第4話 不良と地味子は身成り余る処を以ちて身の成り合は不る処を刺し塞ぐ③

 晴れた空の下、オレと篠原はのんびりした足取りで漫画喫茶へと向かう。こうやって自転車を降りた篠原と一緒に歩くこと自体はすっかり慣れっこになっているけど、その足でどこかに遊びに行くというのは今までにない体験だった。メリーズ・ラムに行くときは家に自転車を取りに帰るから、道中は別々なのだ


「大きい荷物を頼んでしまって悪かったな」


 オレが自転車のカゴに入った大きなショッピングバック(さすがにこの間よりはおとなしめのボリュームだが)を見て言うと、篠原は片手をぱたぱたと振って笑った。


「気にしない気にしない。マコトさんにリクエストされてこの子も喜んでるよ」


「そうか。ありがとな」


「うふふ。でも意外だね。マコトさんがゲームの勝敗にこんなに拘るだなんて」


「そいつで遊ぶ前にも、ロスバンディットでウタゲに二連敗を喫しているんだが、それはそこまで悔しくないんだよ。あいつ、ああいう細かい確率計算が必要なゲームとか得意そうだし」


「ウタちゃん昔から理数系得意だったからねー」


「でも、そいつみたいにシンプルに右脳使うタイプのゲームで負けるのはなんかムカつくんだよ!」


「マコトさん、この間一回も完成ウボンゴできなかったしね……」


「うるさいな。だからこそ特訓なんだよ。次にウタゲと対決する時は目にもの見せてやる!」


「あはは。その意気その意気」


 市内を流れる川の土手を歩いているうち、旧国道が見えてきた。ここまで来れば漫画喫茶はもう目と鼻の先だ。オレたちがどちらかというわけでもなく歩くスピードを速めたのは、下りの坂道だったからというだけではなさそうだった。

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