第5話 不良と地味子と低血圧子は城塞都市を再建する⑧
タイルをよく混ぜていくつかの山にした後、オレたちはいよいよゲームを始めた!
「よーし、引きます! おっ、良いのキタ!」
スタートプレイヤーは篠原。U字型の城壁が描かれたタイルを引いて満面の笑みを浮かべている。
「完成した都市にコマを置いて、4点。コマを戻します!」
ひとつひとつの行程を丁寧にやってくれるのはありがたい。
「次は春川君だね」
「おう。やるぜ」
気合いを入れてめくったが、出てきたのは草原にL字の道が延びたタイルだった。うーん、できれば点数が高い都市のタイルを引きたかった……。
「まあ良い。とりあえず道の上に置いて、終了だ!」
「次は私だね」
ウタゲはそう言って淡々とタイルを引く。今度は草原に直線の道が延びたタイルだ。
「おや、また道か」
お互いツキがないな、と軽口を叩くよりも早く、ウタゲは手に取ったタイルを篠原が置いたタイルの横に繋げる。オレの道への合流を狙っていくのかと思いきや、違った。ウタゲが手下を置いたのは、道ではなく草原だった。
「あ、そうか。この時点で3点確定なのか」
「その通り。それにこちら側の草原にはまだまだ都市が建ちそうだしね」
なるほど。草原は完成した都市1個につき3点なのだから、都市がたくさんできそうな場所に置いていくのがセオリーなのだろう。
「再び番が回ってきました!」
篠原がふんすと鼻を鳴らしてタイルを引く。気合いを入れたところで乱数の神様が振り向いてくれないだろうけど、つい力が入っちまうんだよな。あ、でも良いの引いてきた。またU字の城壁だ。
今日の篠原は絶好調だった。その次の番で引いてきたタイルもU字の城壁で(三連続だ!)前の順で置いた城壁とくっつけてさらに4点を獲得する。
「まだリップ都市。ユウちゃん、幸先良いね」
「ふっふっふー。今日は勝つよ!」
早くも8点を取って単独トップのクラスメートは両目を糸にして言った。
「負けねーよ」
オレはそう言って、タイルを引く。筒状の都市が描かれたタイルだ。うーん、さっき手下を置いた都市を完成することはできないが、点数は増やせるな。これはこれでアリだ。
「……そういえばリップ都市って言うのか、さっきの」
オレがタイルを置きながらふと思い出して呟くと、ウタゲが「おっと。何の説明もなく言ってしまってすまなかったね」と前置きして話し始めた。
「公称ではないんだけど、二つの都市を並べた形が唇に似ていることから、カルカソンヌファンの間ではリップ都市と呼ばれているんだ。ちなみにリップ都市の構成要素となるタイルはリップ片」
「面白いな。他にはあるのか」
ウタゲは引いてきたタイルを置いてから「そうだね。例えば今置いた三角形の都市にリップ片二つをくっつけて蓋をした都市のことを三日月と言ったりするね」と応じる。
「三角形の都市四つを組み合わせたものを手裏剣って呼んだりもするよ!」
「おお。なんだかどっちも格好いいな!」
ウタゲに続いて篠原がタイルを引き、すぐにまたオレ。そして念願のリップ片を引く!
「よっしゃ。これで完成だ!」
「おめでとう。紋章つきだから8点だよ」
「やったぜ! 篠原に追いついたぞ!」
言いながらコマを戻す。都市を完成させたのもテンション上がるけど、この一仕事終えた手下が戻ってくる感じもすごく良いな!
「ちなみにこの形にも名前はあるのか?」
「あるね」
「マジか。教えてくれよ。何て言うんだ?」
「骨」
「……骨って」
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