される島だった。中央に4×4の広さの正方形があり、さらに正方形の各辺に接するように、2枚分のタイルが置かれる。イメージとしてはこんな感じ(↓)だ。


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 タイルはフルカラーで、様々な地形や建物が描かれている。中には歪んだドクロのような岩や、人間の手のよう形に白化した珊瑚が描かれたタイルなどもあり、どことなく不気味な感じがする。ちなみに各タイルには『失われた入り江』『満ち潮の宮殿』といった名前もつけられていて、名前の由来はわからないが、なんだかすごく格好いい。


「さっきも言ったように、あたしたちは探検隊として、隠された四つの財宝を手に入れるたえ、この島に上陸しました」


 言いながら、篠原は人型のコマをタイルの上に置く。


「そのコマが探検隊のメンバー――つまりはオレたちなんだな?」


「ですです。上陸地点はプレイヤーごとまちまちだけどその説明はまた後にします」


「了解」


「さて、島を構成するタイルには裏表があります。今は全部表の面が見えてるけど、こうやって裏返すと――」


 描いてある絵は同じだが、色が青白くなっている!


「これはこの箇所が浸水状態だということを表しています」


「古代アーキア帝国の防衛システムか!」


「その通りです、マコトさん。ちなみに。有り体に言うと、いくつかのタイルを青白い面を上にした状態でゲームを始めるということです」


 そう言って、篠原は実際にいくつかのタイルを裏返して見せた。


「やべえな」「ああ、ヤバいぞ我が宿敵」


「ちなみに浸水状態のタイルがさらに浸水すると、そのタイルは完全に水没したことになり、ゲームから取り除かれます。このことについてはまた後で触れますが、あらかじめ言っておくと、よりヤバいです」


 篠原まで乗っかってきた!

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